あまり人のブログに反応したエントリーは書かないのですが、今回はビックリしたので。
ビックリしたのはこちら。
内田樹の研究室 – 「内向き」で何か問題でも?
日本人が「内向き」なのは、要するに「内向きでも飯が食える」からである。(中略)
日本には巨大な国内市場がある。
国内市場限定で製品開発しても、売れればちゃんともとがとれる規模の市場が存在する。
失礼ながら内田さんは存じ上げなかったのですが、今どき識者でこんなこと言う人がいるんですねー?
それとも、私、日本のメディアをネット以外で見ないのでわからないけど、意外とこう信じている人が大半なんだろうか?
このブログを知った池田信夫さんのブログと小飼弾さんのブログでは、もちろん「内向きで飯が食えるわけではない」とあり、私も概ね同意見なので、なぜ「内向きで飯が食えないか」の解説はそちらに譲ります(それにしても内田さんの見解は少子化による国内市場の縮小を完全に無視してますね)。
それよりも私の驚きは、将来の日本を想像した結果が個人によってこんなにも違ってしまうのだろうか、という驚き。
私は愛読する渡辺千賀さんのブログの以下の部分に激しく同意しているのですが、
私は「どうやって転職・留学・海外移住etcのリスクをとったのか?」というようなことを聞かれることがままあるのですが、私としてはそうした転進は、無意識にリスクを軽減するためにとってきたことでしかない、と思っています。 たとえば、日本の大企業にいるリスク、専業主婦になるリスク、などいろいろな「リスク」があるわけです。 個人的に変なところでは、「新宿駅の構内を歩いているときに大地震があり、逃げ惑う群集に踏み潰されて死ぬリスク」というのを昔からリアルかつビジュアルに感じており、「早く東京を脱出せねば」とも思っていました。
千賀さんと同じく、私も自分のことをものすごくリスク回避的(= risk averse)な人間だと思っていまして、転職・留学・移住すべて「しないことのリスク」を回避するための選択でした。
地震のリスクまでは考慮に入れませんでしたが、「日本で将来、年金が満足にもらえなくて70歳過ぎても体にムチ売って働く自分」とか「2人の労働者で1人の老人を支える世の中になったときに重税に苦しむ自分の子供」とかリアルかつビジュアルに感じていました。
もうひとつ。
勝間さんと猪口さんの共著『猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか?』の中で、「少子化は非常に深刻な問題なのになぜ真剣に取り組む人が少ないのか?」という問いに対し、猪口さんが
想像力の欠如
という仮説を立てているのを読んで納得したことがあります(今日・明日困る問題ではないですからね)。
でも、想像した結果が全然違う人が多い場合はどうしたらいいんだろうか?(それはもはや「想像力の欠如」が問題ではない)
意外と内田さんのように考えている人って多いんでしょうか? 純粋な疑問です。
January 8th, 2009 at 11:07 pm
微妙に論点がずれているような気がしました。内田氏の論点は、内向きOK!も極論としてありますが、無責任な外国礼讃に物申す、的な所に真意があるように思います。
ガラパゴス鎖国の海部さんも、「外向きの人と、内向きの人が、ある比率で入り混じっているのが当たり前なのである。どちらに向くべきか、というのは、いまや教育でもプロパガンダでもなく、自分の志向や考え方で決まる。」と最近のブログで仰っていますが、一方通行の議論に対して反対の一方通行で応えるのも時と場合によりますが、多様性に欠ける日本での議論の難しさを感じる議論ですね。
個人的には日本と言う国の地政学上の特殊性は無視できない、かと言って、「内向き」だけでは成り立たなくて、特殊性を十分考慮した上での世界共同体の中で生き残る戦略が必要かと思っています。
January 9th, 2009 at 9:24 am
>Jiroさん
ご意見ありがとうございます。 ブログも拝読しました。
池田さん、小飼さん、私が「それは違うんじゃないか」としているのは、「国内市場限定で製品開発しても、売れればちゃんともとがとれる規模の市場が存在する」の部分で、企業(の中でも製造業)に限った話だと思います(それが内田さんの記事の一番初めの論点ですし、Nokiaの例も出されているので)。
「無責任な外国礼讃に物申す」が論点であり、「内向きの製品開発しても市場がある」点が論点をサポートする論拠であるとすれば、論拠としては弱いかな、と(市場があったのは今までの話なので)。
もちろん例外業界、例外企業があるのは当然だと思います。
対して、海部さんの話は個人レベルの話ですね。 私も個人レベルでは自分の志向・好みで選べばいいと思いますが(多様な価値観を否定しない、というのが私のブログの根底を流れる精神です)、(極端な例ですが)100%内向きの人ばかりでできた企業が外向け製品で大成功するようにはならないと思います(売れるものを作るためには市場の理解が必須なので)。
上記の後半の文は対象が「少子化」にとんでいるのでわかりにくいですが(自分でもわかりにくいなー、と思いながら書きました)、まとめると「今までは想像力が欠如している人が多いから危機感が足りないのだと思っていたが、想像力の欠如が理由でもないらしい」ということが言いたかったのでした。
Jiroさんのブログの以下の部分
>日本と言う国の地政学上の立ち位置を明確に意識もせずに他の国の成功事例のみを引き合いに出して日本と言う国の将来について無責任な発言をする者たちへの警鐘なのではないか
は、同感です(私もいわゆる単純な他国礼讃本は読みません、以前の下記エントリーもご参考まで)。
http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2008/09/post-48.php
January 21st, 2011 at 2:54 am
内田氏のブログは、読んでいて苛立ちすら感じました。
日本が急成長できたのは、明治維新、
そして戦後の外向きな外交や、輸出産業にシフトしたからで、
決して国内産業のみで成長した訳ではないと思っております。
沈没する日本、残念ですが海外から静かに眺めたいと思います。
January 24th, 2011 at 10:15 am
>JJさん
>内田氏のブログは、読んでいて苛立ちすら感じました。
このブログ書いたときは知らなかったのですが、内田樹さんってかなり有名なオピニオン・リーダーなのですねー なおさらビックリ。