Tag Archives: 少子化

すでに少子化問題は手遅れだけど – 1

私が『さらに少子化を考える』というエントリーを書いたのはちょうど5年前ですが、ここに来て随分日本のネットメディアで取り上げられることが多くなったなー、と思っていたら、安倍政権が「50年後に人口1億人維持」を掲げ、その目玉が少子化対策なんだそう。

無理めな高い売上目標を掲げるのは企業ではよくあることですが、その中身は他企業の買収が中心だったりして、とりわけ巨大企業が成熟業界において自社内リソースだけで持続的成長を遂げるのってすごい難しいんですよー
しかもこれを実現しようとすると、

2030年を目処に合計特殊出生率を人口置換水準である2.07まで引き上げなければならない(ハフィントンポスト:『少子化対策を真剣に考える――異端的論考3』より)

そうで、今の出生率が1.4前後なのでこれはおそらく今までどの先進国も成し遂げたことのないレベルです。

団塊ジュニア世代に属する私は昔から子どもが2人は欲しかったので、子どもを産み育てる人生を随分前から自分ごととして考えてきました。 少子化対策は15年くらい前から行うべきで、マクロで見ると出産適齢期の女性がどんどん減少するこれからではとっくに手遅れだと思いますが、当事者としてどういうことを考えるのか、ということを書いてみたいと思います。
子どもを産み育てる当事者として男女問わず考えるのは、自分の子育ての①長期展望と②短期展望です。
短期展望の話は次回にして今日は長期展望の話。
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働く女が産んでいる。

今週は英ガーディアン紙の記事”Why have young people in Japan stopped having sex?”(なぜ日本の若者はセックスをやめた?)が大きな話題となり、Washington PostやらTIMEやら各メディアが飛び入り参加して盛り上がっていました。
刺激的なタイトルはさておき日本の諸問題の元凶は少子高齢化なので、そこにつながっている非婚・非交際に疑問の焦点が当たるのはまあ自然かなーと思います。 というのも、欧米諸国の中には戦後下げ続けた出生率が1975-80年を境に下げ止まり反転している国があり、その傾向が顕著になっているからです(出生率が上がっている国は米・仏・英・北欧諸国。 詳しくは→『さらに少子化を考える』)。

そしてついにBCA Researchという独立系リサーチ期間から”The Coming Baby Boom in Developed Economies”(先進国にやってくるベビーブーム)というレポートまで出ました。 私はロンドンのベビーブームの煽りをもろにくらっている(*1)ので、「ついにきたーーー!」って感じ。
*1・・・産科のベッド数が足りない、ナーサリー(保育所)が足りない、極めつけは小学校の定員が全然足りない!!! 大変なことになってます、ロンドン。『犬と子どもとイギリス人』
とっても面白い内容なので“The Economist: The coming baby boom?”からポイントをまとめます。
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新しい家族のカタチ

nuclear_family少し前にThe Economistで面白い記事があったので紹介。
ひと昔前のアメリカ映画に出てくるような核家族、会社員のパパと専業主婦のママに子どもが2人という家族のモデルが崩壊し、このような家族は全世帯の中で少数派になった、と言われて久しいですが、イギリスでもだいぶ前から崩れています。
離婚率は上昇し、婚外子の割合は5割にまで上昇、そして出生率は低下し続けていました、ごく最近までは。

ところが、数十年続いてきたこの傾向に歯止めがかかり、新しい家族のカタチ、それも以前の均質的な核家族の形とは違った3種類のモデルが見えてきた、という記事です(The Economist: The post-nuclear age)。
以前、『カリフォルニアを見よ』というエントリーで

世界を変えるような大きな時流(メタ・トレンド)ってまずアメリカのカリフォルニアで発生して、それがすごいスピードで打たれて叩かれてテストされて、こなれたり改善したりローカライズされて、世界の中でも時流が回ってくるのが早い場所から順にぐるーっと回ってくる

と書きましたが、技術のトレンドではなくDemographics(人口動態)であれば、世界の先進都市では同時的に同じような傾向が出てきます。 このThe Economistの記事はイギリスの家族の形の変化として書かれていますが、先進国はどこもこういう傾向が出てきているのでは、という点でとても面白かったです。
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犬と子どもとイギリス人

イギリス人に話しかけたかったら、飼い犬と子どもに話しかけたらいい

と言ったのは義母だが、たしかに・・・ (南ヨーロッパ人と比べると)決してフレンドリーとは言えないイギリス人。 ところが、犬と子どもは別らしい。
息子と一緒にいると本当によく話しかけられる。 一説によると、イギリス人は感情を表に出さないようにしつけられて育っているが、その対象の例外が犬と子どもなのかも(さすがに『子ども好きなスペイン人』みたいにチューしてきたりはしない)。
話しかける言葉はだいたい決まっていて、目を細めながら「私にも3歳の孫(or 子ども)がいるんだよ」。 嬉しそうに話しかけてくるのは子どもや孫がいる人が多いけど、どの年代でも女性は微笑んでくれる。 たまに、「いないいないばあ〜」をして、しばらく遊んでくれる人もいて、そういう人には息子は大喜び。
イギリス人は犬も好き。 こちらの犬はよくしつけられていて、公園ではリーシュをつけず自由に走り回っている。 そのくせ他人の子どもが触りたがるとおとなしく座って触られる。 子どもは小さい頃から犬に思う存分触れ、親に「子犬を買って」とねだるようになる。 またひとり犬好きイギリス人のできあがり。

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子ども大好きなスペイン人

2週間ほど毎年恒例の南ヨーロッパ・ドライブ旅行に行っていました。 今年は南スペインのアンダルシア地方をドライブ → マドリッドで友達の結婚式に出席、という旅程。
2007年から始まったこの夏の恒例行事、2007年はフランス・スペインにまたがるバスク地方、2008年は南イタリア(→『’la dolce vita’の由来』『至福のオリーブオイル』)、2009年は南仏プロヴァンス(→『ルール作り上手なフランス – 1』『la vie en rose』『外国人だからわかる良さ』)でした。
bar_seville.jpg実は息子を連れた初家族旅行は息子が4ヵ月になる前にイギリスのコッツウォルズ地方に行っているのですが、たった4日の旅行で疲労困憊、帰ってきてからブログに書く気力も残っていませんでした。
今回は2週間でどうなることやら?と思っていたのですが、家族全員最高に楽しんで帰ってきました。 息子は6ヵ月を過ぎていろいろなことがわかるようになり、見るもの・聞くもの・触るものすべてが刺激的、毎日本当に楽しそうにしていたし、私たちも始終息子に話しかけてくれるフレンドリーなスペイン人に助けられてバルでタパス三昧の休日を楽しめました。
赤ちゃん連れの旅がこんなに楽だとは思わなかった! 「動き回るようになったら大変よ〜」とよく言われるので、今がちょうど赤ちゃんの黄金期(golden age)なのかもしれませんが・・・
旅の途中、子どもが大好きなスペイン人に助けられたことは数えきれません。

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妊娠・出産の心得11カ条

Twitter上でお知らせしたら、意外に多くのRTがついたので(RTとは他人のつぶやきを自分のフォロワーに広めることができるもの)、ブログでもお知らせ。
友達の友達の産婦人科医 宋 美玄さんが本を出版しました、『産科女医からの大切なお願い – 妊娠・出産の心得11ヵ条』
実はこれ、去年の秋に自身のブログ『LUPOの地球ぶらぶら紀行』『妊娠の心得11か条』として載せたところ、ネットニュース(→1, 2)になるなど大反響を呼び、講演の依頼がきたので講演したところ講演に来ていた出版社の人から声がかかったとのこと(私も去年ブログで読んだので、当時妊娠していた友達に転送しました)。
まずは11ヵ条をどうぞ。

11rules_pregnancy.jpg

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「老後」がなくなる日

数ヶ月前のThe Economist(6月25日号)は”Ageing populations”と題し、高齢化特集でした。
その中の記事のひとつ、”The end of retirement”は以下のような内容。

1900年代初頭に定年が65歳に設定された当時は、平均寿命と定年が非常に近く、政府支給の年金がもらえるのは短い期間であった。 ところが、今や退職後の「老後」はみんなのものになり、その期間が四半世紀を超える国も出てきた。 OECD各国政府の公的年金にかかる支出はGDPの7%にのぼり(1935年のアメリカではその比率は0.2%だった)、2050年には現在より倍増すると予測されている。
平均寿命の増加という本来なら喜ばしいことに起因することに加え、先進国で急速に少子化が進んでいること、ベビーブーマーという最も人口の多い世代が引退し始めたこと、がこの傾向に拍車をかけている。 1950年にはOECD各国の20 – 64歳人口7人に対し、65歳以上人口は1人であった。 この比率が現代は4 : 1になり、2050年までには2 : 1になると予測されている(以下略)。
(The Economist : The end of retirement

日本はOECD諸国の先陣を切って少子高齢化まっしぐらなのですが、この「親世代が満喫しているような老後がないかもしれない」という危機感は、とりわけ私の周りのヨーロッパ人は共有している気がします。

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子供に優しい国って?

海部美知さんのブログエントリー『妊娠も育児も家事も、フツーに仕事じゃんか』で知った発言小町の、「混んだ電車で席を譲ってもらうように毎日周囲に頼んでいる、妊娠中幼稚園児連れのワーキングマザー」の話。
このスレッドに対する反応・コメントが怖すぎる・・・
掲示板は正直読むメリットを感じないので、普段読まないのだが、怖すぎてレス461本(投稿受付は終了)を読破してしまった・・・
妊娠6カ月で毎日幼稚園児連れで朝6時代に通勤しているが(これでもあまり混む前に朝早く起きている)、席に座れないので、優先席で元気そうな人に「席を譲ってもらえないか?」と頼んでいるのだが、ほとんど譲ってもらえない、「周りからはどう見られているか?」というお題。
「サラリーマンだって残業で疲れている」「妊娠も子連れ通勤も自己都合。 他人を巻き込むな」「始発に乗るとか時差通勤するとか努力しろ」というコメントが多くて背筋が寒くなった。
マジ~~~?
妊娠が自己都合なら残業も自己都合では?
優先席ってそもそも対象者がいれば優先するための席では??
東京で子連れ出勤するとこんなこと思われちゃうわけ~~~???
このコメントが東京の通勤人口の意見の総和ではないことを祈るばかりです・・・
シンガポールで乳児・幼児を持つ日本人お母さんの友達が口を揃えて言うのが「シンガポールは子供や子連れに優しい。 ここを経験すると東京で育児はできない!」。
街中の様子を見ていると私でもそうなんだろうなー、と思うけど、今日のエントリーはシンガポール礼賛物語ではないです。 「子供天国ってこんなんでいいのか?」と思うこともあります。
私は子持ちではないので、気づいていないことやわからないことがたくさんあると思うので、お子さんがいる方のコメント歓迎~。

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キャンペーン大国シンガポール

『さらに少子化を考える』エントリーを読んで、いつも記事を送ってくれるYさんが、また面白い記事を送ってくれました。
こちらでも書いたように、シンガポールは政府お墨付きのお見合いマッチングサイトや出会いイベントがあって、なかなか結婚しない若者を結婚させて子供を産んでもらおうと必死なのですが、なかなか効果が出ていません。
記事によると「(政府調査の結果)この国の独身者は結婚そのものに関心はある、ただ結婚するなら”ミスター(or ミス)・ライト”でなければ、との意識が強い」ことがわかったそうで、完璧な異性を待ち続けてチャンスを逃しているのでは?との懸念から「欠点こそ美しい!」キャンペーンが開始されたとのこと(CM見つけた方、教えてくださいCMはなかなか感動的)。
YouTube : Think Family – Funeral
ひぃー、お腹がよじれそう〜・・・ 勘弁して〜
そんなこと国に言われなくても自分のことくらい自分で面倒みるよ、って感じなんですが・・・
シンガポールは政府のキャンペーン大国です。
日本の駅や電車は広告だらけでこれはこれでしばらくぶりに見るとギョッとするのですが、シンガポールの場合、政府キャンペーンが始終流れてます。
最近はずっとこれですね、“Singapore Kindness Movement”という「人に親切にしましょう」というキャンペーンの一環で公共交通の乗り方を指南したもの。

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さらに少子化を考える

ミクロでは余計なお世話な少子化ですが、マクロでは国の存亡を揺るがす社会問題。
先週のThe Economistの特集が高齢化で、非常によくまとまっていたので紹介。
The Economist : Suffer the little children
以前、『シンガポールの少子化対策 – 政府の嘆きが聞こえる・・・』というエントリーで、

日本、南欧 → 女性の社会進出が遅れている → 働く女性の子育て支援環境が未成熟 → 少子化が深刻
アメリカ、北欧 → 女性の社会進出進んでいる → 働く女性の子育て支援環境整っている → 出生率高い
みたいなイメージがあるのですが、
シンガポールや香港のように、女性の社会進出が進んでいる → 働く女性の子育て支援環境整っている → なのに、少子化が深刻
っていうパターンもあるんですな。
いったいなぜなのか?

と書いたまま放置していたので、それに答えることも試みます。
fertility_rates.gif先進国の少子化の進捗状況がよく現れている右のグラフ。 1975-80年あたりを境に、
1. 少子化を食い止めリバウンドした(現在の出生率上位から)アメリカ、フランス、イギリス
2. 少子化が続き出生率1.4以下のイタリア、ドイツ、日本
に分かれているのに気づきます。

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