私の母はその昔、大学を出て英語教師になり、その後、通訳になりました。 新卒で商社に内定したばかりの私に母が言った言葉。
私たちの頃は女性は公務員か教師しか職がなかった。 今は女性でも民間企業に入れるようになったけど、入った後はどうなのかしらね? 楽とは思えないけど。
母の時代と異なり、民間企業のドアはほんのわずか開いていたけど、入った後のことなんてよくわからなかったし情報もなかった大学時代。 こういう包括的な記事が出ていたら少しは参考にしたのかなー?と思います。
まあ、大学時代なんて自分が何になりたいのかわかんないもんだけど。
The Economist : The wrong way to promote women
The Economist : Still lonely at the top
大企業の女性取締役比率はアメリカで15%、ヨーロッパでは10%、いやー、いろいろやってるのに何で増えないんだろうねー?
という記事(貴重な人材を活用するという観点もさながら、ダイバーシティに富む企業のパフォーマンスがいいという調査結果から、こういう議論になっている)。
さまざまな施策を打っているのに増えないのは、「取締役にまであがるような男性は性差別するから?」「女性はお手本となるロールモデルや引っ張り上げてくれるメンターがいないから?」・・・ 好循環を生み出すループになかなか入らないことに業を煮やしたヨーロッパ各国政府がクォータ制の導入に次々と踏み切っています。
ところが、2008年にいちはやくクォータ制を導入したノルウェー、上場企業のボードメンバーに女性を4割以上当てるよう義務づけた結果、能力主義であれば登用されない経験不足の女性が多数取締役になってしまい企業のパフォーマンスが落ちているという調査が出ました。
The Economistは徹底した自由経済主義なのでヨーロッパ各国政府が導入しようとしているクォータ制に反対なのですが、以下の理由をあげています。
性差別やロールモデルの不在はもはや女性のキャリアの主な障壁ではない。
問題は女性の能力でもない(*1)。
障壁は子どもである。 多くの女性が仕事と育児を両方こなすことに苦労しており、数年休んだりフルタイムからパートタイム(or フレックス)に切り替えたりする(*2)。 そのせいで取締役まで上がれるような経験を積むことが困難になる。
大企業の多くがますますグローバルになっており、数カ国で経験のある人材を登用したがっている。 しかし海外派遣は家族生活に支障を与えるため、女性が海外派遣を断るケースが多い。 またネットワーキングのために業務時間後飲みに行くこともしたがらない。 将来のキャリア・ブレイクを見越して、多くの女性は法律や人事のようにスキルがすぐ陳腐化しないような専門を選ぶ(*3)が、企業は金融か営業出身をトップに登用したがる。
男性と同じようにキャリアを切った女性だが、”Corporate Ladder”(出世階段)の上に行けば行くほど少なくなる(*4)。
*1・・・アメリカでは修士号取得者の半分以上が女性、大企業の新卒レベルの仕事も半分以上を女性が占める。
*2・・・アメリカでは31%の女性が平均2.7年のキャリア・ブレイクを取り、66%がパートタイム(or フレックス)に代わったことがある。
*3・・・アメリカのロースクール卒業生の2/3近くが女性であるのに対し、エンジニア専攻では18%しかいない。
*4・・・アメリカの大企業ではミドルマネジャーのうち37%が女性、シニアマネジャーのうち28%、取締役の14%。
「子ども」と「グローバルな転勤」がネックというのは、私が『MBA女性の10年後』、『女性MBAの出産後のキャリア – 1』で書いた内容とそっくり同じですね。
The Economistの記事はこの後、クォータ制導入ではなく企業をもっとファミリー・フレンドリーにすることが解決法だ、と続きます。 全くもっておっしゃる通り(!)なんですが、「いま、現在」の問題である当事者には即効性がないのである。
以上は徹底的に能力主義という点で先頭を走るアメリカや、女性の労働率をあげるため環境を整え成果をあげてきた北欧、「あらゆる手を尽くしてやっとここまで来たけど、まだ道のりは長いねー」という「女性とキャリア – 中間まとめ編」みたいな記事でした。 大学の時にこういうの読んでたら参考にしていた、、、かもしれない。
ちなみに、右上の表に日本がないけど、トップ100社の女性取締役の比率は1.4%だそう(東洋経済より)。 小さすぎて棒グラフになんないから省略したのかしらん?
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