Tag Archives: アイデンティティー

キミたちはいつ日本人になるチャンスを失うのだろうか?

辻仁成さんの「息子よ」で始まるツイートにはまっています(@TsujiHitonari)。 いつも美味しそうな手料理と共に息子さんへの愛がドーバー海峡の向こうから伝わってきて、「ああ、親業って大変だけど、どの親も精一杯に親やってるんだなー」とほっこりします。

(「残り物」のクオリティが高すぎ!)
少し前にYahooニュースでこの記事を読んで、思わず「やっぱり!」と叫びそうになりました。
AERA.net:「僕は正直言って帰りたいんです」パリ在住の辻仁成、本音がポロリ?
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他人になろうとするには人生短すぎる

先日終わったプロジェクト(→『ロフトアパート・プロジェクト – 1』『- 2』『- 3』)では学校のディレクターと外部の現役デザイナーの前でプレゼンをしフィードバックをもらったのですが、こちらが拍子抜けするくらい誉められました。 「へっ? ”ここはもっとがんばって”とかないの?」って感じ。
AL_Crisocolla.png全員が同じスペースを使ってデザインしたのに、16人いれば16色。 否応なしに個性が出ているのが本当に面白い。
私の場合、”coherent”(一貫している)、”believable”(本当にありそう)というコメントをもらったことが現しているように、ぶっ飛んだ要素がなく、無難にまとめ過ぎかなー、と思っていました。 クラスメイトの中には、緑の貴石を使って下からライトで照らし出したテーブル(左の写真)、ボート型のキッチン(写真は続きを読むをクリック)、空中に浮かぶベッドなど、wackyな(奇抜な)アイデアがいっぱいありました。 そういうwackyなアイデアがクリエイティブに見えるんですよねー

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ノマドのアイデンティティー

今週はプロジェクトの締め切りで追われていましたが、先週ある1人の若者が私を訪ねてきてくれました。 早稲田大学5年生の成瀬くん、世界一周ノマドプロジェクトと題して世界中の起業家やノマドに会って話を聞きながら旅しているそうです。 シンガポールにいたときもNORIさんが来てくれたなー(→こちら)。
2時間くらいいろいろ話して記事にもしてもらいました(→こちら)。 今日は記事には載ってないのですが印象的だった質問で、インタビューが終わってからも考えたことを。
成瀬くんは旅に出る前にいろいろな人に旅の趣旨を説明したときに「ノマドという生き方(*1)にはアイデンティティーの問題がついてまわるから聞いてくるといい」とアドバイスされたそう。
*1・・・『未来の歴史とノマドの時代』参照
このアドバイスをされた方がどういう意味を込めたのかその場にいなかったのでわからないのですが、おそらく「日本人としてのアイデンティティーをどう保つのか?」「ノマド生活をするとアイデンティティーのない人間になってしまうのでは?」あたりの懸念じゃないかと思います(→成瀬くん、違ってたら教えてください)。
で、ちょっと考えたのですが、懸念のポイントが私の実感とズレてるような気がするのでそのことについて。

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人との関係性の中で生きる人

昨日の『尾崎豊がわからない。』の続き。
『キュレーションの時代』では他者からの「まなざし」が地獄であるという精神構造が90年代に入って終焉を迎え、逆に他者からの「まなざしの不在」が地獄になる、という精神性を象徴する事件として2つの事件が挙げられています。
1つめは当時、世を震撼させた「酒鬼薔薇」少年連続殺人事件(1997年)。 以下は有名な犯行声明文。

「ボクがわざわざ世間の注目を集めたのは、今でも、そしてこれからも透明な存在であり続けるボクを、せめてあなた達の空想の中だけでも実在の人間として頂きたいのである。」

2つめは、まだ記憶に新しい秋葉原連続殺傷事件(2008年)。 加藤被告の逮捕後の供述内容より。

「掲示板(2ちゃんねる)は他に代わるものがない大切なもの・・・」
「私にとっては家族のような・・・、家族同然の人間関係でした」
「掲示板の自分のスレッドに私になりすます偽物や、荒らし行為を行う者がいたので、対処してほしいと掲示板の管理人に頼みました。 自分が事件を起こしたことを知らせたかった」

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尾崎豊がわからない。

なでしこジャパン、ワールドカップ優勝おめでとう!
佐々木俊尚さんの『キュレーションの時代』はTwitterやFoursquareなどのツールを使ってソーシャルに情報をやりとりする時代の変化を解いた本なのですが、『コカ・コーラCMにみる戦後文化』に書いたように、戦後の日本の社会の空気の分析が非常に面白かったので、今日もそこから。
戦前から続いた農村社会は、戦後に農村が崩壊して都会に膨大な人口移動をもたらす中でも、同じようなムラ社会的構造を生き永らえた。 その中で他者からの「まなざし」(*1)に苦しむ若者の例として2人挙げています。
*1・・・「まなざし」とは人々のアイデンティティーをパッケージ(服装や容姿・持ち物といった見た目の具象的なパッケージと出生や学歴・肩書きなどの属性のパッケージからなる)によってくるみ、そのパッケージで規定することを強要すること。
1人目は『青春の殺人者』という映画の主人公(予告編はこちら)。

『青春の殺人者』のモチーフは、どこにも逃げる場所のない苦しさです。 両親という息苦しい人間関係、成田という閉塞した地方都市、暴走族に溜まり場にされて自由にならない自分の居場所。 安住できる安定した場所だけれども、そこには窒息しそうな空気が充満していて、当時の若者は多かれ少なかれ水谷豊の演じる主人公と同じような閉塞感を抱き、その場所からの脱却を夢想していました。

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アイデンティティーとは何か。

海外在住の方、先週は日本から24時間流れてくるショッキングな映像を見ながら、心の一部がもぎ取られるような思いをしたのではないでしょうか?
特に普段あまり周りに日本人がいない環境で暮らしている人は、普段と何ら変わらない日常を送る周囲と東北の惨状とのギャップにショックと無力感を抱きながら、いてもたってもいられず募金活動などできることを始めた人が多かったようです。
最近、「日本脱出論」が盛んで、その中で海外在住の(特に日本に帰る予定がない)人に対して「日本を捨てたんだから日本人じゃない」的な発言をした人たち(*1)には、必死でチャリティーイベントを企画し実行している彼らの姿を見せてあげたい。 周りに日本人がいないということは、自分しかやる人がいないのです。「自分がやらなくても誰かがやってくれるだろう」はないのです。
*1・・・この種の人たちに対して古賀洋吉さんが切れてます→『日本に貢献すること、世界に貢献すること』
私が日本にいないのはこういう理由です→『20、30、50年後を想像しながら動く』
アイデンティティーって自分の「心がある」場所のこと、物理的な場所とは関係ないんですよ。 そのことを強く思い出させてくれた記事を紹介します。
ロンドン中の通勤客が読んでいるLondon Evening Standardという無料夕刊紙で、Ocado(*2)の共同創業者の1人Jason Gissingが日本への義援金を募ることにした経緯をインタビューで語っていました。
London Evening Standard: Ocado founder: I was about to get on a plane to Japan
*2・・・Ocadoとはロンドンで市場シェア50%以上を占めるオンライン食料品ショッピングサイト。 我が家の生活はOcadoなしでは考えられません。

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「国民性」など当てにならない

昔、「日本の携帯が世界最先端をいっている」と自他ともに認めていた頃、日本の携帯インターネットサービスを海外展開する仕事をしていたことがあります。
日本の携帯キャリアがデータ通信によってARPU(Average Revenue Per User、加入者1人あたりの売上)を伸ばす一方で、欧米キャリアは下がり続けるARPUに悩んでいました。 その頃、欧米でよく聞かれたのが、ユーザーが携帯を使ってネット・ゲームなど電話・SMS以外のことを「しない」理由を「文化の違い」に帰結するものです。
よく言われたのが、
– アジアは公共交通機関が発達しているから移動時間が長い。 車社会では携帯を見ながら運転できない。
– 大きな体のアメリカ人・ヨーロッパ人は、小さな携帯画面見ながら”ちまちま”するのは合っていない。
– 日本人はガジェット好き。
– 日本は特殊だ。
・・・etc.
あの頃から5年。
えーーー、ここロンドンでは猫も杓子もiPhone。 みんな小さい画面を覗き込みながら”ちまちま”やってますが???
スマートフォンは完全にキャズムを超え、携帯でネット・メール・ゲームetc.は日常の姿になりつつあります。
iPhone以前の携帯ネットサービスがユーザーの行動を変えるほど魅力的でなかった、携帯で何でも済ます文化は日本(or アジア)の文化的特殊性に起因するものではなかった、ことが露呈したのでした。

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ボゴタ市長にならう – 人の行動を変えるには?

タリーズの松田公太さんが参議院議員になったと思ったらワタミの渡邉美樹さんが都知事選に立候補するらしい。
お2人とも著書に影響を受けている尊敬する経営者です(松田公太さん→『すべては一杯のコーヒーから』『松田公太さんの新たな挑戦』。 渡辺美樹さん→『幸せはバランスの上に』)。 特に『夢に日付を! 』を読んで以来、Googleカレンダー時代なのにいまだ紙の手帳を使い続ける私。

他人と過去は変えられない
自分と未来は変えられる

がモットーの私はあまり他人を変えようと思ったことがないのですが、政治家って人の行動を変えるのも仕事のうち、ということでとても面白い例を思い出しました。
イノベーション会社IDEOのスピーチで聴いた話 (動画はコチラ)。
1995年、コロンビアの首都ボゴタ市長に就任したAntanas Mockus、ボゴタの長年の問題であった無謀運転による交通事故の多さに取り組みます。 無謀運転を行うドライバーに対して罰金を課す取り締まり強化を始めたのですが、なかなか効果があがらない。
そこで「コロンビア人にとって何が大事なんだろう?」と意見を募ったところ「プライド」というキーワードが浮かびあがってきました。
bogota-mime.jpgそのキーワードにヒントを得た市長が行ったのがこれ(→)。
何かわかります?(笑)

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平均とは統計上の便宜的な数値

日本代表は残念でしたね。
BBCの解説者は途中から「こんなつまらない試合見たことがない」とボロカスで、そっちを聞いてる方が疲れました・・・ なので、気を取り直して普段のブログ。
『産まれました。』でご報告した通り、私の息子は3,660gと平均よりちょっと大きめで産まれました(日本だと「だいぶ大きめ」かもしれないが、こっちでは「ちょっと大きめ」)。
今まで完全母乳で育てていますが、初めのうちは人並みに苦労しました(*1)。 いきなり乳腺炎になり、痛くて痛くて泣きながらあげていたことも。
*1・・・イギリスでは国を挙げて母乳育児が推奨されている割には日本のようにサポート体制が整っていないこともあり(出産後、1 – 2泊で家に帰されるし)、8割の人が母乳育児を始めるものの、6週間後続けている人は5割に減少、6ヵ月後には2割になる。
growth_chart_boy.jpgイギリスでは子どもが産まれると通称red bookという赤い表紙の健康記録帳(日本の母子手帳のようなもの)を渡され、検診・予防注射・成長記録などを書き込んでいきます。 また生後すぐからbaby clinicという地域のクリニックに2週間ごとに体重を測りに行き、同時にhealth visitor(保健士)に育児の相談ができます。
体重は右のような成長チャート(真ん中の線が平均で下から1%, 2%, 10%, 25%, 50%, 75%, 90%, 98%, 99%と示されたパーセンタイルグラフ)に書き込んでいきます。
息子はちょっと大きめで産まれたにも関わらず、生後5週までほとんど体重が増えずにずっと横ばい、5週目に体重を測ったときには下から10%になっていました。
その時に、Health Visitorに言われたひとこと、「あなたの赤ちゃん、体重増えてないわね」。

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移民の街 ロンドン

知ってたけれど、ロンドンは移民が多い。
なお、ここでは移民2世はすでに完璧なブリティッシュ・イングリッシュを話し、イギリス人というアイデンティティーを持っていることが多いので(『私はアジア人 – その他』に出てくるカリブ系黒人、インド系などの多くはそうである)、自らイギリスにやってきた移民1世を指すこととします。
シンガポールにいた頃、キルギスタン人とミャンマー人と知り合ったことがありました。 人口1,300万人のアジアの大都市東京に何年いても普通に暮らしていてキルギスタン人、ミャンマー人と出会うことなぞなかったので、「さすがアジア中から人が集まるシンガポール!」とミーハーにも(?)感嘆したものです。
シンガポールにアジア中から人が集まる一方、ロンドンではヨーロッパ中から人が集まっています。 特に飲食業・小売・サービス業は多いですねー(というのはどこの国でも同じだと思いますが)。
まだ来て1ヵ月ですが、今まで出会ったことのない国の出身者の話をメモがてら。

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