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昨日の続きです。
『「ハレ」と「ケ」の建築』と同じく、日本では建物の中でも「ハレ」の空間の美しさに比べ、「ケ」の空間がおざなりにされすぎではないか、というお話。
考えられる理由としては・・・
日本の家はプライベートな場所であり、よっぽど親しい人でないと家に招くことはない。 ホテルやレストランなどの内装が美しいのは空間を含めた体験を売っているので当たり前だが、家の中はプライベートな場所なので見栄えを気にする必要はない。 一方、イギリスでは家は社交の場で、気軽に人を招くので、他人の見た目を気にする必要がある。
もっともらしく聞こえるのですが、判断の軸は「他人」で良いのか?と思います。
Garbage In Garbage Out(ゴミばかり入れているとゴミばかり出てくる)
という言葉がある通り、醜悪なものしか見ないと美しいと感じる感性すら鈍ってしまいますし、そもそも自分の目に入るすべての景色、起きている時間の何割かを過ごす家の中の景色を景色(View)としては見ておらず、空間がそこに住む人に与える感覚を五感を使って感じられなくなっているのではないかと思います。
アレックス・カー氏の『ニッポン景観論』
にこういう画像が載ってますが(*1)、まさにこれのインテリア版。

バチカンのサン・ピエトロ広場(現状)©Alex Kerr

バチカンのサン・ピエトロ広場(改善)
大型駐車場ができたことによって、実に便利になりました。アスファルトは危険ですから、ご注意ください。 ©Alex Kerr
*1・・・写真とキャプションは”日経ビジネスオンライン:『この景色は「嫌だ」と思うことが大切です』より引用。
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先日ある日本の雑誌の取材を受けたのですが、その中でこんな質問がありました。
日本とイギリスの「インテリア」についての意識の差はどのように感じますか?
紙面の制限もあり、言いたいことが伝えきれなかったので今回は掘り下げてみたいと思います。
ここで話題となっているのは一般の人の家の中ですが、最近、頻繁に利用しているAirbnb、世界中の普通の人の家からインスピレーションを得るのにも使えるのです。 そこで、東京とロンドンで一般の人(ゲストハウスやシェアハウスではなく)が掲載しているAirbnb物件でおうちの中を見てみましょう。
まず、期待に胸をふくらませて東京。 素敵なインテリアを見るのが目的なので検索条件で価格を1泊3万円以上にして探してみましたが・・・
インテリア的に「はっ!」と心が踊るような家が全く見つかりません・・・(Airbnbに載せてらっしゃる方、すみません) 内装の業者は一社独占?と疑いたくなるほど全部同じに見えます。 「あっ、素敵!」と思ったらWIRED HOTELだったり・・・ まあ一般の人は自分の家に他人(よりによって外人!)を泊めたくない、という事情はあるのかと思いますが。 ひとつ他と違って際立っていたのは表参道のコンクリート打ちっぱなしのこのお宅(Tokyo Artist Loft in Omotesando)。

ホストは映画製作が本業で東京とブルックリンの二拠点生活、建築家のご友人とつくった家だそう。
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『クリエイターたちのロンドンの家』シリーズ最終回は暗くてドラマチックなインテリアを一気にメインストリーム(?)にのし上げた有名デザイナーAbigail Ahernです。 その名も④ダーク&ムーディー系と名付けました。
過去のロンドンの家シリーズ。
①色の祭典系(1, 2)
②サルベージ系(3, 4)
③マリー・アントワネット系(5, 6)
この家を買った頃は他の数多ある家と同じようにオフホワイト中心のスカンジナビア系だったという彼女のインテリア。 壁をダークなインク色に塗り替えるたびにドラマチックな変化を遂げ、すっかりマキシマリスト(ミニマリストの対極)でムーディーな空間になりました。 アンチ・ホワイト宣言を出したこの家は多くの雑誌で取り上げられ、今では数々の著書を出版し取材や講演もこなす人気デザイナー(彼女のスタイルが好きな人にはこちら→『Decorating with Style』
、『Colour: How to Banish Beige and Bold Up Your Home』
)。
彼女の家を彩るキッチュでボヘミアンなアイテムの多くはイーストロンドンにある彼女のショップで買えます。 ブログの人気から火がついたところなどウェブやソーシャルメディアの使い方がうまいビジネスウーマンで若手デザイナーのお手本的存在。
オリジナルのダーク&ムーディーなインテリアをたっぷりどうぞ。
(写真ソース:Apartment Therapy)
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③マリー・アントワネット系2人目はアーティストのRos Fairman。
フリーマーケットやアンティークフェア、オークションハウス、チャリティーショップ回りが大好きという筋金入りのフランス物コレクター。
私もイギリスに来て以来、趣味と実益を兼ねたアンティークフェア巡りが大好きになりましたが、新しく買った家具がほとんどないというこの家、ここまでくると趣味の域を超えて「生き様」とでも呼ぶべき(?)。
イギリスはアンティーク好きのためのテレビ番組や雑誌が非常に多く、生き甲斐となっている人も多く見受けられます。 特に女性に大人気のフランスのアンティーク、ディーラーやバイヤーの行き来も多く、私の家の近くで月2回開催されるアンティークマーケットにも朝2時起き、3時起きで大陸(フランスやベルギー)のディーラーがバンやトレーラーに商品を積んでやってきます。 平日の朝6時頃オープンするのですが7時に行くと駐車場が満車で入れないほど。
彼女もそうやって25年かけてこつこつ集めたのでしょう、大好きな物が詰まったお家をどうぞ。
(写真のソース:Emily Wheelchair)
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『クリエイターたちのロンドンの家』シリーズ、①色の祭典系(1, 2)、②サルベージ系(3, 4)に続くのは、③マリー・アントワネット系。 フレンチ・ロココのフェミニンなデザインをベースにしたアンティークを多用するインテリアは女性に大人気。 特に自分の思いどおりの夢を見たいベッドルームに置く家具(ベッドやドレッシングテーブル)や、ゴージャスなシャンデリアなどは圧倒的に人気で、特にフレンチインテリアではない家にも使われていますし、曲線脚が美しい椅子・ソファなどのアイテムも人気。
ここではフレンチのフェミニンな要素をうまく他と組み合わせてエクレクティックに仕上げたお家を紹介します。
1人目はインテリアスタイリストのMarianne Cotterill。 HarrodsやThe Conran Shopなどのショップで経験を積み、著名クライアントを持つ彼女の家はどの部屋もため息がつくほど美しいのですが、スタイリストらしく小物使いの上手さが光っています。 建物にはヴィクトリア時代の建築の特徴を残しながら照明やソファ・ベッドにマリー・アントワネットの時代を彷彿させるフェミニンなフレンチを使い、他の時代のものと混ぜています。
この素敵なお家、写真のロケに使えるよう貸し出していますし(→mapesbury road london)、インテリア雑誌のハウスツアーにも組み込まれていたりするので、訪れる機会があるかもしれません(?!)。
(写真のソース:Design to Inspire、House to Home)
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『クリエイターたちのロンドンの家』シリーズ4人目は②サルベージ系のアーティストカップルJames RussellとHannah Plumbの南ロンドンのお家。
JamesPlumbという名で創作活動をしており、使われなくなった古いオブジェクトを新しい目的を持ったものにクリエイトする”repurpose”(再度目的を持たせる)、”upcycle”(リサイクルではなくアップサイクル、もっと付加価値の高いものに作り替える)と呼ばれるデザイントレンドの先駆者です。 作品はDezeenの記事(→こちら)でも見ることができます。
彼らのマイホームは1840年代ヴィクトリア時代に建てられた小さなコテージ、買った当時はあまりにもひどい状態だったものを少しずつお金がたまるたびに壁や床をはがして改装してきたそう。 イギリス人は、家が古ければ古いほど、状態が悪ければ悪いほど燃える人が多いのですが(→『古いほど人気なマイホーム』)、まさにそういうタイプ。 部屋の中は小説ディケンズの時代にタイムスリップしたような錯覚が起きるほどムードたっぷり。
同じサルベージ系でも廃材の加工などにお金がたっぷりかかってそうな前回のRetrouviusのインテリアに対し、本当にお金がかかってなさそうなところがいいです(笑)。
(写真のソース:Simon Kennedy、Liza Corbett、The Independent)
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好評『クリエイターたちのロンドンの家』シリーズ、①色の祭典系(1, 2)に続いて、②サルベージ系の登場です。
“salvage”とは「救出する」「復古させる」という意味ですが、取り壊され捨てられる寸前の建築材・廃材をその名の通り救って再利用すること。 ここ10年くらいイギリスのみならず欧米で大トレンドになっています。 普段インテリアデザインのトレンドなど触れることがないThe Economistでも2012年に記事になっていました(→The Economist: Back to future)。
古い建物から救出した床材やタイル・石材などを使用したデザインでこの分野の先駆者となり熱狂的なファンがいるショップ・デザインスタジオRetrouvius、MariaとAdamという夫婦が創業者です。 建築廃材や古いトイレ・バスタブなどが二束三文で売られるreclamation yard(再生場)をお洒落な若者が闊歩する場所に変えたのは彼らの功績が大きいでしょう。
サルベージ系の人気の理由は、新品を買うのと異なり、使い込まれすでに年輪が刻まれ味が出た建築材を使ってオリジナルな自分のインテリアをつくりあげるプロセスそのものを楽しめること、「この壁材は北イングランドの学校の体育館で使われていたんだよ」などとストーリーを語れること。 格好いいけど自分でやるのがすごく難しい彼らのスタイルは著書『Reclaiming Style』
で余すところなく堪能できるので、気になった方はそちらもどうぞ。
(写真のソース:House and Garden UK、Remodelista)
今日はそのRetroviusが手がけたプロジェクト、建築用語でBrutalist architectureと呼ばれる1970年代築のコンクリート打ちっぱなしのビルBarbican Centreの上階アパート。 Barbican Centreは劇・ダンス・コンサートなどがパフォーミングアーツが開かれる会場も擁しています。
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『クリエイターたちのロンドンの家』シリーズ2人目はファッションデザイナーZandra Rhodes(Zandra Rhodes)。 ファッション業界で40年に渡るキャリアを持ち、南ロンドンBermondseyにファッション&テキスタイル博物館を創設した彼女は博物館のあるビルの屋上に住居兼スタジオを構えています。
私が勝手にカテゴライズした「①色の祭典系」と呼ぶのにふさわしいぶっ飛んだインテリア。 ご本人もピンクの髪でビジュアル的にぶっ飛んでいて、ちょっと草間彌生さんを思い出しました。
元倉庫だったビルを5年かけてミュージアム&住居に改装したという大プロジェクト。 産業革命発祥の地で世界の工場と呼ばれたイギリス、「モノ」の生産地が中国など人件費が安い国に流れる中で工業用途だった建物を住居にコンバージョン(用途変更)することが非常に盛んです(参考:『The Restoration Man』、『廃墟に2万人が並んだ日』)。 壊さずに新たな息吹を吹き込むのが哲学。
(写真のソースはThe Guardian、The Selby、The Interior Stylist)
タワーブリッジ、シャードなどテムズ河沿いの建築が一望できるアパート最上階の外観は何とピンク。 すぐにメキシコのモダニズム建築家Luis Barraganを思い出しましたが、ドンピシャでBarraganの下で働いたことのあるカリフォルニアの建築家Ricardo Legorretaがプロジェクトの監督を務めたとか。

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『21世紀の英国デザイン』では、一見すると英国っぽく見えない今のデザインを紹介しましたが、「ロンドンっぽい」デザインは存在します。 今回から数回にかけてロンドンを拠点に活躍するクリエイターのインテリアを見ながらビジュアル(視覚)でロンドンっぽさを感じて頂きたいと思います。 共通するキーワードは”quirky”(風変わりな)、”eccentric”(奇抜な)、”edgy”(先端をいく)、”eclectic”(折衷的な)です。 「ああ、何か(この人たち)自由でいいなー」と自分も殻を破ってみたくなりますよ。
そして今まで何度か書いていますが「伝統と革新の融合」はこの国に根付いているバリューなので、ほぼ全ての家で古いもの(価値のあるアンティーク品あり、ガラクタ市やeBayで見つけた二束三文の掘り出し物あり)と新しいものがミックスされているので、そこにも注目!(→『そこにしかないもの』、『あなただけの家 – 2』)。
ロンドンのインテリアと言えば2009年に出版された『New London Style』
が秀逸でしたが、最近出版された『Creative Living London』
もとても良かったので、この2冊に出てきたインテリアが中心です。
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最近、「自分の好きなスタイルと聞かれてもわからない。 どうやって見つければいいの?」と聞かれたので「自分のスタイルを見つける方法」についてご紹介します。
職業上、インテリアを例に取りますが、ファッションでもアートでもビジュアル(視覚)に関するスタイルであれば同じ方法が使えると思います。
最初に、日本のインテリアデザイン誌や住宅展示場などでよく使われる「フレンチカントリー」「北欧モダン」のような言葉はいったん忘れてください。 詳しくは『「北欧インテリア」って何?』、『ゴスロリとちゃぶ台ひっくり返し』に書きましたが、日本で使われているインテリアを現す形容詞は非常に曖昧です。 また○○スタイルと型に当てはめようとするのも好きなようです(血液型占いとかまさにそうですが)。
本当に自分の好みに迫るには言葉からではなく、ピンとくるビジュアル(視覚)を集めるところから始まります。
ビジュアルはネットでも集められますが、本気でやってみようと言う人には洋インテリア雑誌の購読をお勧めします。 『21世紀の英国デザイン』に書いたように、ロンドンは世界のデザイントレンドを牽引していること、「衣食住」の「住」に多大な情熱とお金を注ぎ込むイギリス人が多大なマーケットを形成していること、から本エントリーの最後でお勧め英インテリア雑誌をご紹介します。
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