ブログに書くのが遅くなりましたが、6月4日にカイロ大学で行われたオバマ大統領のスピーチは感激しました。 去年11月5日の大統領選勝利宣言が『歴史に残るスピーチ』ならこっちは『歴史を変えるスピーチ』だろうなー
55分という長いスピーチで、大統領選勝利宣言のように派手さはないので、しっかり座ってじっくり聞く必要がありますが、一語一語噛みしめて聞くと良さが伝わってきます。 私はホワイトハウスのサイトで、ながら作業をしながら聞き始めたのですが、途中で目が(耳が)離せなくなり画面を凝視しながら聴いていました。
中東の苦悩を肌身で感じてない私でもじんわり涙が出てきちゃったんだから、中東のアラブ人が熱狂したのはわかる。
YouTubeにもありますが、BBCのフルバージョンのリンクを貼っておきます。
BBC : Obama’s Middle East speech in full
こちらがテキスト全文(BBCの解説付き)。
BBC : Obama speech: An analysis
アメリカとイスラムの関係(すでにイスラムはアメリカ社会の一部)、イスラエル問題、9/11、イスラムの女性差別、etc・・・こんなに複雑に絡み合い広範に渡る問題を、「一朝夜に解決できるという理想は抱いていない」ことを認めながら率直に語る人を見たことがない。
アラブ寄りでもない、イスラエル寄りでもない、双方に語りかける態度がアラブ寄りでもイスラエル寄りでもない私には誠実でフェアに見えましたが、
アラブ世界の反応は良好。
Al Jazeera : Obama seeks new start with Muslims
BBC : Middle East views: Obama’s speech
イスラエルからは反発。
BBC : Israel papers: new era in US ties
スピーチの中で私がもっともじ〜んわりきた箇所(拙訳付き)。
So long as our relationship is defined by our differences, we will empower those who sow hatred rather than peace, those who promote conflict rather than the co-operation that can help all of our people achieve justice and prosperity. This cycle of suspicion and discord must end.
我々の関係が「違い」によって定義されるかぎり、平和より憎しみを広め、正義と繁栄をもたらす協力より紛争を進める連中に力を与えることになる。 この疑念と不和の悪循環は終わるべきだ。
以前『’different’と’wrong’』のエントリーに書いたとおり、私は日本は’different’であることを’wrong’であるとみなしがちで少数者を排除しようとする傾向にあるところに居心地の悪さを感じていたのですが、スピーチを聞きながら世界もそうなのだなー、といたく感じいってしまいました。
最近、イスラム教に興味を持ち本を読み始めています。 もうすぐイスラム教が世界最大の信徒を抱える宗教になると言われている中で、彼らの行動原理がわからないから。 ロジックで動く人はわかる、情で動く人も何となくわかる。 この2つ以外の全然別のもの(宗教)で動く人ってのが全然わからない。
本当は住むのが一番早いんでしょうが(JOIさんみたいに→『ドバイ・バッシングと英語での情報発信』)、そこまでする気はないですが。
ところで、今回、日本のメディアでスピーチの解説を探したんですが、まともな記事が見つかりませんでした(結局、ほとんどBBCからのリンクです)。 日本のメディアよ、もっとがんばってくれい。
いつもチェックしていることでお馴染みのThe EconomistとNY TimesのThomas Friedmanのコラムを載せておきます。
The Economist : Let’s be friends
NY Times : Obama on Obama
『犬も歩けば渋谷にあたる』の坂之上洋子さんが、
今は、オバマ大統領が暗殺されないように、ただただ、心から彼の安全を願うばかり。
と言っていた。
今回は私もそれ思ったなー、「あああ、そんなこと言ったらユダヤ人過激派に暗殺されちゃうよ!」って。
彼が暗殺される不安というのは大統領選の頃から世間に強くあって、私は大統領就任演説をインドのGeorgeの家で、その晩泊まっていた人で集まって見たのだが、その場にいたアメリカ人に聞いてみたら「具体的に暗殺計画があったとかではなく、(ケネディやキング牧師暗殺の歴史を持つアメリカにある)そこはかとない不安」なのだという(もちろん一般人が暗殺計画を知る由もないが)。
June 8th, 2009 at 9:45 pm
キリスト教。特にカソリックは他の宗教を認めないですよね。それが、そもそもの紛争の原因かな?なんて思っています。欧米人が仏教徒だったら世界は変わっていたかも?キリスト教よ仏教のように寛容になってみては???宗教に関しては「仏教が好き」河合隼雄×中沢新一対談 という本があるのですが面白いですよ。
オバマが大統領に就任した時、私も暗殺についてふと思ったので、アメリカの政府関係筋の人間に聞いてみたら一言。「ありえん。アメリカのセキュリティーは万全だ。」とのお言葉でした。
June 8th, 2009 at 10:55 pm
イスラム教の書籍は真田 芳憲が読みやすいです。
大学時代に著者の比較法の授業を履修していたのですが、
イスラーム教を興味深く語ってくださいました。
「イスラーム法の精神」は絶版になってしまっているのですが、
機会があれば是非読んでみてください。
卒業しても手放さなかった数少ない教科書の1冊だったりします。
一夫多妻制が寡婦救済制度であるなど、
攻撃的だと思っていたイスラームの偏見が覆される書籍です。
アメリカに対してはかなり批判的なのですが、イスラム文化を理解できる良書だと思います。
June 9th, 2009 at 10:37 am
>sunshineさん
>宗教に関しては「仏教が好き」河合隼雄×中沢新一対談 という本があるのですが面白いですよ。
ご紹介ありがとうございます! 探してみます。
>アメリカの政府関係筋の人間に聞いてみたら一言。「ありえん。アメリカのセキュリティーは万全だ。」とのお言葉でした。
頼もしいお言葉で・・・ 海外でも万全なんでしょうねー
>カカポさん
>「イスラーム法の精神」は絶版になってしまっているのですが、機会があれば是非読んでみてください。
すごい・・・ 何専攻??? 見つけたら読んでみます! 読む本がたくさんだ。
June 16th, 2009 at 6:40 am
[study]オバマスピーチ@エジプト
la dolce vitaさんのエントリ「歴史を変えるスピーチ」を読んで、Obama’s Middle East speechを見た。*1 コーラン、旧…
June 16th, 2009 at 6:48 am
すばらしいスピーチの紹介、ありがとうございます! ほんと、日本の報道ではほとんど見かけなかったです。
野町 和嘉さんは、メッカの写真を撮るためにイスラム教徒になった写真家さんです。彼の写真集を見ると理解の範疇外にあったイスラム教に対して、感性の面から興味を刺激されます。体系だった知識を身につけたいときは、言葉の書物を当たった方が良いですが、イスラム教の世界はどんなものだろう?というときに、とってもオススメの写真集が「メッカ」。新書なのに写真がいっぱいです。
というわけで、野町さんを紹介しがてら、私もブログで取り上げてみました。 http://d.hatena.ne.jp/kany1120/20090616
June 16th, 2009 at 9:26 am
>kanyさん
でしょ、でしょ? じーーんわり、いいでしょ?
>彼の写真集を見ると理解の範疇外にあったイスラム教に対して、感性の面から興味を刺激されます。
感性系の本、嬉しいです。
感性を刺激するのが、私のひとつのテーマなので(↓)。 写真、大好き。
http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2008/09/post-42.php
スピーチ好きなら、もはや有名ですが、TEDがいいですよ。 残念ながらscriptはないんですが。
http://www.ted.com/index.php