先週書いた『子供に優しい国って?』というエントリーは、思わぬほど多くのコメントを頂戴し、元ネタとなったブログの海部未知さんまでコメントを残してくださいました。
このトピックが30 – 40代の最大の関心事であることを改めて印象づけたとともに、「なんでこうなっちゃったのかなー?」と考えていました。 どうしても昔から発言小町の話に象徴されるような社会だったとは思えないんですよね。
格差社会、雇用不安などいろいろ言われる中で、もっと大きな時間軸でのトレンドとして続いてきたのが東京(首都圏)への一極集中。 これがもう限界に来ており、そこに住む人々もシステムも疲弊しきっているのではないかなー、妊婦や子連れなど社会の弱者を思いやれないほど。
例えば、私は高校は大阪、大学は京都なので高校・大学時代の友人はほとんど関西出身ですが、感覚的に約7割が就職と同時、もしくは数年後に首都圏に引っ越しています。 そして、ほぼ全員がこのまま首都圏に定住しそうです(年齢的に海外駐在中の人も多いが帰任先は東京。 自ら選んで関西に帰ったのは、思い出せるなかでは1人だけ)。
この点に関しては、同じ分野の仕事でキャリアアップしようとしても、国の中にいくつか住む都市のオプションがあるアメリカはうらやましい。 ある友人は、初めの就職は大学のあったアトランタ、INSEAD留学を経てシカゴ、転職でニューヨーク、とキャリアアップしながら米国内の都市を転々としています。 日本に帰ろうとすると仕事の内容を考えると実質東京しかオプションがない私たちとは異なる(仕事の内容によっては東京以外にもあると思うが、あくまで私たちの仕事では、という前提)。
そして、この東京への一極集中は今後も続くと予想されています(右グラフは2005年から2035年の県別総人口増減率予測。 出典:国立社会保障・人口問題研究所。 akさんブログに年齢別のもっと恐ろしいグラフもあります)。
ところが、やりがいと報酬が両立した仕事があり、子供に十分な教育を与えられ、住みやすい住環境があれば、ぜひ出身地に戻りたい、と思っている人は多いんではなかろうか? 仕事のなさがそれを許さないだけで。 私は引退したら京都の北の方に民家を買ってこんな生活(*1)をするのが密かな夢ですが、上記3拍子が揃っていたら今でも真剣に検討するかも。
*1・・・・京都の山奥で半自給自足暮らしをされている70代ご夫婦のブログ(私は5年以上前から大ファン)。 『いつも、ふたりで ばーさんがじーさんに作る食卓』という本にもなっていて、四季折々の地産の食品で溢れる食卓と、幸せそうな2人の穏やかな生活が何とも魅力的。
そして、地方経済を自立させ活性化し、直接世界から資本と企業と人材を呼び込もう、と20年前から道州制(*2)を提案されているのが、大前研一さんです。
*2・・・現行の都道府県制度を廃止して、複数の都道府県を統合した面積規模を持つ広域行政体=道州をつくり、自立のための権限を与える行政の仕組み。
聞いたことない方は突拍子もない案だと思われるかもしれませんが、私も初め聞いたときはピンときませんでした。
でも著書でしつこいくらい何度も何度も言及されているのを読み(最近では『最強国家ニッポンの設計図』かな。 大前さんの主張はどの本読んでも変わってないけど)、幾層にも入り組んだ日本の社会問題を考えるにつけ、どうしても「東京一極集中では無理なんじゃあ?」と思うようになり賛同するようになりました。
大前さんの道州制の主張は次の記事でも読めます。 長い記事なのでここに引用するのは避けますが、プレジデントロイターの方の「現代版・姥捨て山」の話は本当に「明日は我が身」で空恐ろしくなります。
プレジデントロイター:大前研一 本物の道州制、ニセモノの道州制
日経BP:富を生み出す道州制への道 – 九州をモデルケースに
なお、道州制のポイントは「各道州が直接、世界から資本と企業と人材を呼び込む」という点です。 もちろん重大な企業誘致ポイントである法人税なども各道州が決めます(具体的なイメージを沸かせるためには上記日経BPの記事の九州の例をどうぞ)。
冒頭の話に戻ると、地方が元気になって人が東京から移り住んで心に余裕のある生活ができるようになったら、社会的弱者に対する態度もだいぶ変わると思うんだけどなー・・・ どうでしょう?
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September 22nd, 2009 at 2:58 am
こんにちわ。
私も「ばーさんがじーさんに作る食事」の大ファンです。
田舎に住むのはしがらみがあるのかもしれませんが、どうせ都会に住んだってしがらみはあるんだからさっさと見切りをつけて住みたいところに住みたいもんです。
といっても仕事のことを考えると私も帰るところは東京です。
関西の地盤沈下が気になりつつ日本全体を見ると、
ますます東京に何でもかんでも集まっていっている気がします。
大阪が発祥の会社も本社機能を東京に移してますし。
大前研一さんの道州制には理屈は賛成ですが、実現性は「?」ですね。
理由は人の所属意識が道洲制に不可欠だと思うのですが、
「私は本州人」と簡単にはならないと思うから。
昔から道州制の採用を訴えておられるのは知っていますが、
認知度が高まらないのはそのせいでは、と恐れ多くも思っております。
廃藩置県でマインドを変えた明治維新並みの改革が必要です。
参考までに「子供に十分な教育」とはどのようなものをお考えですか?
お話伺えればと思います。
September 22nd, 2009 at 8:45 am
>nakjunさん
>田舎に住むのはしがらみがあるのかもしれませんが、どうせ都会に住んだってしがらみはあるんだからさっさと見切りをつけて住みたいところに住みたいもんです。
たしかに。 でも、やっぱり拒むものは、おっしゃる通り、しがらみじゃなくて仕事ですよね。
>理由は人の所属意識が道洲制に不可欠だと思うのですが、「私は本州人」と簡単にはならないと思うから。
道州制では関西は「近畿道」ですよ。 本州だと大きすぎてせっかく分割した意味がない。
近畿道なら十分帰属意識はあると思いますが、一番のハードルは大前さんが何度も書いてる既得権益による妨害でしょう。
>参考までに「子供に十分な教育」とはどのようなものをお考えですか?
人によって全く異なると思うので、わざと曖昧に書きました。
うちの場合はメインの言語は英語になるので英語でも教育が受けられる、ハーフでもいじめられない、etc.京都の山奥では難しいかと・・・(幼い頃の2年くらいの短期間ならいいけど、それって「京都に戻った」って言わないし)
September 22nd, 2009 at 11:19 am
①肥大した官僚機構のスリム化・予算の無駄排除+②一極集中の排除+③地方再興
→ じゃぁ道州制!? でいいのかな~。
じつはこれ今回の政権交代の大きな影のテーマだったのでは?
道州制の本質は国税の再配分機能を弱めて、道州単位の課税・立法権限を含めた自治を強化することでしょうね。
もっと簡単にいえば、一国一制度ではなく一国何制度にするということであり、それは裏がえしていえば生活程度や福祉の差があたりまえになるということでしょう。
地方交付金がなくなれば、首都圏以外の地方はさらに税金・賃金・各種規制・福祉施策等のダンピングで世界を相手に企業誘致をする可能性もあり、企業にとっては選択の余地がひろがり美味しい話ですね。
経団連と自民党が道州制推進でがんばってそこに自治権強化歓迎の大阪府の橋下さん達が加わっていましたが、民主党の小沢さんは「今は国と都道府県と市町村、地方ではそこに国の地方分局が加わって、4層構造だ。これは2でいい。1つは中央政府、あとは基礎的自治体に全部やってもらう」という考えを持って道州や都道府県を置かない「国と300基礎自治体による2層構造」案を考えているようなのでさてこれからどうなるかな~。
かなり政治的に高度な問題なので民主党もまだ玉虫色のようですが。。。
http://www.asahi.com/politics/update/0728/TKY200907280387.html
まあ、国と地方自治体の間に道州や都道府県という単位をわざわざつくらなくても、官僚制と政治の癒着関係を正し、小さな政府にして国税の無駄使いをはぶき、地方自治体の大幅合併を推進して効率化し、中央官庁の地方分散等や、一極集中に対しする都市部での課税強化等の逆インセンティブを導入すれば、一国何制度になって道州制間の移転価格税制なんかを考えなければならなくなるよりもっとシンプルということはあるかもしれませんね。
September 22nd, 2009 at 12:01 pm
わたしは神戸出身ですが、東京に出てきて1年になります。妻は大阪で仕事をしておりまして(双方とも自営業)、今は単身赴任状態なのですが、その妻も「東京に出てくる」と言っております。
逆説的なのですが、首都圏にもっと人口が集中して、さまざまな弊害が表面化してこないと、道州制という地方自立のシナリオは実現が難しいのではないでしょうか。
わたしの故国 韓国では、全人口の 1/3 がソウルに集中しています。これまで何度も首都移転や、地方活性化の議論が湧き起こりましたが、現状は何も進んでいません。
日本も韓国も、中央権力に寄り添う(ある意味「甘える」)メンタリティーのようなものを持っている気がします。
追伸) 拙ブログに貴ブログのリンクを貼らせていただきました。
September 23rd, 2009 at 11:33 am
>Blondyさん
>じつはこれ今回の政権交代の大きな影のテーマだったのでは?
影のテーマだったんですか? 派遣の禁止とか子供手当、高速道路無料化などポイントずれたことばかり目についたので、知りませんでした。
>道州制の本質は国税の再配分機能を弱めて、道州単位の課税・立法権限を含めた自治を強化することでしょうね。
そうです、そうです。
>国と地方自治体の間に道州や都道府県という単位をわざわざつくらなくても
私も名称や区切り方は上っ面の話なので、どうでもいいと思うのですが、今の首都圏一極集中で地方が地盤低下していく状況を指をくわえて見ているのは本当にもったいないと思うんですよね。
>カン・チュンドさん
>逆説的なのですが、首都圏にもっと人口が集中して、さまざまな弊害が表面化してこないと、道州制という地方自立のシナリオは実現が難しいのではないでしょうか。
今でもまだ足りませんか? 十分、弊害は表面化していると思うのですが・・・
>わたしの故国 韓国では、全人口の 1/3 がソウルに集中しています。
1/3とはすごいですね・・・ でも大学(ソウル大学)もそうですし、会社(サムスン)もそうだし、一極集中は日本より激しいようですね。
>日本も韓国も、中央権力に寄り添う(ある意味「甘える」)メンタリティーのようなものを持っている気がします。
メンタリティーに帰結してしまうと話が終わってしまうので、やはり政治システムで何極かに散らばるようなインセンティブが働けば喜んで戻る人も、やってくる企業も多いと思います。
大阪府知事の橋下さんと府民を見ていると(そんなに詳しく追っているわけではありませんが)、まだまだ行けるかな、という気がしますが。
>拙ブログに貴ブログのリンクを貼らせていただきました。
ありがとうございました!
September 23rd, 2009 at 1:57 pm
僕も関西出身ですが、できるなら地元に住みたいですね。
正しくよーこさんのおっしゃった3拍子が揃えば、の話しですが。
でも、日本に帰るとなると、多分東京なんですよねぇ、仕事的に。
人込みが苦手なので、それだけ勘弁して欲しいです。。
でもって僕の友達も多分半分以上が今、首都圏に居ますね。
道州制は確かに、一極集中化から逃れる一つの解になるんですかね。
米国はそれで集中化を避けられているのかも知れないですし。
ちなみに個人的に法人税は0、ないし、0に近い数字でいいのではと思ってます。
国的にもっと外資を受け入れる体制を作ってもいいのかなぁと。
それで国内雇用が活性化されるのであれば。
ま、手っ取り早いのはやっぱり首都移転じゃないっすかね?
四国辺りに置いたら面白いんじゃないかなーって思ってます。
追記:
あのじーさんばーさんのブログを初めて見たんですけど、
本当に70オーバーの人なんですか!?
めちゃめちゃ驚きです。なんて若い・・・
こんな余生はほんとに理想ですよねぇ。
September 24th, 2009 at 9:16 am
>まつーらさん
>ちなみに個人的に法人税は0、ないし、0に近い数字でいいのではと思ってます。
>国的にもっと外資を受け入れる体制を作ってもいいのかなぁと。
法人税を低くすると他の財源が必要ですが、ちょっと話はそれますが、シンガポール政府の予算ウェブサイトに”If I Were The Finance Minister”として、国家予算のどの項目をどれだけいじればどのくらいのインパクトがあるか一目瞭然にできてるんですよ(↓)。
http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/02/-2009.php
これは感心しました。 こんな風に簡単に作れるもんでもないのかもしれないけど、日本政府ももうちょっとわかりやすく公開すればいいのに。
>あのじーさんばーさんのブログを初めて見たんですけど、本当に70オーバーの人なんですか!?
すごいでしょ? あのブログ。
料理は旬の地産の食材を使いながらエスニック・イタリアン・中華いろいろ自由自在で、文章もほっこりしてて大ファンです。
September 24th, 2009 at 9:57 pm
ゲームのご紹介ありがとーござます。まだやってないですけど。(登録が必要なんっすかね)
予算確保は確かに重要ですよね。
でも予算の使い道をもっと透明化したら、多分もっと要領よく使えると思うんですけど、どーなんですかねー?
ところで、一つ言い忘れてましたけど、アゴラで池田先生がこんなエントリーを。
http://agora-web.jp/archives/754164.html
ご存知かも知れませんが、タイムリーだったので。
ちなみに僕はこのエントリーはあまり同意できませんでした。。
September 25th, 2009 at 9:35 am
>まつーらさん
アゴラの記事は読んでませんでした、ありがとうございました。
私もこの記事に全面的に賛成するわけではないです。
私は人口数百人の村全部を保護せよ、とは思っておらず、もっと地域の核になる都市(札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡、くらいかな?)を中心に自治権(課税・立法権)を与えた広域帯それぞれが切磋琢磨しながらそれぞれの特色を活かして発展していく(人も集まる)風にならんかなー?と思ってます(アメリカ式ですね)。
Blondyさんも書いてる通り、今の首都圏は人口多すぎ。 池田さんが誉めてるロンドン(日本と同じく一極集中)なんか人口は東京より少ないのに、インフラ整備(地下鉄・水道・電気すべて)やサービスが追いつかず、だいぶ前から限界にきてます。