朝日新聞に、英ケンブリッジ大学の学部生の入学基準は今まで「英語+英語以外の1言語」が必要だったのだが、今年から「英語以外の1言語」が除かれ、これからは「英語」だけでよい、とありました。 ケンブリッジ大学が廃止したことにより、これですべての英国の大学からこの基準が消えたとか。
University of Cambridge : Undergraduate Admissions : Entry requirements
理由は、非英語圏の英語人口が増加しているために、英語を母語とするイギリス人の間でわざわざ外国語を勉強しようとする人口が著しく減少しているから、とのこと。
わからんでもないですねー、外国語を勉強するモチベーションが上がらないのも。
でも、英語を母語とすることはもはやアドバンテージではなく、「え? 1ヵ国語しか話せないの?」と言われる世界になりつつあることは『Native English Speakerの危機』に書きました。
この入学基準論争を読んで思い出したのが、INSEADのこと。
私が行ったINSEADのMBAコースには”3 language requirement”なるものがあり、入学前に2ヵ国語、卒業までに3ヵ国語ができること、が条件です。
INSEAD – MBA – Languages
実際は、3番目の言語の基準はけっこう緩いので、ちょっと頑張れば基準をクリアできたりするのですが、この”3 language requirement”に恐れをなして受験をあきらめる人もいるらしい。
非英語圏の学生は英語 + 母語で2ヵ国語としてカウントされるのですが、英語圏の学生に、英語 + あと2つ、は相当キツいらしいです。
逆に、ベルギー人のように、幼少から3ヵ国語くらいペラペラ話せる学生もINSEADにはゴロゴロいたのですが。
では、なぜINSEADが外国語以外では優秀な学生を取りこぼすことになるかもしれないのに、”3 language requirement”を固持しているかというと、理由は以下。
At INSEAD we believe strongly in the importance of an international outlook and ability to work effectively in multiple cultures.
INSEADは国際的な視野を持ち、多文化の環境で働ける能力が非常に重要だと信じている。
英語を母語とする人が「なぜわざわざ外国語を学ぶ必要があるのか?」と悩むことは、これからますます増えると思いますが、私はINSEADの信条に賛成。
『亭主関白』というエントリーに冗談めかして書いたのですが、言語は本当に文化そのものです。
その土地のことばでしか表現できない物・事象は無数に存在するし、「相手のレンズを通して見る」ことができるようになります。
親はレバノン人、生まれはブラジル、育ちはフランス。 レバノンとブラジルとフランスの多重国籍を有する。 アラビア語、フランス語、英語、スペイン語、ポルトガル語の5ヶ国語を話せる。
世界の交流がどんどん進むにつれ(↑)こんな人(もちろんゴーンさん)が必要されているのだとすれば、ことばを学ぶ目的は単にテクニカルに使えることだけではない気がします。
April 3rd, 2009 at 5:28 pm
NATOの会議で緊迫体制のストラスブールから、初めて書き込み。
平日にもかかわらず、NATO休みの私。
(ちなみにフランスでは”OTAN”です。緊張感ゼロ)
>その土地のことばでしか表現できない物・事象は無数に存在するし、
「相手のレンズを通して見る」ことができるようになります。
納得納得。大賛成。
身の回りで起きてる出来事は、その土地の言葉で表現するのが、
一番しっくり来る。
外国語を”マスター”するのは、母国語でない限り不可能だと思うけど、
言葉を介して、その土地の人や文化に触れることで、
なぜその表現を使うのかや、微妙なニュアンスが分かってくる。
最近特に、フランス語で言われる方が、こころにジーンとくるし、
自分でも、フランス語の方が、素直に気持ちを表現できる気がします。
April 3rd, 2009 at 9:06 pm
モノリンガルなんて珍しいわが町。夫の秘書だって5ケ国語を操ります。英語しか喋られないよそ者である友人たちは今必死でフランス語と格闘中。かくいう私もそうです。
April 4th, 2009 at 11:06 am
>ももぺ
初コメント、サンキュ!
>最近特に、フランス語で言われる方が、こころにジーンとくるし、
>自分でも、フランス語の方が、素直に気持ちを表現できる気がします。
おー、ついにそこまで到達しましたか。 すごい、すごい!
私のフランス語は錆びる一方なので、ももぺのフランス語が聞きたいわ♪
>sunshineさん
>モノリンガルなんて珍しいわが町。夫の秘書だって5ケ国語を操ります。
モントリオールは完全バイリンガルがカナダでも一番多い街だと思いますが、世界を見渡すとけっこうそういう場所ありますね(戦争で領土委譲を繰り返した、という国境付近に多い)。 シンガポールもモノリンガルの方が少ないし、ベルギーは言わずもがな、フランスのアルザスとかポーランドとか。 アフリカもそう。
April 6th, 2009 at 3:35 am
ケンブリッジのようなトップレベルの大学で英語以外の言語を要求しないとは、驚きです。もしかして、ラテン語が必須というオチがあったりするのでしょうか?
確かに”3 language requirement”は、「アメリカ人お断り」という雰囲気ですね。子どもの頃に移民した人は大丈夫そうですが。INSEADがそれだけ要求するということは、外国語の選択クラスも充実していたりするのでしょうか。仕事をしながら新たな言語にチャレンジするのはおっくうなので、大学院で勉強できるのはよい機会ですね。
「言語は文化そのもの。」に同感です。英語と同じ調子で日本語で夫とディスカッションをしていると、日本語にしてはきつい言い方になっていたりして、反省しています。英語、日本語直訳、日本で適切とされる表現、と翻訳しないと日本でとんだ失言をしてしまいそうです。日本語で角が立たないように上手に自己主張する方法を学んでから、帰国したい気分です。
April 6th, 2009 at 9:40 am
>beaverさん
>INSEADがそれだけ要求するということは、外国語の選択クラスも充実していたりするのでしょうか。
実際は入学前に3 language requirementを満たしている人がほとんどです、3番目の基準はそんなに高くないので。
3番目の語学はMBA授業と並行して受講するのですが、MBAの膨大なworkloadと語学をやるのはかなりきついので、これをやっている人(ご想像の通り、英語圏の人が多い)は、みんな涙目になっていました。
>英語、日本語直訳、日本で適切とされる表現、と翻訳しないと日本でとんだ失言をしてしまいそうです。
私も最近、英語→日本語と訳して話すと変な日本語になることが多いです(この前も「イギリスが香港を中国に返したの何年でしたっけ?」と聞いたら「”return”の直訳でしょ? 日本語では”返還”と言われました)。
ただそういう問題じゃなく、そもそも日本ではこういう場合どういうべきか?(それとも言わないべきか?)みたいな文化的なものですからね。 練習の名案は思いつきませんが・・・