ケララのバックウォーターではホームステイと呼ばれる家族経営の民宿に泊まりました(コチラ↓)。
GK’s Riverview Homestay
バックウォーター観光でメジャーな街から離れており、村にはこのGeorgeが家族と経営する民宿以外の宿泊施設はなく、本当に何もないところなのですが、4室しかない部屋は常に満室でした。
日本でもグリーン・ツーリズムという名称で農村に滞在し農業実習や地産の郷土料理を通して豊かな自然を体験する試みがあるようなので、インドの成功例としてGeorgeの民宿の事例を分析してみました。
1. 美しい自然、地産の食物、村人との温かい触れ合いを最大限に活かす
村にはスーパーもレストランも娯楽施設も何もなく、あるのは田園風景とゆったりと合間を流れる水路(バックウォーター)とフレンドリーな村人&動物(牛、ヤギ、鶏、リス、その他)。
Georgeの民宿は「のんびりしにきた」というヨーロッパ人がメイン。 みな裏庭のハンモックで読書をしたり近所を散歩したり村人と一緒に(観光用ではなく生活用の)ボートに乗ったり、思い思いの時間を過ごしていました。
部屋はファン(扇風機)があるだけの質素な部屋でしたが、目玉はGeorgeの奥さんが作る家庭料理。 庭で取れるオーガニックベジタブル・フルーツ(下記)をふんだんに使った見たこともないような料理の連続。 単にスパイシー(チリの辛さ)なのではなく、芳醇な香りが漂い、何をどう使えばこういう味になるの?という料理のオンパレードでした。
庭で取れるもの:野菜・果物類(バナナ、ココナッツ、パイナップル、ジャックフルーツ、ぶどう→ワイン・ビネガー作りに使用)、スパイス類(カルダモン、胡椒、シナモン、ターメリック)、カカオ豆→自家製コーヒーに
2. コンセプトに合致した顧客を選んでいる
「”何もない”のを楽しむ」のがコンセプトなので、Georgeは高級ホテル並の施設やサービスを期待しそうなゲストは初めから丁寧に断るか期待にそぐわないことを暗に示すのだそう。
具体的には、インド国内から来るインド人観光客。 最近の経済成長により旅行をし始めたインド人は、プール・ショッピングなど施設、娯楽を求めたり、南インドの家庭料理を嫌ったりするので今は断っているそう。 インドの田舎の良さそのものに気づき楽しむのは、むしろ外国人とのことでした。
この点は日本の田舎滞在型ツーリズムも同じだと思います。 ロジスティックス(たどり着く方法)と英語の問題さえクリアできれば、日本の田舎に泊まりたいという外国人潜在ニーズは大きそう(特に狙い目はリタイヤしたヨーロッパ人。 お金も時間もあり、旅行熱も高い)。
3. インターネットを駆使し口コミ客やリピーターが多い
通常の一般消費者向けビジネスというのは、高い新規顧客獲得コストをいくらリピートにつなげられるかで利益率が決まるため、観光業というのは常に新規顧客を獲得し続けなければならない辛いビジネスモデルだと思っていました。 その新規顧客獲得コストの高さゆえ、1回きりの客からできるだけ大きなマージンを取ろうとする”rip-off”(ボッタくり)が頻繁に発生する業態だと思っていたのですが、Georgeの民宿の情報は2つのソースのみ、イギリスのガイドブックTHE ROUGH GUIDEと世界最大の旅の口コミサイトTripAdvisor(私たちはTripAdvisorで知りました)。 その他の広告宣伝はしていません。
TripAdvisorとは月間ユニーク利用者が2,500万人というさすが英語圏ならではのオバケサイトで上手に使えば、かなり掘り出しものが発見できます。
インターネットの登場で、今までであればボッタくられっぱなしだった旅行者が嫌な体験の後には世界中に知らせることができるようになったのですね。
そのため、Georgeは宿泊するすべての人に、よいサービスを提供することこそが将来のゲストに結びつくことをよく知っていました。 そのため、リピーターや長期滞在客が多いのだそうです。
3. 村人と協力し、フルパッケージのサービスを提供する
Georgeの家は南インドの静かで小さなこの村の中で、唯一の宿泊施設。 頻繁に(明らかに生活レベルが異なる)外国人観光客が出入りし、年収も周りの家より1桁は高いだろうと思われるGeorgeの家族が、村人の反感をかうんじゃないか?という疑問がありましたが、Georgeは非常に上手に近所の人に仕事を振っていました。
最寄の駅からのピックアップには、リクシャー(タイで言うトゥクトゥク)を手配し、バックウォーターの観光にはボートを手配。 有名なアーユルベーダもマッサージ師が家まで来てくれます。 全員、近所の人(ちゃんとその道のプロですが)。
宿泊客も上記の通り、Georgeが選んでいるため、村人の反感を買うようなこともなく(夜騒いだり、肌を露出した格好で歩いたり)、道で会う全員が微笑みかけてくれました。
4. 競争優位はホスピタリティーと英語
ド田舎(失礼)にありながら、オンシーズンは常に満室のGeorgeの民宿。 その競争優位は、彼の素晴らしいホスピタビリティーにあることは間違いないのですが、やはり流暢な英語は重要なポイント。
村人たちはあまり英語は話せないのですが、ホストが英語が流暢であれば、いろいろ注意事項やお勧め場所がわかるので宿泊客は何とかなります。
「自然以外何もない」と思っている日本の田舎民宿にぜひリタイヤした欧米人客をターゲットにすることをお勧めします。 1人だけでいいので(息子とか)英語猛特訓すればいけるのでは?
Leave a Reply