『ガイジンであるという特権』で書いたように、概ね暮らしやすいシンガポールですが、移住してきて以来、苦労していることがあります。
それは、健康保険。
日本はご存知の通り国民皆保険。
私は今まで日本の大企業に勤めていたため、健康保険料は毎月の給料から源泉徴収されていました。 どこの病院に行っても自己負担は3割。 医療費について深く考えることもなく生きてきました。
日本は年金もそうですが、現役の労働世代が医療費をより多く必要とする高齢世代を支えるという相互扶助の精神で成り立っています(急速な高齢化によってさまざまな社会問題が噴出しているのは周知の事実)。
一方、シンガポール政府は基本的に「自分のことは自分で面倒をみなさい」というスタンス。 市民と永住権保持者(PR)には国の管理下にある個々人の口座にCPF(政府による社会保障。後日別のエントリー立てます)を積み立てる義務があります(ポイントは積み立てるのが「自分の口座」ということ、積み立て分は自分に返ってきます)。 この一部が医療保険費に回されますが、これは入院など高額医療費にしか適用されず、外来治療には適用されません。
参考:シンガポールの医療保険制度
これだけでは全く十分ではないので、ほとんどの国民は何らかの形で別途民間の保険に加入しています。 この民間保険というのが実にまちまち・・・
企業は社員の福利厚生の一環として雇用主負担で民間の医療保険に団体加入しているケースが多いです。
この場合、保険の免責金額、適用範囲(歯科、出産費用、通常の健康診断にも適用できるか、など)、自己負担額など諸条件は企業の裁量で決まります。
私の夫の会社が加入している保険は家族もカバーされ、適用範囲も広く、自己負担額は歯科の場合50%、その他はゼロ、と素晴らしい内容です。
・・・が、通常保険会社と提携している病院であれば、病院が直接診察料を保険会社に請求するため、診察時にお金はかかりません。 ところが、夫の会社の本社はイギリスにあるため、このキャッシュレスサービスがシンガポールで適用されず、毎回全額自己負担した後、保険会社に対して保険金請求書(Insurance Claim)を書かなければならないのです。
診察してもらった医師に埋めてもらう箇所も内容も多く、この作業がとても面倒・・・しかも、高額な医療費をいったん自己負担せねばならず、保険会社から医療費が返ってくるのは1ヵ月以上後。
・・・なため、面倒くさがりの私には、できるだけ病院に行きたくない、というモチベーションが働いています。
この「自分の面倒は自分でみなさい」という小さな政府スタンスはアメリカが本場。
マイケル・ムーア監督の『SiCKO』はアメリカの医療危機問題を捉えて話題になりました。
シンガポールで社会問題になっているかどうかは知りませんし(ご存知の方教えてください)、「北欧のような福祉国家とどちらがいいのか」まで考察できていませんが、少なくとも医療費について意識するようになりました。 何事も「知らない」より「知っている」ことはいいのだと自分を納得させています。
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