昨日は隣町のBrixton(ブリクストン)でストリート・フェスティバルがあったので家族で行ってきました。
Brixtonというのは南ロンドンにあり、80年代は大きな暴動があり治安の悪さで泣く子も黙る悪名の高さだったけど、最近はアーティスト・デザイナーなどクリエイティブ系、ヤングファミリーも移り住んでオシャレなバー・大箱クラブハウス・活気あるマーケットが混在するセントラル・ロンドンに近いわりには家賃が安く、エッジーでマルチエスニックな街。 私の住んでるエリアが、圧倒的に白人が多いのに対し、とてもカリブ系黒人が多く、黒人特有の色彩感覚やリズム感が独特の雰囲気を醸し出している街です(『都市内部での(自発的)コミュニティ化』で書いた「お隣の地域」)。
前日に北東部Tottenhamで暴動が起こった直後だったためか、フェスティバルではすごい数の警官(5mおきに2人ずつ、くらい)がパトロールに当たっていました。 フェスティバルそのものは至るところ(路上)で、大音響スピーカーがヒップホップなどブラック・ミュージックを流し、ボブ・マーレーな髪型のおじさん・ブエナビスタ・ソーシャルクラブに出てきそうなおじいさん・70sなコスチューム(いや、普段の私服?)とメイクの女の子が、思い思いに音楽に身を任せ体を揺らしている、という超ゆるい代物。 あまりの大音響に息子がハイパーテンションになってしまったので、私たちは退散したのですが、「こんなに警官がいる、ってBrixton、警戒されてるねー」と言っていたら今朝、現実に。
さっそく、ロンドン日本大使館から在英日本人に届いたメール。
抗議活動が開催された場所およびその周辺地域には極力近づかないようにし、抗議活動が行われている場所に接した場合には、早急にその場所から離れるなど、不足の事態に巻き込まれないよう十分注意してください。
これって、日本の原発事故後、日本からの避難・脱出を煽った外国メディアと変わらんではないか・・・ 「不測の事態に巻き込まれないように」って、「左右を確認せずに道路を渡らないように」って子どもへの注意と同じ。 当たり前、、、じゃん???
・・・というのはともかく、今のところ私が思うこと。
1. ロンドンの治安はパッチワーク状
今までも何回か書いているが、ロンドンは治安のいいところ・悪いところがパッチワーク状になっています(これは都市政策の一環でこうなっている→『家探しでわかる都市政策』)。
これは、右のproperty heatmap(by Zoopla)という不動産価格のマップ(値段が高いほど赤い)を見るとよくわかります(治安が良いエリアは不動産価格が高い)。 赤い場所と緑の場所が隣り合わせ。
今回はまだもっとも治安が悪い地域と呼ばれるエリアで起こっていないので、まだ起こる可能性はあると思います(もちろん夏休み中なのに警官は総動員態勢)。 ただ、「パッチワーク状」ゆえに大規模な地域が焼け上がるようなことにはならないんじゃないかと思う(希望的観測ですが)。
2. 若者が不満を抱えているのは先進国どこも一緒
以前『イギリスの世代間格差』というエントリーを書きましたが、若者が職に就けず不満を抱えているのは先進国はどこも一緒です。
左の表はヨーロッパとアメリカの15 – 24歳の失業率(the economist : a lost generation)。
こちらはイギリスの若年失業率に関するThe Guardianの記事→Youth employment rate at lowest for 20 years。
特に金融危機以降、企業がほんっとーに経験者しか雇わなくなりました。 オックスブリッジを卒業しても、数ヶ月に及ぶ無給インターンをしないと就職できない(インターンしても正社員になれる保証はない)らしいです。 無給インターン期間を耐えられるだけの経済的余力も必要だし。
Tottenhamの事件は黒人青年が警官に射殺されたことに対する抗議デモがきっかけということだけど、Brixtonなんかは完全に便乗らしい。 エスニックマイノリティーに対する差別への不満という側面も元々はあったんだろうけど、ロンドンは「白人 vs. 黒人」のように均一な対立軸はなく、もっと不満も多様なので(*1)、「とにかく毎日むしゃくしゃするんだぜー!」という漠然なる不満が噴出したのだと思います。
*1・・・イギリスにいる黒人は何世代もイギリスに住んでるイギリス人だが、他に反移民(もっぱら融合しないと言われるイスラム系)という対立軸もあるし(イスラム系の中でも中東系とパキスタン系はまた異なる)、地域格差も大きいし、一枚岩なところがない。
まあ私なんかは逆に日本で暴動が起きないことが驚きなんですが、「職なし」という不満に対する抜本的な解決策は「職を生み出す」しかないんですよねー
3. 「クリエイトする」街・人になるには?
ロンドン暴動に関するTwitterで「格差社会の成れの果て」的なつぶやきをちらっと見たのですが、日本で「格差社会」って言葉はやってます?
グローバライゼーションで国家間の格差は縮小する方向にあるのに対し、一国内の(地域間、及び世代間)格差が拡大する傾向にあるのは、世界的な傾向で、日本はむしろ格差が少ない国。
結局は、カリフォルニアみたいなジョブ・マシーンをつくるしかないのですが、現キャメロン政権は比較的そこのとこわかった政権じゃないかとちょっと期待しています。
そうそう、イノベーションと言えば、あのハーバードのクリステンセン教授(→『人生をどうやって測るのか?』)が、「イノベーションとは学べるものなのか?」をテーマに”The Innovator’s DNA”という論文を共著で執筆されました(HBRサイトから買えるけどPDF指定検索すると読めます)。
こちらはThe Economistから(→The Economist : Think different)。
「クリエイトする」ことは国や街にとってもテーマだけど、個人にとっても大きなテーマですねー(→『20、30、50年後を想像しながら動く』)。
暴動という形での発露は、変化する世界の中での新しいロンドンの生みの苦しみ・・・だといいんだけど。
August 9th, 2011 at 1:14 am
ロンドンの暴動報道を見て、ようこさん大丈夫かなぁと思いましたが、
このエントリを読む限り今のところ大丈夫ですかね?ちょっと安心しました。
しかし、ニュースだけではなく、こういった現地に住んでいる知人の生の声が聞けるのは良いことですね。
当分危険な状態が続くかと思いますが、ようこさん一家の安全をお祈りしています。
August 9th, 2011 at 7:56 am
暴動とは全然関係ないけど、そのフェスティバル、すごい面白そう。いいなー。
Aくんがもうちょっと大きくなったら2人で行ってみたいです。(←おばさんの発想)
August 9th, 2011 at 11:08 am
Yokoさん、ご無沙汰しております。先程BBCで映像を見たのですが、とても衝撃的でした。
暴動が早く収まること、それからYokoさんご一家のご無事をお祈りしております。
August 10th, 2011 at 9:35 pm
>まつーらさん
>当分危険な状態が続くかと思いますが、ようこさん一家の安全をお祈りしています。
ありがとうございます! ロンドンは収束したみたいです。 昨日はオフィスもナーサリーも行政も早くクローズし、みんな早く帰宅しましたが、今日は平常に戻りました。
>tomokolea
>そのフェスティバル、すごい面白そう。いいなー。
http://www.brixtonsplash.co.uk/
これだよ(↑)、Brixton好きそう。
>Aくんがもうちょっと大きくなったら2人で行ってみたいです。(←おばさんの発想)
音が大きすぎるし知らない音楽ばっかだったので、どうぞ2人で行ってください(笑)。
>Mariaさん
>暴動が早く収まること、それからYokoさんご一家のご無事をお祈りしております。
ありがとうございます! BBCの映像と外で鳴り止まないサイレンの相乗効果は恐ろしかったです。
August 12th, 2011 at 12:32 am
とってもご無沙汰しております。
ご無事そうで何よりです。
それにしてもアメリカ、ヨーロッパの若者の失業率がここまで高かったのですね。
こうやって表で見ると分かりやすいですね。
海外に比べると価格の差は知れてますが、北海道の最低時給はやっと今年の10月から705円になります。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/311164.html
ほんと国家間の格差は縮小する傾向だけど、国内格差が拡大する傾向になってますね。
経済格差が見た目で分かりやすいですが、マインド格差も大きいのかなと、思ったりしてます。
August 19th, 2011 at 8:33 am
>しんさん
ご無沙汰しております。 ご心配ありがとうございます。 街は平穏を取り戻しましたよ!
>北海道の最低時給はやっと今年の10月から705円になります。
恥ずかしながら最低賃金が都道府県ごとに違うことを知りませんでした。 当たり前といえば当たり前ですね・・・