夫と出会ってすぐの頃、夫が”rabbit-proof fence”という映画のdvdを貸してくれました。
日本では『裸足の1,500マイル』という邦題で2003年に公開されています。
オーストラリアにイギリス人を初めとするヨーロッパ人が入植し始めた頃、オーストラリアには5万年前から住む先住民族アボリジニーがいました。 ところが、オーストラリアを植民地化したイギリス人はアボリジニーを僻地に追いやったばかりか、白人同化政策を取ります。 その一環が、アボリジニーと白人の混血児(後に純血アボリジニーも)を強制的に親元から離し施設に収容し、白人社会に適応させるという政策。
映画の舞台は1931年の西オーストラリア。 アボリジニーの女性と白人男性の間に生まれた3人の姉妹がある日突然「アボリジニー保護局」によって強制的に拉致され、1500マイル離れた収容所に収容されます。 母親に会いたい一心の3姉妹は1,500マイル(2,400km。 札幌から那覇の距離。)離れた故郷を目指し砂漠を歩き続き、ついに家にたどり着くという実話。
私はこの映画で初めてアボリジニー白人同化政策の実態を知りました。
アボリジニーの置かれた環境を実際に見たのがthe ghanと呼ばれるオーストラリア大陸縦断鉄道に乗った2年前。
ダーウィンからアデレードという大陸のど真ん中3,000kmを2泊3日かけて走る豪華客室列車で、2泊3日のほとんどの車窓は見渡す限りの砂漠とbushです。
途中でKatherineという街で途中下車したときに見たアボリジニーは昼間から何もせずに集まってだべってました。 多くのアボリジニーが生活保護を受けており、働かずにアル中になる、などの社会問題を知ったのはこのとき。
ヨーロッパを語るときナチスによるユダヤ人迫害とそれを許してしまった社会への反省・トラウマは避けて通れませんが、オーストラリア人(白人)にとってアボリジニー迫害の歴史はそういう存在なんだな、と感じたのもこのとき。
話は戻り、実の親から強制的に引き離された『裸足の1,500マイル』の世代を「盗まれた世代(Stolen Generation)」といい、現在のアボリジニーの5人に1人はその世代に当たるのだそうです。
その「盗まれた世代」に対し、去年2月に政権に就任したてのケビン・ラッド首相が公式に謝罪しました。
そのスピーチがこちら。 あまり長くなく明瞭で簡単な英語なので、ぜひ聞いてみてください(全文テキストはコチラ)。
私がこれを見て思ったのは「謝罪とは本来こういうものなのだ」ということ。
彼は”We apologize…”という言葉も使っていますが、”We say sorry.”と3回言っています。 メディアも”Sorry day”、”Sorry speech”と呼んでいます。
もちろん「謝罪はあったが補償の話がなかった」などという意見もあるようですが、これを聞いて謝罪と思わない人はきっと1人もいない。
私は議員を初め白人オーストラリア人が拍手喝采をしている姿にも驚いたのですが(→コチラ)、自分が犯した罪ではなくとも何となく後ろめたさを感じていたからなんでしょうか? とにかく、この日は「歴史的記念日」だったそうです。
・・・と長々とアボリジニーについて書いたのには理由があります。 続きは明日。
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April 21st, 2009 at 2:11 pm
初めまして。アルクのリンクから時々、読ませてもらってます。
アボリジニとアイヌの話、ケビン・ラット首相のスピーチ、とても感銘を受けました。
高校の世界史の授業での、インディアンの強制移住の話のことを思い出しました。世界史は日本史と違って、先生は広範囲の国々のことを教えなければならず、そのことを先生はぼやきながら、いつも急ぎ足でぶつ切れの感がある授業でした。しかし、このインディアンの強制移住のことは、「涙の道」の地図を別刷りのプリントで用意して、非常に熱のこもった授業をしてくれたことを今でもよく覚えています。インディアンは国の政策でアルコール中毒にならざるを得ないような環境に置かれたことを、高校生の頃に知り大きなショックを受けました。人生の幸福とは何か、生きること、働くこと、アルコールのこと。さまざまな点から考えさせられる話でした。アボリジニもインディアンと似たような境遇に置かれていたのですね。全然知りませんでした。アボリジニとアイヌのこと、私自身もいつか子どもにも基本的なことだけでも話できるように勉強したいです。とてもいいきっかけを頂きました。ありがとうございました。
April 22nd, 2009 at 9:36 am
>Anonymousさん
ケビン・ラッドのスピーチいいですよね。 シンプルなんだけど心の奥の方が暖かくなります。
>このインディアンの強制移住のことは、「涙の道」の地図を別刷りのプリントで用意して、非常に熱のこもった授業をしてくれたことを今でもよく覚えています。
素敵な先生ですね! 「涙の道」は知りませんでした。 本当に若いときに受けた感銘はいつまでたっても覚えてますよね。 先生って重要な職業なんだなー、と今さらながらに思います。
私もNative Americanのことはあまり知りません。 教えて頂きありがとうございます!
October 15th, 2009 at 7:44 am
はじめまして、アボリジニーで検索して、あなた様の日記に遭遇しました。
偶然昨日、英会話の謝るという授業で、オーストラリアの先生がこの話をしてくださいました。映画も見ていたので、感動でした。昨年オーストラリアにいき、保護地区もすこしだけみてきましたので、実感があります、スピーチのことを友人に伝えたいので、私の日記でもこちらの日記を紹介させていただきました。よろしかったでしょうか、
October 16th, 2009 at 10:32 pm
>setsusan
はじめまして。
>スピーチのことを友人に伝えたいので、私の日記でもこちらの日記を紹介させていただきました。よろしかったでしょうか、
もちろんです。 ご紹介ありがとうございます。