St Pancras Renaissance Hotel

st_pancras_exterior.jpg巷で話題だったので行ってきました、今年5月に大改装オープンしたSt.Pancras Renaissance Hotelのホテル・ツアー。
St.Pancrasというのはユーロスターの終着駅なのですが(*1)、駅から下りるとすぐにこの大仏殿より巨大な建物、しかもゴテゴテのネオ・ゴシック建築で目立つこと、目立つこと・・・
*1・・・ロンドンは他ヨーロッパ都市と同じく中心街から少し外れたところにいくつか鉄道の終着駅があり、St.Pancrasはそのひとつ(『日本の鉄道会社の事業モデルは海外でも有効か?』)。 ただし、イギリスは鉄道発祥の地、なのでその頃の「街のはずれ」は今では立派に中心街に飲み込まれている。
駅に直結するホテルとして1873年に開業したものの1935年に閉鎖。 その後は鉄道会社のオフィスや宿舎として使われるものの、老朽化する一方で、取り壊し寸前までいったこともあったそう。
ほとんど廃墟と化していたこの壮大なゴシック建築を救ったのがユーロスター乗り入れと付近の再開発。 マリオット・ホテル・チェーンに買収され£800mil.(約1,000億円)の費用をかけた大改装の末オープンしたというお話。


st_pancras_staircase.jpgイギリスは建築保護基準が厳しく、この建物はグレード1という日本でいうところの重要文化財並の指定です。 グレード1になると外部も内部もオリジナル建築やデコレーションにいっさいの変更が許されていないため「ボロボロなのに変更できない」という縛りを背負いつつ完成した内装が本当に素晴らしかった。
まずは往時の建築を忠実に再現した部分から。 「St.Pancras Renaissance Hotelといえばこれ!」の階段(写真はすべてホテルのWebsiteより拝借)。 「ヨーロッパ一壮大な階段」と名高いこの階段は数々の映画撮影も行われたそう。 柱・手すりやタイル床はオリジナルを修復、カーペットはリプロダクション、壁紙は当時のモチーフを再現・・・etc.と一カ所・一カ所、丁寧にさまざまな方法で圧巻の空間を再現しています。
そして往時の建築の迫力と比較しても引けを取らないのが、今回の改装で新しく付け加えられた部分。 写真は昔はタクシー停車場として使われていた空間だったのですが、今はホテルのロビーになっています。

隣の鉄道駅コンコースと色味を合わせた光たっぷりのガラス天井に青のアイロンワーク(デザインがヴィクトリア調)、この広さを活かしたすっきりしたコンテンポラリーの家具に、天井から下がる巨大なランプ、(この写真にはないけど)モダンで存在感のあるフラワーアレンジメント・・・
st_pancras_lobby.jpgモダンとトラディショナルの組み合わせはイギリス人デザイナーの十八番とはいえ、この大空間で仕上げるとはすごいです。 真横は駅のターミナルなのに、このエレガントさ。
初めに書いたとおり、St.Pancrasはロンドンの陸の玄関口。 ヨーロッパから陸路やってきた旅人を、ヴィクトリア時代の栄華を偲ばせるゴシックとコンテンポラリーデザインが違和感なく溶け合った大迫力の空間でお出迎えしようという趣向。
「世界でも最も美しい歴史建築が集まる国のひとつ、日本がこれをやろうとしたらどこでどう実現するんだろう?」と想像するだけで楽しくなります。 京都駅をあのホテル・グランヴィアじゃなくて二条城あたりに引いたらどうなるんだろう?とか(あの階段はあれはあれで嫌いじゃないんだけど)
st_pancras_eurostar.jpg4月から始まったこのツアー、さっそくJR東日本が団体で視察に来たそうです。 さすが耳聡い! どこの参考にするのでしょうか?
東京駅も丸の内側はアムステルダム中央駅を模しててステキなんだけど地上からあまり出ることがない(地下道の方が便利)ので良さを活かしきれてない気が・・・
1996年、大改装の遥か前からこの建物に勤め続け(その間オーナーが何度も変わった)、生き字引のようなおじさんによるこのツアーはこちらで申し込めます。


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