Tag Archives: ロンドン
だって私、背が高い金髪のイギリス人じゃないもの。
去年の暮れ、聞いたこの言葉に耳を疑った。
言葉の主は、イギリスのインテリアデザイン業界の重鎮・・・と言っては失礼だが、業界団体会長を務め、雑誌記事の執筆・展示会のトークゲスト、など引く手あまた、ロンドンで最も成功しているインテリアデザイナーのひとりAのセリフである。 オーストラリア出身で小柄なブルネット(茶髪)のおかっぱ頭、50代後半(?)でミニスカートを履きこなし、いつも明るく朗らかで誰とも分け隔てなくフレンドリーに接する彼女のファンは多く、私もそのファンのひとりだ。 あるディナーで彼女の席の隣になった時に、若くしてロンドンにやってきて業界経験なしにデザインビジネスを始めた当初は苦労したことを語ってくれた。 その時に出てきたのが冒頭のセリフで、その後こう続けた。
オーストラリアから出てきたカントリーガールだし。
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2 Comments | tags: コンプレックス, シンガポール, ロンドン, 英語, 多様性 | posted in 7. 心・精神, 文化・アイデンティティー
年末年始と日本で古い友人とキャッチアップしました。 みんな子どもが幼稚園から小学校高学年くらいの年になったので、子ども同士がわちゃわちゃと遊ぶ様子を、二十年来の友人と笑いながら眺めるというのが何よりも楽しかったです。
大学の同級生たちと京都でお昼に集まった時、貸し切りレストランで小学生男子4人をひとつのテーブルに集めてみました。 ところが、小学生男子って初対面だと(一年半前にも会っているので初対面ではないけど本人たちの感覚だと初対面に近い)、同じテーブルに座っても、
「はじめまして。 僕は○○に住んでいる□年生の△△ XXです。」
とひと通り自己紹介して、
「君の好きな電車は何?」
と当たり障りのない世間話を始めたりはしないんですね・・・
全員、持参した漫画や本を読みふけって沈黙。 同じテーブルの相手を意識はしているんだろうけど、交流は皆無。 もう少し大人っぽく振る舞おうよーーー
ランチを終えて外に出て、サッカーや鬼ごっこを始める。 するとようやく会話を始め(「ジャンケンポン!」とかなので会話に入らないか・・・)、笑顔が出る。 ケイドロやダルマさんが転んだ、など弟や妹もできる遊びを1時間して帰る頃にはすっかり仲良くなっていました。 でもたぶんお互いの名前はよく把握していない、大事なのは名前や肩書きじゃなくて、「こいつは遊べるやつかどうか」のみ。
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Leave a comment | tags: オフ会, ロンドン, 世界級ライフスタイル | posted in 7. 心・精神, 8. お知らせ, 人脈・ネットワーキング
今年3月末に2軒目の自宅改装を終え、ロンドンに来てから7回目の引っ越しをしたのですが、ようやく写真をウェブサイト上で公開しました。 1870年頃建てられた築150年のヴィクトリア時代の家を50%ほど増築し中も全面改築したものです。
イギリスは景観保護のための建築規制が厳しく(*1)不動産売買のほとんどを中古物件が占めます。 ロンドンは早くから発展した都市なのでいまだに建築物の半分以上が第二次大戦前に建てられたものです。 特に大英帝国が絶頂期を迎え、人口が急増したヴィクトリア時代にはロンドンの中心部にはもう土地がなかったので郊外が住宅地として開発されました。 私たちが住む南西ロンドン、テムズ河沿いのエリアもその頃に開発されたエリアで、古い資料をあたるとどういう順番でエリアが開発され、それぞれの種類の住宅にどんな人たちが住んでいたのか、いろいろ発見できます(*2)。 そんな風に古い建築物を箱として守り続け、中を現代仕様にアップデートしていくのが、こちらの人の住み方です。
*1・・・参照:『ロンドンと摩天楼』
*2・・・下が私たちのエリアの1896年の地図。 まだまばらにしか家が建っていないことがわかります。 右下コーナーを切るように走っているのが鉄道で鉄道の伸張と共に周辺に町ができていきました。

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2 Comments | tags: イギリス, インテリアデザイン, リノベーション, ロンドン, 雑誌掲載, 古民家 | posted in 2. ビジネス・キャリア, 8. お知らせ, 建築・インテリア
昨日の続きです。
『「ハレ」と「ケ」の建築』と同じく、日本では建物の中でも「ハレ」の空間の美しさに比べ、「ケ」の空間がおざなりにされすぎではないか、というお話。
考えられる理由としては・・・
日本の家はプライベートな場所であり、よっぽど親しい人でないと家に招くことはない。 ホテルやレストランなどの内装が美しいのは空間を含めた体験を売っているので当たり前だが、家の中はプライベートな場所なので見栄えを気にする必要はない。 一方、イギリスでは家は社交の場で、気軽に人を招くので、他人の見た目を気にする必要がある。
もっともらしく聞こえるのですが、判断の軸は「他人」で良いのか?と思います。
Garbage In Garbage Out(ゴミばかり入れているとゴミばかり出てくる)
という言葉がある通り、醜悪なものしか見ないと美しいと感じる感性すら鈍ってしまいますし、そもそも自分の目に入るすべての景色、起きている時間の何割かを過ごす家の中の景色を景色(View)としては見ておらず、空間がそこに住む人に与える感覚を五感を使って感じられなくなっているのではないかと思います。
アレックス・カー氏の『ニッポン景観論』
にこういう画像が載ってますが(*1)、まさにこれのインテリア版。

バチカンのサン・ピエトロ広場(現状)©Alex Kerr

バチカンのサン・ピエトロ広場(改善)
大型駐車場ができたことによって、実に便利になりました。アスファルトは危険ですから、ご注意ください。 ©Alex Kerr
*1・・・写真とキャプションは”日経ビジネスオンライン:『この景色は「嫌だ」と思うことが大切です』より引用。
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先日ある日本の雑誌の取材を受けたのですが、その中でこんな質問がありました。
日本とイギリスの「インテリア」についての意識の差はどのように感じますか?
紙面の制限もあり、言いたいことが伝えきれなかったので今回は掘り下げてみたいと思います。
ここで話題となっているのは一般の人の家の中ですが、最近、頻繁に利用しているAirbnb、世界中の普通の人の家からインスピレーションを得るのにも使えるのです。 そこで、東京とロンドンで一般の人(ゲストハウスやシェアハウスではなく)が掲載しているAirbnb物件でおうちの中を見てみましょう。
まず、期待に胸をふくらませて東京。 素敵なインテリアを見るのが目的なので検索条件で価格を1泊3万円以上にして探してみましたが・・・
インテリア的に「はっ!」と心が踊るような家が全く見つかりません・・・(Airbnbに載せてらっしゃる方、すみません) 内装の業者は一社独占?と疑いたくなるほど全部同じに見えます。 「あっ、素敵!」と思ったらWIRED HOTELだったり・・・ まあ一般の人は自分の家に他人(よりによって外人!)を泊めたくない、という事情はあるのかと思いますが。 ひとつ他と違って際立っていたのは表参道のコンクリート打ちっぱなしのこのお宅(Tokyo Artist Loft in Omotesando)。

ホストは映画製作が本業で東京とブルックリンの二拠点生活、建築家のご友人とつくった家だそう。
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揺れているイギリスで政治的な話が多くなっているこのブログですが、お仕事もしております。
今年の初めに竣工したロンドン北部の高級住宅街ハムステッドの築30年マンションのスケルトンリノベーション。 お話を頂いたのが2015年夏。 日本だとこの規模の工事だと設計と工事を合わせて半年程度で終わるのかもしれませんが、そうはいかないのがイギリス。 何だかんだと時間がかかり、お話を頂いてから1年半近く経ってようやく終了しました。
自分の事務所を立ち上げて間もない頃に、私たちを信じて最初から最後まで任せて頂いたクライアントには本当に感謝しています。 ウェブサイトには、完成写真はもちろんのこと、ビフォーアフターの写真、各エリアごとのデザインポリシー、クライアントの感想まで盛りだくさん載せています。 日本とイギリスの比較という意味でも面白いと思うので、ぜひご覧ください。
→こちら。
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ある地区に2組の家族が住んでいました。 彼らはお互いから徒歩5分のところに住んでいますが、彼らの人生がすれ違うことはありません。
Aファミリーは、両親と2歳から9歳まで4人の子どもの6人家族。 イギリス人の父はアセット・マネジメント会社のパートナー(共同経営者)、オランダ人の母は専業主婦、子どもたち4人は私立の学校や保育園に通っています。 彼らが住む家は4階建てのテラスハウス(220平米)、5ベッドルーム(うち4室はバスルーム付き)、1階はオープンプランのリビング、キッチン、ダイニング、別室で書斎と子ども用プレイルーム、地下にはワインセラーがあります。 最近、全面改装したこの家の資産価値は260万ポンド(日本円約3.7億円)です。

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次男が9月から学校に入りました。 2012年7月生まれの次男は日本式には幼稚園の年少ですが、イギリスではレセプションクラスと呼ばれる準備クラスが4歳の9月から始まります。
我が家の小学校組が2人に増え、親である私の仕事は増えました。 これは俗に言う「小1の壁」に加えて、イギリスでは11歳以下の子どもがひとりで外出してはいけない(*1)ことがあります。
*1・・・法律で決められているわけではなくガイドラインであるが、学校は厳しく遵守しており、授業が終わると大人(事前に連絡すれば友達の親なども可能)のお迎えがない児童は学校の敷地から出られない。 参照:『その規制は本当に子供のため?』
イギリスの「小1の壁」は日本より高いです。 2歳の娘のナーサリー(保育園)は8:00 – 18:00ですが、小学校は8:45 – 15:15、両方とも送迎必要。 日本の学童のような放課後保育はなく、学校の敷地内にある民間の放課後クラブ(有料、15:15 – 18:15)か、学校のクラブ(有料、曜日も時間もまちまち)に預ける。 春・夏・冬休みに加え各学期の半ばにハーフタームと呼ばれる1週間の休みがあり、年間の授業日数は日本の205日前後に対し、190日。
6歳の長男はYear 2(小2)で、学校のクラブのオプションが多いので、
月:アート・クラブ@学校 15:30 – 17:00
水:水泳@外部の教室 16:00 – 16:30
木:サッカー・クラブ@学校 15:30 – 16:30
土:日本語@外部の教室 9:30 – 12:45
という状況で、時間と場所の確認をしながら2人のスケジュールをジグソーパズルのように組み合わせ、毎朝持ち物を確認し送迎(お迎えに遅れると罰金のところも)。 3つの学期と年6回あるホリデー期間(*2)の2人分の学校外のアクティビティーを、定員に達する前に申し込み、締め切りに遅れないように正しい金額を支払い、お弁当の有無など持ち物をチェックして準備し送迎を行うのです。
*2・・・子どもだけで留守番がさせられず、学童もないので学校の長期休暇は本当に大変。 参照:『イギリスの小学生の夏休み』
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「ハレ」と「ケ」の建築シリーズ最終回。
前回はオフィシャルな「ハレ」の建築物かプライベートの「ケ」の建築物かに関わらず、ロンドンでは建物が古いということ、建築及び景観を保護する規制についてご紹介しました。
イギリスらしいデザインを形容するキーワードにエクレクティック(eclectic、折衷的な)という言葉があります。 ロンドンの街並みはまさにいろいろな年代の建物がミックスされていて、パリのような統一感がないところが特徴です。 イギリス人の「古い物と新しい物のミックス」、「マスキュリンとフェミニンのミックス」など全体を同じテイストの物でまとめない絶妙なセンスは街並みにもよく現れています。
この真髄を発揮するのがまさにビクトリア王朝時代(1837 – 1901年)、今回はロンドンに数多く残るビクトリア時代の建物から現代までです。
4. ビクトリアン様式(1837 – 1901年)
「ケ」
ジュード・ロウやケイト・モスなどスターやメディア業界の人が多く住む北西ロンドンのプリムローズ・ヒルにあるパステルカラーに彩られた家並みのシャルコット・クレシェント。

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3 Comments | tags: 100年の価値をデザインする, ロンドン, 建築, 建築様式 | posted in 2. ビジネス・キャリア, 建築・インテリア
前回の続きです。
イギリスには都市計画法の一環で景観保護のために厳しい法規制があります。 このうち一般住宅に関連するのは①登録建造物(Listed Building)制度と②保全地区(Conservation Area)です。
①登録建造物の選択基準は、1. オリジナルな状態を保っている1700年以前の全ての建造物、2. 1700年から1840年の間に建てられた大半の建造物、3. 1840年以降に建てられた建造物は個別の歴史的な価値、社会的な利益、都市景観などを鑑み個別に判断、となっています(参照:Historic England)。
ただ、登録建造物制度はリストに登録されなければ保存対象にならないため、登録建造物と非登録建造物が混在している場合に、たとえ登録建造物が保存されても地区としての景観が損なわれるという不都合が生じるようになりました。 都市の景観保存には個別の建築物(点)だけではなく地区(面)の保存が求められるようになって生まれたのが②保全地区(Conservation Area)制度です。
②保全地区は地方自治体によって定められ、歴史的な市街地や漁村・鉱業村、18・19世紀に建設された郊外などです。
また、例え登録建造物や保存地区制度の対象でなくても建築物の外観の変更には自治体の許可が必要です。
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