"You should…"とは言うべきではない

ちょっと前にTwitterで夏野さんが

日本人が議論ベタなのは議論上の意見とその人の人格を一体化したがる傾向があるからだと思います。
理由は簡単。論理性で負けるから必殺攻撃に出てるわけです。

とつぶやいて、その後盛り上がってました(『異端児こそサバイブしなければならない』書いたように夏野さんとは1年以上プロジェクトご一緒したことがあります)。
『技術やアイデア単体に価値はない』で引用した奥山さんも

面白いのは日本の議論の仕方っていうのが、何かと個人攻撃になってしまうこと。 これは日本の言葉の作りっていうものがどうしても目上とか目下とか、男性とか女性とか、自分の相手に対する相対的な位置を示す感情を表す言葉があるのに対して、英語とかイタリア語っていうのは非常に少ない言葉で情報の内容を的確に相手に伝える言語の作りなんです。 だから、誰が何を言うかってことは重要なじゃなくて、その話の内容の方が重要だって順序になってる。

とおっしゃってるので、確かに日本人にそういう傾向があるんだと思います。


なお「話の内容と人格を分離する」のは交渉術の基本中の基本(→『”ハーバード流”夫婦円満の術』)、英語やイタリア語話者も訓練で身につけてるものだと思うんですけどね。
今日は関連した英語の話。
日本人が英語で話しても人格攻撃だと受け止められやすいのは「〜しなければならない」をストレートに訳して”You should…”を多用することが多いことも一因なのでは?
日本語は主語をあいまいにできる言葉なので、
「できるだけ早く申請すべきですよねー」
のように「私が強くそう思ってるわけじゃなく一般的にはそうした方がいい」くらいのニュアンスを込められるのですが、これが主語をYouにして
“You should apply as soon as possible.”
と言ってしまった途端、強い命令口調になってしまいます(『It is difficult…』で紹介した「日本人がまちがいやすい危険な言葉」のトップNGワード)。
では、英語ではどういうかと言うと、
“You might want to do xxx.”
“Could we consider xxx?”
などなど。
例えば、妻が夫に
“Do you want to take out the rubbish bin?”
と聞くと「ゴミ箱、外に出したい?」と聞いてるわけではなく、「ゴミ箱、外に出してきて」と命令形ですのでお間違えなく。
また一緒にいる人が、
“I wouldn’t mind having a coffee.”
と言ってきた場合、「コーヒー飲むのは嫌いじゃないんだよねー」と嗜好を語っているのではなく「私は今コーヒーが飲みたい」と訴えているので、お茶の時間にしましょう(特にイギリス人はわかりにくい。 『Very interesting = I don’t agree.』で例が集めてあります)。
英語はダイレクトな言語だからダイレクトな言い方をしてもいいと思うのは大間違い。
私はデザインスクールに通っているのですが、ひとり”You should…”を多用し命令口調でキャラの強いチューターがいます。 デザインはもともとかなりsubjective(主観的)なもので絶対の正解などないので彼女のスタイルはとても不評。
別のチューターは正反対。 押しつけがましくならないように”I could almost imagine doing xxx.”と「xxx やってみてもいい気がする」くらいのソフトなニュアンスなので、トライしてみようかなという気にさせ大好評。
“You should…”は「言うべきではない」言葉なのでした(日本語風)。


4 responses to “"You should…"とは言うべきではない

  • Yukari

    You should…..
    私も確かにyou should…..多様しておりました。
    これから気をつけなければ!!
    完全なる言い訳になってしまいますが、日本人と群れての生活(米)のため英語を使ったり、
    習ったりする場面がなかなかなく、当記事はリンク先含めとっても勉強になりました。

  • ろちょーる

    そうなんです。医療の分野でもその点は特に。実習していたフランスの病院では、”これ直訳して日本で患者さんに言ったら、ドクハラだ!って糾弾されて新聞に投書されるよねー”としょっちゅう思ってました。

  • DODOLELA

    フランス人もYou should 多用します。
    英語の会議でYou should を連発するフランス人同僚をみて、はじめはカチ-ンと来ていましたが(苦笑)、実はこれ、フランス語で言う Il fautの直訳だということに気づいてから、気にならなくなりました。(il fautは、もうちょっとソフトな言い回し・・・日本語でいう「~しなければならない」とか、「~する必要がある」 くらいでしょうか。文脈によって、強調表現にもなります)
    どんな言葉にしても、こういう言語の微妙なニュアンスを掴んで使い分けるって、実体験でその言葉を話していないとなかなか身につかないな~と日々実感中です。

  • la dolce vita

    >Yukariさん
    >当記事はリンク先含めとっても勉強になりました。
    ありがとうございます。 リンクの「日本人がまちがいやすい危険な言葉」はなかなかいいですよね。
    >ろちょーるさん
    >”これ直訳して日本で患者さんに言ったら、ドクハラだ!って糾弾されて新聞に投書されるよねー”
    どんなんでしょうか?
    >DODOLELAさん
    >実はこれ、フランス語で言う Il fautの直訳だということに気づいてから、気にならなくなりました。
    Il fautのilは「非人称のil」というやつでたしかに日本語の「〜しなければならない」に近いですね。
    >どんな言葉にしても、こういう言語の微妙なニュアンスを掴んで使い分けるって、実体験でその言葉を話していないとなかなか身につかないな~と日々実感中です。
    その通りですね〜 私、INSEAD中はイギリス人クラスメイトは苦手だったのですが(何考えてるかよくわかんない、と思ってた)、どっぷりつかってみると苦手意識は消えました。

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