よく「(イギリスに引っ越すタイミングで)ポンドが安くなったからよかったね」と言われるのですが、うーーーん、短期的な為替の動向ってほとんど意味ないのであんまり気にしていないのです。 その代り、覇権通貨がどう変わっていくかはめちゃくちゃ気にしてます。
為替動向の感じ方って「どの通貨のどういう期間の視点で物事を見るか」によると思うので、我が家のポリシー「為替ニュートラル」について書いてみます。
1. 家計の資産形成
我が家の家計資産(というほどたいしたもんでもないけど)の大半は30年くらいの長期投資・運用です(老後の生活費とマイホームを買うかもしれない時の頭金)。 この資産をどの通貨で持つかが最重要。
結婚時の話し合いの結果、今後の世界基軸通貨になるであろうUSドルとユーロで半々ずつ(*1)持つことで、短期的な為替変動に心惑わされない為替ニュートラルな心理的ポジションを取ることで合意しました。 よって、2人の出身国通貨(日本円とオーストラリアドル)はすでにほとんど持っていません。
*1・・・「半々ずつ」という比率にあまり意味はありません。 4: 6でも6 : 4でもいいのですが、それくらいの細かい調整は流動性の高い資産であればすぐできるので。
ところが、シンガポールからはユーロ建ての金融商品を買いにくいので、現在すべてUSドル建てになっています(投資対象商品もすべてブログで公開しているので、興味のある方はカテゴリー投資・資産運用からどうぞ)。 これをロンドンに引っ越したらユーロ建て資産にも分散することが目下の課題です。
2. 生活上の決済通貨
現在は我が家の労働収入はシンガポールドル建てです(シンガポールドルはUSドルに緩やかに連動)。 だいたい同一通貨圏内で生活しているときは収入も支出も同通貨なので、為替の動向に一喜一憂しないし(もちろん為替動向が輸入品価格や国の競争力に影響するので間接的な影響はおおいにある)、生活に必要なお金以外は貯金に回すと同時に、1.の基軸通貨に両替しているので、関係あるのは旅行や里帰りのときくらいかな。 とはいえ、短期的な為替の動向は読めないので、たまたまラッキーなときもあればアンラッキーなときもある、くらいの捉え方。
ロンドンに引っ越して、家計の労働収入がポンド建てになっても基本は同じことなんですが、イギリスに長期間住むか決める際、一番の懸案事項のひとつが、イギリスがポンドに固執していることとそれに起因・付随するイギリス経済の衰退です。 今回の金融危機でユーロの強さをイヤというほど噛み締めたはずなのに、次期首相確実と言われているキャメロン(英保守党党首)はEU嫌いですしね・・・
日本人のほとんどは資産を円で持っていると思いますが、通貨に関しては新興国出身者は敏感です。
私のトルコ人の友人はINSEAD留学前、イスタンブールの米系大手会計事務所で働いていたのですが、2001年の通貨危機の際、ひと晩で対ドルレートが50%以上も暴落するという事態に直面しました。 トルコ・リラ建てだった給料で貯めた貯金の価値がひと夜にして暴落したのです。
またブラジル人の友人は、インフレがひどかった時には現金で給料をもらっても毎日目減りするだけなので、企業は従業員に食券を支給していると言っていました。
また、USドルからユーロへの覇権の推移は2004年から2005年にかけてモスクワに住んでいたときに肌で感じました。 1998年の通貨危機でルーブル大暴落を経験したロシアでは誰もルーブルの価値を信じておらず、街中の買い物でもUSドル建て(当日の為替レートで換算しルーブル払い)が多かったです(家賃など高額消費はUSドルのまま支払い可能)。 ところが、ある日「いや、この表示はUSドルじゃなくてユーロだ」と言い出す商店が増え始めました。
後から振り返ってみると、この2004年というのは、ユーロがドルを逆転し始めたときだったのです(1999年、USドルと1 : 1の交換レートで発足したユーロは直後に対ドル30%も下げた後、徐々に強くなり2004年に逆転。 その後、ずっと強さを保っています)。 モスクワ市民のしたたかさに舌を巻くばかり(このエピソードは大前研一さんも『衝撃! EUパワー 世界最大「超国家」の誕生』の中でタクシー運転手の話として書いています。 ユーロの強さを読み解くのにもお勧めの一著)。
以上、我が家の為替ニュートラル・ポリシーでした。
こういう細々としたことを気にしなくてすむ世界通貨の時代、ってのはまだまだ先の話なんでしょうが・・・
December 13th, 2009 at 12:26 pm
贅沢な悩みのような気がしますね~。アメリカドル建て資産が主なうちからすると(笑)
ドル目減りヘッジのために、オーストラリアドルも元建ても貯金持ってますよ!金利がドルより高いし(笑)。
最近、知り合いでアメリカ人以外のだんなさんのいる(奥さんのいる)日本人と会うたびに、いいなー、違う貨幣持ってて、、、と思うこのごろです(苦笑)
何事も、ダイバーシティーだと思うのでした。