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今日は「ゆりかごから墓場まで(cradle to grave)」クリエイティブ人材育成に力を入れるイギリスの教育のうち重要な役割を担う美術館・博物館の話。
私が初めてヨーロッパの地を踏んだのは20歳の時、40日間でキャンプ場に泊まりながら西欧8ヵ国を駆け足一周する、というものでした。 『地球の歩き方』を片手に新しい都市に行くたびに「訪れるべき」美術館・博物館の(中学の美術の教科書に載っているような)「見るべき」絵・展示物を見て、見たことに満足するスタンプラリーのような旅行。 その余りの意味のなさに、その後は美術館そのものをスキップして徐々に『住むことをシミュレーションする旅』に移行していきました。
美術館・博物館とは、
– 気軽に行くもの
– 何度も行くもの
– 子どもの頃から行くもの
であることを知ったのは、ロンドンに来てからです。
今では冬の間は月2回は子どもと行く雨の休日のアクティビティーとなっています。
実際、スクールホリデー(イギリスの学校はハーフタームといって学期の真ん中に1週間休みがある)中のNatural History Museum(自然史博物館)などはイギリス中で最も子どもの人口密度が高いのではないかと思うほど、博物館は子どもだらけです(美術館は博物館ほどではないが他国に比べると多く、また子ども向けの博物館ではなく一般の博物館の話)。
一方、日本では『育児世代の美術館・博物館の利用実態』(2006年)というレポート(首都圏在住の小・中学生の親対象)によると、「末子が未就学児」の層は約4割が美術館・博物館ともに「最近は行かなくなった」と回答しており、小さい子どもがいると足を運びにくいところのようです。
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昨日の続き。
私はサラリーマンの父親、教師の母親の元で何ひとつ不自由なく育ちましたが、私の子どもたちはさらに恵まれています。 親ができることは環境を整え人生のオプション(選択肢)を増やしてあげることだという思いと、失敗や挫折に直面したときに現実にどう向き合いどう学ぶかが必要だと思いが交錯します。
まさにこのトピックが昨日のグロービス堀さんの『5男の父の告白:グローバル時代の子育て術』に取り上げられていました。
堀さんの子育て論は頷くところが多く、今までもいくつかブログに書いています(→『家族のQuantity time』や『12年後の教育オプションを買う』)が、今回も少し長いけど引用。
なるほど、どこの親も口を揃えてこう言うわけである。 競争の熾烈なグローバル化した現代の世界に対応できる子どもを育てるにはどうすればいいのか、と。
5人の息子を持つ妻と僕は、当然ながらこの問題を真剣に受け止めている。
大量に資料を読み、話し合った末に、僕たちは次の結論に達した。僕たちが息子たちのためにできる最善のことは、高いレベルの生命力、つまり「バイタリティ」や「立ち直る力」を身に付けさせることである、と。
十分な生命力を身に付けさせれば、子供たちは失敗に強く、変化に柔軟に対応でき、何事にも前向きな姿勢で臨む人間に育つはずだと僕たちは考えている。
しかし、「バイタリティ」や「立ち直る力」のような抽象的なものを、どうやって身に付けさせるのか。
僕たちはそれを、次の3つの重要な要素に分解した。
1.スポーツの能力
2.囲碁の試合で勝てる能力
3.英会話力と海外経験
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話題になっていたNHKクローズアップ現代の『”独立”する富裕層 – アメリカ 深まる社会の分断』をYouTubeで見ました(→こちら、すぐ消されると思うのでお早めに)。 アメリカで富裕層が自分たちだけの自治体作りに動き出しているというドキュメンタリー。
出版当時大きな話題となったチャールズ・マレーの『Coming Apart: The State of White America, 1960-2010』
(邦訳:『階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現』
)をまさに地でいく内容。 この本の内容をご存知ない方は橘玲さんの『アメリカ社会は人種ではなく“知能”によって分断されている』とGen Shibayamaさんの『頭がよくないと、まともな暮らしができないのか?』をどうぞ。
自分たちのための自治体をつくるという立法・行政・司法まで踏み込んでいるのが、さすが世界でいち早く変化が起こる国アメリカだなー、と思いましたが、知能・経済力による居住地域の分断・コミュニティ化というのはすでに世界各地で起こっています。 ロンドンは独特の都市政策の結果、ストリート(通り)レベルで住民が異なり、コミュニティー化しています(→『都市内部での(自発的)コミュニティ化』、『家探しでわかる都市政策』。
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ようやく子どもが2人になり、「これで子どもが小学校・中学校に入る年がわかる!」と喜んだのも束の間のこと(→『人生の駒がどんどん決まる幸せ』)。 これからどんどん老いる先進国に生まれ、地球温暖化を初め課題は山積み、待ったなしでグローバル化が進む世界で、地球の裏側のハングリーで貪欲な同世代との競争を迫られる子どもたちにはどのような教育を受けさせるべきか、もっと根本的な問題として親としてどういう背中・姿勢を見せたらいいのか、考えていました。
『20、30、50年後を想像しながら動く』を書いたのは2年半前ですが、つらつらと漠然と考えていた将来をもっと具体的な未来予想図を提示しながら動く方向性を示してくれた本に出会いました、先日書いたリンダ・グラットン著『ワーク・シフト – 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』
。
やっぱり無料で読める誰かが切り取った本の抜粋や5分で読めるニュース記事をちらちら追いかけるのではなく、こういう何百ページもある骨太の本を読まなきゃだめですねー もちろん未来の「答え」ではありませんが、ビジネススクールの教授らしくわかりやすいフレームワークを提示して、たっぷり考えるきっかけと動く方向性を示してくれました。 逆にこの本読んでも動けない人はどういう危機感持ってるんだろうと思います。
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シリコンバレーにeBayのCTOやGoogle、Apple、Yahoo、HP etc. テクノロジー企業の社員の子どもが通う私立小学校があります。
さぞかし最新鋭のコンピューターが揃っているのでは?と思いきや、この小学校では授業中にコンピューターを使うことは皆無、家での使用も控えるように指導されています。 使う道具は先生は黒板にチョーク、生徒は鉛筆とペン。 毛糸を使って編み物をすることもあれば、割り算の授業ではりんごやケーキをナイフで1/2・1/4・1/8・・・と切り分ける。
全米の学校が授業にコンピューターを導入する中で時代に逆らうかのような、Waldorf School of the Peninsulaという私立学校(全米に160校ある)の話がThe New York Timesに載っていました。
NY Times : A Silicon Valley School That Doesn’t Compute
テクノロジーの可能性や利点を知リ尽くしてるトップ0.1%に属するであろう人たちが、あえて自分の子どもには使用を禁止するには次の理由があります(私が『iPhone中毒症』で書いたように息子にiPhoneを一切見せないようにした理由でもある。 また我が家にはテレビはありません)。
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『Blastbeat – 高校生の音楽ビジネスプロジェクト』で紹介した音楽を通した社会起業プロジェクトBlastbeatのファウンダーであるRobertに会ってきました。 ブラストビートはNPOとして日本でも活動しています。
・・・とはいってもNPOの話ではなく、私たちが今度引っ越す地域にRobertが住んでいるので、そこの学校事情を聞かせて欲しいと会いに行ったのでした。 以前こちらに書いたように、ロンドンのファミリー世帯は「学校」が住む場所を決める最重要ポイントです。 小学校(Primary School)は4歳から始まるので、息子が1歳になったばかりの私たちも「良い」小学校のキャッチメントエリアに入れるように調査していました。
年齢から推測して当然中高生の子どもがいるだろうと思っていたRobert、未婚で子どもはいなかったのですが(すごい思い込みですね、私)、ある地域の学校事情なんかよりも、はるかにいい話が聞けました。
イギリスにも全国高校ランキングのようなものがあり、「良い」高校(Secondary School)は私立高校(Independent School)と選抜試験で成績の良い生徒だけが入学できる公立高校(Grammer School)が独占しています。
FT.com : Secondary Schools 2011
小学校(Primary School)は評判の良い学校に入るにはかなり近くに住む必要があり、治安や学校の良し悪しと住宅価格は密接に連動しています。 当然、貧困家庭の子どもは良い学校に行けずドラッグ・暴力・アルコールなどの問題に巻き込まれやすく、社会的流動性(Social mobility)が少なくなるとイギリスの社会問題になっています。
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『20、30、50年後を想像しながら動く』で書いたように、激動の「現在」ではなく、(おそらく)激動の20年後、30年後に、子どもがサバイブできる力をつけられるように親としてできる限りのことをするのは私の人生の重大プロジェクト(のひとつ)です。
こちらは出生率とGDPの相関を示したグラフ(The Economist : Go forth and multiply a lot less)。 世界全体の人口増加スピードは緩やかになると言われていますが、それでも私の子どもが成人する頃には、人口分布を見ただけでも私たちが育った時代と全く異なった世界が広がっていることが容易に想像できます。
『時給78セントの衝撃』、『仕事がなくなるのはミドル層』のような世界がすでに現実となっている中、先進国出身者(私の息子がどの国「出身」なのかは親の私にも答えられないが)はどのような力をつければいいのでしょうか?
ひとつ、わかっているようでわからない回答は「答えがない世界で自分で答えをつくり出す力」かな?
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『中国系 vs 西洋系』に引き続き、Art of Parenting。 イギリス人と日本人の未就学児教育を比較した本、『イギリスのいい子 日本のいい子 – 自己主張とがまんの教育学 』
を読みました。 最近たびたびご紹介しているブログ『さまざまなデザイン – ヨーロッパの目、日本の目 – 』の安西さんに、子育てinイギリス代表(?)としてあるブログエントリーの感想を聞かれて以来気になっていたのです(本を読む前の感想はこちらコメント欄)。
長年、文化比較の視点から「西洋文化の独立的な自己」、「日本を含む東洋文化での相互協調的な自己」はそれぞれ対極にあると論じられてきた
ことに対し、自己主張と自己抑制を相反の関係による一元論で捉えるのではなく、
アメリカ=「自己主張が強く自己抑制が弱い」
日本=「自己主張が弱く自己抑制が強い」
イギリス=「自己主張も自己抑制も強い」
と仮定して、日英間の幼児期の教育やしつけを比較した本です。
この本はアメリカで修士、イギリスで博士号を取得した教育学の専門家が著者でフィールドスタディも交えた調査結果が中心となっています(つまりよくある個人及び少数の経験談が中心のヨーロッパ賛美本ではない)。
- ベースが博士論文であるためか調査方法の説明が長すぎ、調査結果の表現の仕方が冗長(もっと見やすいグラフになる)
- 調査時期が古いため(1989 – 90年)、少し内容が時代遅れと思える(特に多文化のロンドンにいるからか、伝統のイギリス式育児法以外にも寛容)
上記2点を除くと、面白い点がたくさんありました(特に私は日本の保育園・幼稚園の様子を全く知らないので、自分が子どもだった頃のことは覚えてないし)。
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「あーあ、ここまで言うか」って記事ですごい反響になってます、The Wall Street Journalに掲載されたイェール大学教授Amy Chuaの“Why Chinese Mothers Are Superior”。 大西洋を越えてイギリスの新聞でも話題になっていました。
WSJ.com : Why Chinese Mothers Are Superior
先に出版された著書『Battle Hymn of the Tiger Mother』
から一部抜粋された内容ですが、ざっくり言うと「なぜ中国系の子どもが学力テストや音楽コンクールの上位を独占してるんだと思う? それは中国系の母が自らの人生を捧げて教育してるからよ」と自分の2人の娘に施した家庭でのスパルタ教育ぶりを明らかにしたもの。
日本語版に一部訳されていますが(↓)、自身の2人の娘が子ども時代に「してはいけないこと」リストがこちら。
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版:中国の母の恐るべきスパルタ教育
- 友達とのお泊まり会
- 放課後、友達と遊びの約束をすること
- 学校の学芸会に出演すること
- テレビやテレビゲームをすること
- 自分で課外活動を選ぶこと
- A以外の成績を取ること
- 体育と演劇以外の科目で成績トップにならないこと
- ピアノとバイオリン以外の楽器を習うこと
・・・etc.
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『国の価値観と個人の価値観』に書いたように、子どもの教育のことも考えてイギリスにやってきた私たちですが、もちろん大学以上の高等教育のことも視野に入れています。
先週のThe Economistでは世界中の大学が(特に新興国の)トップ層の学生を奪い合う現状の中、「イギリスの大学、今まではまあまあうまくやってきたけど、これからも大丈夫?」と今後の大競争に向けて注意を喚起するもので非常に面白かったのでご紹介。
The Economist : Foreign university students – Will they still come?
右の表が2009年の世界の大学ランキング(上海交通大学が毎年発表するもの、ランキングのフル・バージョンはこちら)。 以前も『教育における重要な変化』に書きましたが、トップ20の顔ぶれはほとんどアメリカとイギリス。
以下、記事の中で面白かったポイント。
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