Tag Archives: リノベーション

ユニットバス・クッションフロア・蛍光灯からの脱却

昨日の続きです。

『「ハレ」と「ケ」の建築』と同じく、日本では建物の中でも「ハレ」の空間の美しさに比べ、「ケ」の空間がおざなりにされすぎではないか、というお話。

考えられる理由としては・・・

日本の家はプライベートな場所であり、よっぽど親しい人でないと家に招くことはない。 ホテルやレストランなどの内装が美しいのは空間を含めた体験を売っているので当たり前だが、家の中はプライベートな場所なので見栄えを気にする必要はない。 一方、イギリスでは家は社交の場で、気軽に人を招くので、他人の見た目を気にする必要がある。

もっともらしく聞こえるのですが、判断の軸は「他人」で良いのか?と思います。

Garbage In Garbage Out(ゴミばかり入れているとゴミばかり出てくる)

という言葉がある通り、醜悪なものしか見ないと美しいと感じる感性すら鈍ってしまいますし、そもそも自分の目に入るすべての景色、起きている時間の何割かを過ごす家の中の景色を景色(View)としては見ておらず、空間がそこに住む人に与える感覚を五感を使って感じられなくなっているのではないかと思います。

アレックス・カー氏の『ニッポン景観論』にこういう画像が載ってますが(*1)、まさにこれのインテリア版。


バチカンのサン・ピエトロ広場(現状)©Alex Kerr

バチカンのサン・ピエトロ広場(改善)
大型駐車場ができたことによって、実に便利になりました。アスファルトは危険ですから、ご注意ください。 ©Alex Kerr
*1・・・写真とキャプションは”日経ビジネスオンライン:『この景色は「嫌だ」と思うことが大切です』より引用。

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イスタンブールの古い家

今日は前回『イスタンブールを見て死ね。』の最後に紹介したBBC記事がトピックです。 

イスタンブールではオスマン帝国時代に建てられた木造の古い建物が酷い状態で朽ち果て、または壊されていくのに対し、2010年にユネスコが「街並みを保護しないと危機遺産リストに入れるぞ」と最後通牒を突き付けた

というのが記事の概略ですが、私も職業柄、古い建物に目がいきました。
ここでユネスコが指している「オスマン帝国時代に建てられた木造の古い建物」とは19世紀後半から20世紀にかけて建てられた特徴的な木造建築を指しています。 その中でも一般人の住宅であったテラスハウス(日本式に表現すると長屋)はこんな外観をしています(左が通りから見た外観、右は同じ建物のディテール)。
istanbul old houses1
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ここまで違う、日英ビフォーアフターTV

朝日放送の人気番組『大改造!! 劇的ビフォーアフター』が番組初の海外物件、しかもパリのアパートをやった、とロンドンの日本人デザイナー界隈で話題になっていたので探して見てみました。
前編。 後編はこちら

パリの日仏ファミリーがボロアパートを買ったはいいがボロすぎて改装は自分たちの手に負えない。 日本の匠に依頼して夢の日本風の住まいを実現する、というもの。
日本人、本当に、本当に「匠の技」が好きなんですねー(まあ、そういう番組なんですが)。

依頼主のバックグラウンドや希望が酷似しているにも関わらず、全く異なったアプローチとなったイギリスのテレビ番組を見たので紹介します。
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劇的ビフォーアフター ロンドンの家!

建築インテリアデザイナーとして手がけていた自宅の改装プロジェクトシリーズ。 インテリア含めてビフォーアフターと建築途中の写真をご紹介します。
今までのプロジェクトに関するエントリーはこちら。
『築120年の家を買いました。』
『工事が始まりました。』
『古い家を改修しながら住み続けるということ – 1』
『古い家を改修しながら住み続けるということ – 2』
『築120年の家を現代仕様に改装すると?』
こちらがビフォーアフターの平面図(クリックすると大きくなります)。 内部の壁はすべて取り壊し、1階と2階合わせて25%ほど増築する大きなプロジェクトで(家は小さいですが)、家を購入してから区の建築許可を取ってビルダー(施工業者)を選び、工事開始までに6ヵ月、着工してから完成までに7カ月かかりました。
Plan Before & After
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築120年の家を現代仕様に改装すると?

私が建築インテリアデザイナーとして一から十まで自分で手がけている初のプロジェクト、すでに内装工事に入りました。 写真を中心に簡単にFacebookでアップデートしていますが、ブログではイギリスの家の住まい方も含め詳しく解説しています。

今までのブログ記事はこちら。
『築120年の家を買いました。』
『工事が始まりました。』
『古い家を改修しながら住み続けるということ – 1』
『古い家を改修しながら住み続けるということ – 2』

今回は現代の生活様式に合わなくなった古い家をどのように変えたのか、という点を中心に写真で解説。
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古い家を改修しながら住み続けるということ – 2

昨日の続き。
建築物の敷地・設備・構造・用途など基準を定めた建築基準法は時代の要請に応じ変わっていくものです。 私たちの家(→『築120年の家を買いました。』『工事が始まりました。』)のように120年も前に建てられた家(+1970年代の増築付き)を増改築する際には現代の建築基準に照らし合わせ直さなければなりません。
WSJに『サムライが住みそうな伝統的日本家屋を改装した米国人モーアさん』という面白い記事がありました。 記事中に

1450万円で買った家の修復に2000万円以上費やしている

とありますが、よくあることですね・・・ こちらでも私の家のように内装がシンプルな家でも古い家(ヴィクトリア時代)の改築は新築の3 – 5割は余計にかかると言われていますし(時間も)、登録建造物(Listed Building)や保存地区(Conservation Area)ならもっとかかります。 イギリス人は「古い建物にこそ価値がある」と考えるので、手を入れたら入れただけ家の価値が上がるという経済合理性があるからこそする人が多いのですが(→『The Restoration Man』)。

我が家でもいろいろありました。 写真でご紹介します(写真をクリックすると拡大します)。
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古い家を改修しながら住み続けるということ – 1

『工事が始まりました。』を書いてから2ヵ月経ってしまいましたが、家の改築は着々と進んでいます(写真はFacebookに逐次公開しているので興味ある方はフォローできます)。

ちょうどその頃読んだ日経ビジネスオンラインの『築百年の京町家、ネットで売ってます』の記事がとても面白かったです。 ロンドンでリノベーションの経験を積んだら愛する京都でやってみたいなー、と漠然と夢を描いているので、「町家をリノベーション」と聞くだけで垂涎ものの私は、記事中の八清さんの次期社長である西村さんにコンタクトを取ってしまいました。

お忙しい中すぐにお返事頂いた中で次の部分がとても興味深かったので、イギリスの例を紹介してみようと思います。

イギリスは増築は比較的し易いのですね。弊社の扱うような伝統工法の物件は、日本の建築基準法ではすごく難しい扱いになります。
改装は法律上の建築行為ではないので、申請して許可を取るということができません。主要構造部分を半分取り替えたら、申請が必要という難しく微妙な基準です。戦前から新築基準の建築ルールを引き継いでいることが原因です。

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工事が始まりました。

『築120年の家を買いました。』の家の改築工事がようやく始まりました。 ヴィクトリア時代築(推定1890年)の2階建てのテラスハウス(Workers’ cottageと呼ばれる種類で貴族の館ではなく小さな労働者階級の家)です。
大がかりな増築のため、区(カウンシル)の建築計画許可(planning permission)を取得し、ビルダー(施工業者)を決めるための見積もりを取るためのテンダーパッケージ(各種図面と仕様書)を作成、4業者から見積もりを取り価格交渉し、ビルダー決定。 テラスハウス(長屋)で両隣の家と隣接しているため、共有している壁(party wall)に行う工事の詳細に関する合意(party wall award)を取る、この全てのプロセスに7ヵ月かかりました。
ボロ家なので住み辛かったし、夏は『ナメクジ屋敷』と化したので早く出たくてたまりませんでした。 工事が始まっただけで、大きな仕事を成し遂げた感でいっぱいです(笑)。 子どものナーサリーもあるし工事の監督もあるのですぐ近くに引っ越したのですが、今にも崩れそうではない普通の家に移れただけでほっとしています。 やはり住む環境が与える影響は大きい・・・

第一週は解体工事。 あっという間に見る影もなくなりました(写真をクリックすると大きくなります)。
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