Tag Archives: アイデンティティー

不安定な時代のZEN

週末は香港在住、米系投資銀行勤務の夫の友人(INSEAD同級生)が遊びに来ていました。
シンガポールに住む欧州系ユニバーサルバンクのM&A部門に勤める友人も集まるとなれば、もちろん昨今の金融危機で受けたダメージに悪態をつきながらひとしきり傷のなめ合いです。
以前こちらのエントリーにも書きましたが、ボーナスゼロといえど、「去年の年収( = 7,000万円)が、ベース分だけ( = 2,500万円)になった」とかいうレベルの話なので、あまり同情はしていませんが、アーリーリタイアを夢見て昼夜激務に耐えてきた本人にとってみるとやはりショックなんでしょう。
香港在住の彼はmaterialisticというか非常に生活も遊び方も派手だったのですが、今回の一件が相当こたえたようで「ZEN(禅)の心境に達した」んだそうです。
今までの生活をすべて見直し、意味のない遊びを止め、何人かの有害な人間関係は清算し、2年前にNYで出会った女性が自分にとって大事な人であることに気づきNYまで飛んでお互いの気持ちを確かめ合い遠距離恋愛を始めたんだそう。 2ヵ月と同じ人と続いたところを見たことがなかったので、これだけで奇跡である。
そして、高給に釣られて今の勤務先のオファーを受けシンガポールから香港に引っ越したものの、やっぱりシンガポールがいい、子どもを育てるならシンガポールだ、とまで言い切っていたので私たちは絶句(ちなみにポルトガル人です)。 「子どもを育てる」なんて来世まで言わなさそうな人だったんだが・・・

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自由を求めた移住

アメリカ大統領選、フタを開けてみるとオバマの圧勝でしたね。
よかった、よかった。 ペイリンが出てきて、共和党の支持率が上がったときは世界はどうなることか?と思いましたが。
今日はアメリカ大統領選の話ではなく、同日カリフォルニア州で行われた住民投票のProposition 8のお話(正確にはProposition 8議論で思い出した話)。
proposition8.jpgProposition 8とは同性婚を禁止し「結婚は男女間に限る」と法律で定義するための提案です。 詳しい説明は、他のソース(下記参照)に譲りますが、全く門外漢&無知な私からするとカリフォルニアなんて同性愛のお膝元、メッカみたいなイメージです。 サンフランシスコの一部やlaのウエスト・ハリウッドあたりでは、ゲイ・レズビアンカップルが仲睦まじく過ごす姿をたくさん見かけました。
そんなカリフォルニアで激しく同性婚を嫌う人がこんなにいるとはねー、悲しいねー
Wikipedia : California Proposition 8 (2008)
The Economist : Showdown
「自分のライフスタイルに合わせて世界中からベストな場所を選ぶ」というこのブログの観点から、身軽に居住国を変える友人の姿は『国に帰るのは誰? 海外に出るのは誰?』『果たしてヤジ馬なのか歴史の証人なのか?』で書きましたが、「自由を求めた移住」というのもあります。

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'different'と'wrong'

このブログも今日が100エントリー目になりました。
開始当初から訪問頂いている方も、途中からの方も、いつも訪問頂きありがとうございます。
100エントリーを記念して(?)、今日はこのブログの底に流れている精神みたいなものの話を。
それに気づいたのは、INSEADに留学していたときにイスラエル人のクラスメイトに言われたひと言。

I read ‘different’ and ‘wrong’ are the same words in Japanese. It tells so much about its culture, doesn’t it?
日本語では’different’と’wrong’が同じ言葉だって(何かで)読んだよ。 すごく日本の文化を現しているよね?

はじめ彼が言ったことが何を指しているのかわかりませんでした。 その単語が「違う」だと気づいたとき、初めて私が長い間感じてきた「しっくりこない感」の正体が説明され、私の過去の体験とつながりを持ったのです。
英語では、
He has a different opinion.(彼は違う意見を持っている)

What he says is wrong.(彼が言っていることは違う)
とは
‘different’と’wrong’という異なる単語を使って明確に区別されます。 ところが、日本語では「違う」と同じ単語で表現できてしまいます(2番目の文は「彼が言っていることは間違っている」と明確にすることもできますが)。
言葉は文化なので、’different’ = ‘wrong’と無意識にせよ意識的にせよ2つの概念を混同していることからくる違和感を、彼に指摘される瞬間まで数多く体験していたので、霧が晴れたような気分でした。
‘different’ = ‘wrong’と混同することから来る社会とはひと言で言うと「マイノリティーに冷たい社会」です。

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