古い家を改修しながら住み続けるということ – 1

『工事が始まりました。』を書いてから2ヵ月経ってしまいましたが、家の改築は着々と進んでいます(写真はFacebookに逐次公開しているので興味ある方はフォローできます)。

ちょうどその頃読んだ日経ビジネスオンラインの『築百年の京町家、ネットで売ってます』の記事がとても面白かったです。 ロンドンでリノベーションの経験を積んだら愛する京都でやってみたいなー、と漠然と夢を描いているので、「町家をリノベーション」と聞くだけで垂涎ものの私は、記事中の八清さんの次期社長である西村さんにコンタクトを取ってしまいました。

お忙しい中すぐにお返事頂いた中で次の部分がとても興味深かったので、イギリスの例を紹介してみようと思います。

イギリスは増築は比較的し易いのですね。弊社の扱うような伝統工法の物件は、日本の建築基準法ではすごく難しい扱いになります。
改装は法律上の建築行為ではないので、申請して許可を取るということができません。主要構造部分を半分取り替えたら、申請が必要という難しく微妙な基準です。戦前から新築基準の建築ルールを引き継いでいることが原因です。


1. イギリスは増築は比較的し易い点について
『日英リノベーション業界比較』に書きましたが、イギリスでは都市の景観を守るための条例が厳しく、建物の外観を変えることが規制されているため住宅のうち9割が中古(既存住宅)です。 既存住宅のストックが変わらないのに、特にロンドンでは人口が増え続けています(現在の人口は戦後最大の870万人、1981年の人口が680万人)。 住宅ストックが増えないのに人口は増えているので、増築しか方法がないというのが現状。 私の家の近所のような住宅街を歩くと1ブロックあたり3軒は増築工事中の足場がかかっています。
また古い家なのでメンテナンス(修繕)は必須です。

2. 現代の建築基準法における古い家の扱いについて
以上のように、古い家の増改築を基本とする社会なので現代の建築基準法で扱うのもほとんどが古い家です。
私がやっているように、通りに面した壁と両隣と接する壁だけ残しあとすべてを立て替える大掛かりな増改築の場合(ビフォーアウターのプランはこちら)、2種類の役所(カウンシル)の許可が必要です。
1つめは建築計画許可(planning permission)と呼ばれ、主に外観の変更に関するもの。 これは工事を始める前に取得します。
2つめは建築規制(building control)と呼ばれ、主に建築物内部に関するもの。 上下水道の給排水・構造強度・防火・防水・断熱効率・安全性など細部に渡りますが、建築基準に合っているかの検査確認が工事期間中に何度も行われます(義務づけられている回数は多くないが、個別物件の条件が異なるので何度も検査官を現場に呼んでよい)。

古い家は土地を掘ったり天井や床を剥がしたりするたびに、何が出てくるかわかりません。 何が出てきても工事を始めた以上は現代の建築基準に合ったものに直さなければいけない家主にとってはヒヤヒヤします。
次回、写真付きで具体的にみていきます。


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