毎年楽しみにしている9月のロンドンデザインフェスティバル(去年の紹介エントリーはこちら)、今年は長女の出産直後でまだ体のあちこちが痛かったのでほとんど見に行けませんでした、残念・・・
その中でも体を引きずって行ったTerence Conran(かのコンランショップを創業したコンラン卿)のトークイベントで知った“The Wish List”(ウィッシュリスト)に行ってきました。 世界最強のデザイン博物館Victoria & Albert Museumで10月24日まで展示されているこのインスタレーション、入口すぐ横の階段沿いにひっそりと並んでいますが内容がすごいんです。
戦後、イギリスのみならず世界中の先進国の家庭の日常にあるもののデザインを変えたデザイン界の大御所コンラン卿が友人デザイナー10人(これまた巨匠ばかり)に、
いつも家に欲しいと思っていたけれど、これというものを見つけられずにいたものは何ですか?
と質問し、巨匠たちが「欲しいと思っていたもの」(ウィッシュリスト)を新進気鋭のデザイナーたちにコミッション(注文制作を委託)して作ってしまったものが10作品並んでいます。
American Hardwood Export Council(AHEC)がスポンサーとなり、コンラン卿が共同創業者の家具ブランドBenchmark Furnitureの工房で10日間、10人の巨匠デザイナー・建築家と10人の若手デザイナーがこもって合宿形式で制作したそう。 こちら制作中のビデオ。
スポンサーがアメリカのハードウッド(樫・桜など硬木)輸出協会で、美しい英国製の木製家具で定評があるBenchmark Furniture社でつくるのだから、できあがったものは木の美しい木目や感触を活かした木工製品です。 日本が伝統的に得意としている分野ですね。
そしてコンラン卿のお友達デザイナー&建築家の面々がすごい。 ファッションデザイナーPaul Smith、日本でも新国立競技場で一気に有名になった建築家Zaha Hadid、同じく建築家のNorman Foster、デザイナーJohn Pawsonなどなど、イギリスを代表する世界的な著名デザイナー・建築家が勢揃い。
巨匠から制作依頼を受けた若手デザイナーたちもまさに「新進気鋭」という言葉がピッタリ。 Norman Foster以来の「鉛筆削り」はロンドン在住日本人プロダクトデザイナーのNorie Matsumotoさんが制作しています。
完成作品はデザイン専門サイトの記事に美しい写真が掲載されています。
Steal Mag: Ten Top Designers Get the Products of Their Dreams With Their “The Wish List”
作品を見に行って興味深かったのが、作品に個性が溢れていたところ。
特にZahaがコミッションしたこれ。 テーブルウェアらしいのですが、何ともZahaらしく実験的。 「こういうのが欲しかった」って・・・いや、いらんやろ! と突っ込んでしまうのですが、彼女の建築もこういう感じですよね、非常に3Dで彫刻的、好き嫌いが分かれる傾向。
ミニマリズムで有名なJohn Pawsonのもひと目見て彼のだとわかります。
装飾を完全に排した曲線が美しいドアノブや照明スイッチ、本棚など内装パーツ。 確かにインテリアの建築パーツが豊富なヨーロッパでもこういうものは手に入りません。
それぞれの展示作品には制作中のビデオがついているのですが、コンセプトデザインのスケッチや模型、巨匠と若手が共同作業でつくりあげるプロセスが感じられるビデオがとてもいいです。 YouTubeで全作品のビデオが見られます→こちら。
V&Aは無料なので、生後1カ月の赤ん坊を連れて用事のついでにさっと寄って15分くらいでこの素晴らしい作品群を見て回ってさっと授乳して帰ってくる、一流のアートやデザインへのアクセスの気軽さがロンドンに住む醍醐味。 展示は10月24日までです!
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