技術やアイデア単体に価値はない

(このエントリーはスティーブ・ジョブスの訃報を聞く前日に書いたのにサーバー・ダウンでアップできなかったものです。 最後に追記をしています。)

技術とか人っていうのはお金があるところと、実際に実験をして実用化したところに残るんですね。 技術は、あるいはアイディアは、発明したところには残りません。
(中略)
技術というのは「食材」で商品というのは「料理」だ、と。技術を売り物にしたって新鮮な魚をただ売りものにしているようなもので、それを料理して初めて商売になる
『デザイナー奥山清行による「ムーンショット」デザイン幸福論』より)

バツグンに面白かったです、このインタビュー。 上記引用した部分のコンテクスト(アブダビでのスマートシティ実証実験の話)は長くなるので、インタビュー読んでみてください。
「技術やアイデア単体に価値はない」例はいろいろ思いつくのですが、現在、勉強中の建築・インテリアの分野からあげてみます。 私はこの分野、勉強を始めたばかりなのでもっと詳しい方、間違いなどあればぜひご指摘ください。
産業革命以降の家具デザイン史(初期は建築家が家具デザインをしていたケースが多いので建築もちょっとだけ)を俯瞰してみると、日本のデザインにインスピレーションを受けたと言われる家具・建築があちらにも、こちらにも登場します。
印象派の画家たちが日本の浮世絵に多大な影響を受けた、というのはよく知られてるけど、デザインの世界もすごい。


Eileen_Gray_lacquar_screen.jpg
左の椅子は1902年、スコットランド人のCharles Rennie Mackintosh作。 日本の何をモチーフにしたかわかります?
これは簡単かな。 障子戸などに使われる格子柄です。 幾何学的な格子柄・シンプルな直線からなるバランスは当時のヨーロッパにはなかったもので、アヴァンギャルドすぎると時に酷評されたそう。
右の写真は1922年、アイルランド人Eileen Grey作のパーティション・スクリーン。 こちらは日本人の漆職人のもとで修行した彼女が美しい光沢の漆塗りで仕上げています(現在V&A Museumで展示)。
2人とも後々の建築・インテリアデザインに甚大な影響を与えているデザイナー。
Perriand_chair.jpg
お次は説明のいらない史上最も有名な建築家Frank Lloyd Wrightによって米ペンシルヴァニア州に建てられたFallingwater(日本名:落水荘)。 建物が自然に溶け込むところと言い、流れ落ちる滝といい、まさに日本の美意識そのもの。
最後は(Wrightと並び世界三大建築家のひとりと称される)フランス人Le Corbusierと共同で多くの傑作を生み出したCharlotte Perriandによる椅子。 Ombra(影)と名付けられた薄く軽いこの椅子は折り紙がモチーフになっています。
他にもデザイン史に残るエポック・メイキングな建築・家具には日本の影響を受けたものがたくさんあります。
多くの人々にインスピレーションを与え模倣され、今でもレプリカ(復刻版)・コピーとして売られているこれらの家具、その多くは欧米人によってデザインされ商品として生み出されています。 この過程でインスピレーションの源となった日本にはお金が落ちていない、もちろん、これを見てさらに触発された人たちが注目する、という効果はあるけど。
(追記) 先日亡くなったスティーブ・ジョブスが遺したApple商品も人々のライフスタイルを変えた。 でもAppleが基礎技術を自社開発したものはひとつもない、というのは有名な話。
スティーブ・ジョブスいわく「クリエイティビティーとは物をつなげること」(→『クリエイターのレシピ – 2』)。


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