シンガポールのmarket place(paragon)という欧米人が多いちょい高級スーパーでレジに並んでいると、私の前にどこかで見た顔の人が。 「うーん、どこで見たんだろう?」としばし悩んで気づいた(右の写真の人)。
・・・と言ってわかる人は少ないと思いますが、HBS(ハーバードビジネススクール)の教授であり『イノベーションのジレンマ』の著者であるクリステンセン教授。 下記のインタビューで、クリステンセン教授がシンガポールに住んでいること(通年ではないと思うが)を知って覚えていたのでした。
CNET Japan : イノベーションのジレンマに陥る優良企業たち
インタビューの中で私が面白いと思った箇所は以下。
—破壊的イノベーションの原理は国家にもあてはまりますか。
そうですね、私が今シンガポールにいる理由もそこにあります。 シンガポールは日本の経済停滞に対し、破壊的イノベーターと似た立場にあると思われます。
日本が経済大国となった背景には、日本企業が破壊的イノベーターとして貢献したことが挙げられます。 例えば、ソニーは安い小型ラジオを、キヤノンは卓上コピー機を作りました。ローエンドから始まったこれらの企業が今ではハイエンドへと移行し、そして行き詰まりを迎えています。
シンガポールは、過去の日本と同じ境遇にいます。 つまり、ローエンドから始まり、単純な製品の生産拠点として、また安い労動力を武器に海外投資の誘引に成功しました。 しかし今は、ハイエンド側へと移行しすぎています。 シンガポールは、新しい破壊の波をデザインし、生み出さなければなりません。
破壊的イノベーションのコンセプトを知らない方は、以前『次の破壊的イノベーションは何だ?』というエントリーで書いていますが、Harvard Business Reviewのサイトで『イノベーションのジレンマ』のエッセンスの講義ビデオ(英語)が見られるのでこちらもどうぞ(↓)。
HB : Clay Christensen Explains Disruptive Innovation
たしかに私が新卒で入社した総合商社の配属先では当時シンガポールに集積していたハードディスク製造工場に研磨機を輸出していました。 その頃はNIEsなどと呼ばれていましたね。 当時は安い労働力を武器に工場を誘致していたのでしょう。
労働集約型の製造業では成長は頭打ち、と知識集約産業(特にバイオ)の誘致・新興に舵を切ったのが1999年。 アジア通貨危機、SARSなどを乗り越えて、現在「建国以来の危機」に直面しています(小国なので内需に限りがあり、GDPに占める貿易の比率が高くなってしまうのは致しかたない)。
そして、この成長政策を支えるのが高度専門人材の誘致政策。 今、在留外国人を含め450万人の人口を今後20年間で650万人に増やす計画でその中心は現在世界で競争激化している高度専門人材の獲得。 その内容は日曜にNHKスペシャル「沸騰都市 シンガポール 世界の頭脳を呼び寄せろ」でも放送されたそう(私は見られませんでしたが・・・見た方、内容教えてください〜)。
「人材こそ国力」を最優先に掲げるシンガポールでは(実質)建国以来の独裁政権のもと、単純労働は外国人労働者(フィリピン人メイドやバングラデシュ人建設労働者)でまかない(→『6家庭に1軒がメイドを雇う社会』、『シンガポールでインド人について考える – 1』)、幼少時からの激しい競争社会で(→『300人待ちの幼稚園』)、世界中から富裕層と頭脳を集めています(→『グローバル富裕層争奪戦』、『頭脳流出→還流』)。
シンガポールが破壊的イノベーター国家であるとすれば、この人材政策が背骨となっていることは間違いありません。
ひとつ気になるのは、こういう形で集まった外国人は(私も含め、だけど)、次の魅力的な破壊的イノベーター国家が出てくれば簡単に移ってしまうのではなかろうか? 移らないように引き留め策を講じ続けるってことなのかしらね?
私の友人(南アフリカ人夫婦)は、勤務先にニューヨークへの転勤(もちろん魅力的な報酬パッケージ付き)をオファーされても「シンガポールがいい」と断っていたので、機能しているようですが。
http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=sekaikyulifestyle-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4798100234&fc1=696969&IS2=1<1=_blank&m=amazon&lc1=708090&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1
February 18th, 2009 at 2:55 pm
結局、「破壊的イノベーター」や「リーダー」と呼ばれる人達は、自らの人生をそこに埋めている(捧げているor没頭している)。言ってみれば自らラットレースに参戦し、引っ張っていっているかのよう。
話が飛躍しますが(そして大変失礼しますが、)私は「人を幸せにすることで得られる幸せ」が本質だと思っているので、貴ブログで謳われる「世界級ライフスタイル」を広めることには少し疑問に思うのです。
一つに、自己のキャリアにほぼ最上?のプライオリティが置かれていること。 そして、「キャッシュフロー・クワドラント」で言われる投資家領域目指しラットレースから抜け出すことを最終的な目標としているところ。
そもそも自己防衛・自己成長が根底にある「キャリアプラン」は優先順位の一番に自分があり、”仲間・組織・会社・お客様”といった他者のことは二の次であるので、度を超えたキャリアプラン発想が世に広まる程に社会は苦しくなっていくと思われるのです。投資にしても同じで、個人・少数で投資活動している時点でやはり目的は「リターンの獲得」。自己の将来の為に「頭働かせて努力した」人が利鞘を得ようと思うのはわかりますが、その思考も世に広まるほど社会的・長期的にみて良い方向に回らないと思うのです。
ラットレース、いいじゃないですか。ラットレースが冷めれば冷めるほど、世界は失速・衰退しちゃいますし。レースから離脱することを善しとするのではなく、レースそのものを意味あるものにするよう努力することでしか解決していけないことを個人・組織・世界が認識することは大事なのじゃないかなと。
要するに、世界的に人々が「富の分配」と「富の創出」に励むような世の中をつくっていきたいわけです。100%相手のことだけを考えてれば良いと思います。自分の利益は意識して考えなくとも勝手に考えてしまうのが人間だからです。 能ある人による価値の創出と分配はとても意義のあることだと思います。
http://entre.livedoor.biz/archives/51130534.html
http://blog1.ig-partners.com/archives/50635350.html
February 18th, 2009 at 8:10 pm
>私は見られませんでしたが・・・見た方、内容教えてください〜)。
+下記で見られます。
http://video.aol.com/video-detail/7/288230386202988849
February 19th, 2009 at 7:52 am
こんにちは。沸騰都市シンガポール編と東京編 DVDにして送りましょうか。
la dolce vita さんの居住都市なのでとても興味が有り、沸騰都市シリーズ大好きな主人が録画してました。
金融危機以後の外国人労働者大量解雇について、シンガポールのリー・シェンロン首相は「外国人は(雇用の)バッファー(調整弁)」と断言。の発言後、興味深かったのは”自国の民の利益の為”と言い切ったところがどこかのベロベロ会見を生んだ国との違いだな~と感じました。
強者の勝つ国シンガポール・・いいでは無いの?と個人的感情でした。
そこから勝つ者しか分からない、慈愛が生まれるのだと思いますので。。
February 19th, 2009 at 9:23 am
>sagさん
コメントありがとうございます。
>snowbeesさん
教えて頂きありがとうございます!
>isoyanさん
>こんにちは。沸騰都市シンガポール編と東京編 DVDにして送りましょうか。
ご親切にありがとうございます。 上記snowbeesさんに教えて頂いたリンクで見ることができました。
こうやって番組にまとめられて断片を切り取られてしまうと、すさまじい国に見えますねー・・・