Tag Archives: 国際競争力

Samsungに見る黒船の効果と限界

そろそろ時効かな、ということで書きますが、以下の内容は非常に個人的な体験のヒアリングに基づくので、あくまで一つの例による所感ということで。
私がINSEADを卒業した2004年、韓国Samsungが熱心にキャンパスにリクルーティング(採用活動)に来ていました。 通常、キャンパスにまで来てMBAのリクルーティングを行うのは、戦略コンサルと投資銀行が主。 「インダストリー」と呼ばれるいわゆる「実業」は、L’Oreal、Johnson & JohnsonのようなFMCG(*1)業界が多かったので、Samsungのようなエレクトロニクス企業(しかもアジア企業)は異色中の異色でした。
*1 FMCG・・・Fast moving consumer goods、変化の早い日用消費材のこと。
私たちの代では、10人にオファーを出し、そのうち2人が就職しました。 ベルギー人男性Fとイタリア人女性G。 彼らの職務はソウル本社のGlobal Strategy Groupでのストラテジスト。
このSamsungの人事戦略は去年の日経エレクトロニクスに特集されていたようです。
以下、『独創的な人材の確保がグローバルな競争力の源泉に–韓国Samsung編(最終回)』より

韓国ソウル市の江南駅の近くに建てられた,韓国Samsungグループの超高層ビル群─。このビル群の一角に「未来戦略グループ(Global Strategy Group)」という極めて優秀な人たちで構成される組織がある。メンバーのほとんどが「S(Super)」クラスと呼ばれる外国人である。
世界のMBAトップ10に入る大学の出身者や博士号を持つ人ばかりで,誰もが知る世界屈指の大企業で5年以上の実績を持つ人たちだ。

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6家庭に1軒がメイドを雇う社会

私たちのシンガポール人(中華系)友達は、夫婦の場合もれなく共働きで住み込みのメイドを雇っています(正式にはメイドは”Foreign Domestic Worker”といいますが、ここでは呼び親しんでいる”メイド”で統一)。
ある夫婦は旦那さんが歯医者さん、奥さんが家族企業(といっても大きい)の2世経営者なので平日は2人ともフルタイム勤務で、メイドが家事・育児を一手に引き受けています。
たまに、一緒にレストランで食事をするとき、2人の子ども(2歳と1歳)と一緒にメイドを連れてきて、私たちが食事をしている横でメイドが子どもの世話をしているので、どう反応したらいいものか悩みます。 欧米人カップルの場合、子どもの世話をメイドに頼んで2人だけで出てくるのでこのへんは感覚の違いでしょう・・・
シンガポールには15万人のメイドがいるとかで、6家庭に1軒の割合でメイドを雇っている計算になり、この制度なしに夫婦共働きを維持できない家庭も多いはず。
以下のような制度になっています(XpatXperience.comより)。
– メイドのほとんどは近隣諸国(フィリピンとインドネシアで9割を占める)からの出稼ぎ労働者。 フィリピン人メイドは英語が話せるのがメリット。
– 探し方はメイド斡旋業者に頼むのが一般的。(例:bestmaid.com.sg
– 外国人メイドの雇用主になるため、メイド用の労働ビザ取得、健康診断などを経て晴れてメイドが家にやってくることになる。 契約期間は通常2年。
– 未経験のメイドの場合、家事のやり方などは教えることになる。
– 住み込みで週6日勤務、日曜はオフのことが多い(法的規制はない)。 1年に1回母国への里帰り休暇と往復の航空券を雇用主負担で補助する。
– 月給はフィリピン人メイドの場合、S$350(約28,000円)、インドネシア人の場合、S$250(約20,000円)。 加えて、政府に外国人労働者雇用者税のS$345/月(約28,000円)を支払う(小さい子どもがいる家庭は税控除あり)。
– 住み込みメイドが嫌な人には「通い」の制度もあり。 住み込みが一般的であるため、シンガポールの2ベッドルーム以上のアパートにはもれなくメイド用の小部屋がついている。

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Asia-Pacific (ex-Japan)

最近、Googleロンドンでエマージング・マーケット事業戦略をやっている友人(トルコ人)、Merrill Lynchシンガポールのプライベート・バンキング戦略をやっている友人(スイス人)と別々に話していて、全く同じ話になりました。
GoogleやMerrill Lynchのような欧米多国籍企業(multinational company)の多くは、地域本社制を取り、地域本社に大幅な権限委譲をして運営しています。 私の上記友人2人は地域本社(それぞれロンドンとシンガポール)で戦略担当マネジャーをしているので他地域本社とのコレポンは日々の業務の一環です。
ところが、Google、Merrill Lynch(プライベート・バンキング部門)ともに、北米・中南米(Americas)、欧州・中東・アフリカ(EMEA)、アジア大洋州(A-P)に加えて日本 (Japan)だけは別本社なのです(Merril Lynchは三菱東京UFJとプライベート・バンキングを行うJV設立)。
数々のグローバル企業が日本進出を試みて失敗しているので(Carrefour、SEPHORA、BOOTS、etc.枚挙に暇がない)、数多くのレッスンから学んだ上でAsia-Pacific (ex-Japan) とJapanの本社を分けたのだと思いますが、これが日本人にとって長期的に見るとよくない傾向だなー、と思います。
ちなみに、Asia-Pacific (ex-Japan)はどう見ても欧米文化であるオーストラリアとニュージーランドも含みます。 日本以外のアジアはオーストラリア・NZと一緒にできるほど欧米式の企業文化が通じるけど、日本は無理!ってことです。

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最近、本気で憂えること

たまたまシンガポールの日系人材紹介サービスの方と話す機会がありました。
私がぼんやりと認識していたことが現実であることを明確に語ってくれました。

  • 日系企業が日本人に求めるのはコミュニケーション。 これは言語ではなく「気が利く」など文化的な意味も含めて、よって求人はアシスタント職などに留まる。
  • 現地採用と駐在員の待遇は(企業によるが)天と地ほどの差があり現地スタッフのモチベーションは低い傾向。 日系企業をあくまで「欧米の多国籍企業に移るステップ」と割り切っている人も多い。
  • ローカル(シンガポール人)の専門職(経理、財務など)を高給で雇うケースはあるが、それでも本気で国籍問わず能力のある人を高給で人材登用している多国籍企業と比べると見劣りする。

これが何を意味するのでしょうか?
当然、日系企業は他の(特に)欧米企業と比べて採用での競争力が弱いという帰結になります。 人材=企業の競争力なので、中・長期的には企業の競争力そのものに直結します(世界各国の中でこういう特殊な雇用慣習を持った国って他にあるのでしょうか?)

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