Category Archives: 6. 健康・美容

自然欠乏症候群

前回のエントリーは、子供の「安全」だけに目を向けて少しでもリスクのあることを規制する余りに結果として子供の「健康」や子供らしい「経験」を奪っているのではないか?という話でした。

私が子供だった頃を振り返ってみると、楽しかった記憶は外で遊んだ記憶ばかりです。 空き地に段ボールで隠れ家をつくったこと、近所の土手でよもぎを摘んで家でよもぎ餅にしたこと、小川の脇にある木の枝にぶら下がってターザンごっこをしたら枝が折れて川に落ちたこと、しろつめ草のネックレスなら今でもつくり方を覚えていること・・・
夫も私もたいしたアウトドア派に育った訳ではありませんが(旅は大好き)、子供には小さい頃は自然の中で五感を鍛えてほしいと思っています。 イギリスでは数年前”Nature Deficit Disorder”(自然欠乏症候群)という言葉が話題になりました。 きっかけは2005年にアメリカで出版された『Last Child in the Woods: Saving Our Children from Nature-Deficit Disorder』(邦訳:『あなたの 子どもに自然が足りない』)という本です。
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立ち直る力 – 1

ワールドカップ準決勝でブラジルがドイツに1対7で大敗しました。

さほどサッカーに興味がなく時間もない私はこの試合まで今回のワールドカップを生中継で見たことがなかったのですが、前々日に会ったブラジル人の友人たちがとても興奮&緊張していたので「ブラジル、勝つといいなー」程度でした。 その時「○○が背骨を骨折した」と聞いて「誰か知り合いがそんな大怪我をしたのか」と思って聞き直したらブラジルの選手だった、というくらいの無知でしたが・・・

イギリス時間では夜9時開始というたまたま子どもが寝た後で私が起きている、という稀な時間の試合だったのでBBCサイトで生で観ていましたが、4点目以降は本当に直視するのが辛いくらいの試合でした。
呆然と観ながら思っていたことは、「あー、こりゃあ暴動起きるなー」がひとつめ、「この試合結果で追いつめられて自殺者が出ないといいなー」がふたつめ。 予想通り、大会後のブラジルは荒れていたようですし、メディアでは「ブラジルサッカー史上、最大の恥辱」、「国辱」などと書かれています。
ここまで全世界が注目する中で屈辱を受けたチームの選手・監督の心中は全く推し量れないものですが、試合終了後、ブラジルのスコラーリ監督が「責任は自分にある』とした上で、

Life goes on.(それでも人生は続く)

と繰り返していました(BBC: Brazil boss Luiz Felipe Scolari on ‘worst day’)。
本当にその通りで、どんなに敗北・屈辱感にまみれパブリックに辱めを受けても関係者にとって人生は続くのです。 あまり個人を追いつめるのではなく、立ち直れるような前向きな学習機会になってほしいなあ、と思います。
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食の都ロンドン

イギリスに対する2大悪口といえば、「天気が悪い」、「食事がまずい」です。
以前、『「イギリスは天気が悪い」をデータで見る』

「イギリスは天気が悪い」というより「イギリスは冬が暗い(そして長い)」

と前者に対する反論を試みたので、今日は後者に関して。

「イギリス料理はまずい」に対する反論もいろいろありますが、最近ロンドンを訪れた人で「まずいものしか出会わなかった」って人は単にレストランの探し方(選び方)が悪いのかと。 特に、ロンドンは世界中から人が集まり、”authenticity”(本場の味)が味わえる外食のバラエティの豊かさではヨーロッパ一。 ポイントは、低技能移民だけではなく、グルメが多い金持ちや高学歴・高技能移民が多いところ(イギリスは高等教育を受けた移民の割合がOECD諸国の中ではカナダに次いで高く、ヨーロッパの中では群を抜いている→The Economist : Immigrants: Better than billed)。 『ロンドンで懐石料理レストラン』の渡辺彩子さんが、

もともとヨーロッパで日本料理店を開く目的でMBA留学した。 ヨーロッパの食の都はパリだと思ってたけど、実際来てみたら食の都はロンドンだったので、ロンドンに予定変更した。

とおっしゃってたけど私もそう思います(残念ながらSakiは閉店)。 

乳幼児を持つ私たちはほとんど外食をしなくなりましたが、もともと食べることが好きなので稀にセントラルロンドンに行くときのレストランは絶対にハズしたくありません。 私が美味しいレストランを見つける方法はシンプル、食べたい料理の国の出身の友人に聞くこと。
・・・と長い前置きでしたが、ロンドンのお勧めレストランのリストをどうぞ〜(いろいろな人に長い間「書くから!」と約束していました)
家では材料が手に入りやすいイギリス料理やイタリアン・フレンチが多いので(家の料理本→Jamie OliverRiver CafeJulia Childなど)セントラルまで行くときは西洋料理ではないエスニック料理を食べることが多いです。 またロンドンではひとり£10(約1,500円)以下で絶品料理を見つけることは至難の技ですが、ひとり£20(アルコールなし)だとかなり選択の幅が広くなるので、断りがない限りこの価格帯のレストランです(以下、思いつくまま、順不同)。
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オリンピックの夏

つい2ヵ月前はこんなだったのに・・・
Regent St at Queen's Diamond Jubilee
今はこんなことになってます、ロンドン中心部にあるリージェント・ストリート。

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“Very British”なオリンピック

オリンピック、盛り上がってますかー?
生後10日の新生児を抱え、体もまだ痛むので家から出られない、となるとオリンピックは格好の暇つぶしです。 イギリスではBBCが全競技をストリーミング中継しているのでテレビがなくてもオリンピック見放題(残念ながらイギリス国内からのアクセスのみ)。

楽しみにしていた開会式(→『オリンピック開会式のテーマは”田園”』)は開始時間が遅かったので寝落ちしてしまい録画で観ました(開会式フルプログラムはこちらから、ハイライトはこちらから)。
女王をジェームズ・ボンドと一緒にヘリからダイブさせたり(→)、かの正当派ロンドン交響楽団をMr.Beanのネタのバック演奏に使ったり(→)、極めつけは100時間のダンス・トレーニングをした本物のNHS(National Health Service、イギリスは医療・保険は国営で無料)ナース(看護婦)が踊る、というイギリス通にしか全く意味不明なネタを延々と披露したり・・・

イギリス国内では2,240万人が観たというこの開会式、イギリス人の間では自虐芸含め”Very British”と概ね好評、私はThe Economist記事のこの評に集約されるのではないかと思います。

In Beijing in 2008, for example, the Chinese conveniently highlighted long-standing institutions such as the Great Wall and Confucius, but managed to leave out most of the Mao years, including national incidents such as the great famine and Cultural Revolution. London’s version, though, was not by Britain Inc but Danny Boyle, a talented choreographer who chose his own line. (The Economist : The wisdom of crowds)
2008年北京オリンピックでは、中国は万里の長城や儒教には都合よくハイライトを当てたものの、大飢饉や文化革命といった毛沢東時代には蓋をした。 2012年ロンドンオリンピックの開会式ははイギリス株式会社による国威顕示ではなくダニー・ボイルという才能溢れる振り付け師が自らの言葉でイギリスについてのストーリーを語ったのである。

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GENJIでSUSHIと未来を考えた

ロンドンでは”SUSHI”が本当にどこでも見られるようになりました。 今ではどこのスーパーでも売ってるし、サンドイッチ屋でも売ってる。 どこでも「見られる」だけで「食べられる」わけじゃないんだけどね・・・
大手サンドイッチチェーンのPret A Mangerの寿司はシャリがあまりにも機械で固められすぎて落下させたらはずむ、との報告まであります(笑、→『ロンドングルメ – 持ち帰り寿司食べ比べ、落ちても崩れぬ固さに絶句』)。
基本的に、世界のSUSHI業界は、少数の本物志向レストランと多数のなんちゃってSUSHIに分かれており、前者は日系、後者は中国・韓国など非日系が経営しているという人が多いと思います(農水省がスシ・ポリス設立してましたね・・・→『なんちゃって日本食レストラン』)。
今日はカリフォルニア・ロールなど寿司ではなくSUSHIとして知られるロール寿司で有名なGENJIをご紹介。 このアメリカではお馴染みの寿司テイクアウェイ・チェーンは日系で、イギリスのManaging Director(社長)を私の友だちYくん(INSEAD卒)がやっています。

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オンデマンド医療サービス

イギリスではNHS(National Health Service、国民医療サービス)と言う制度のもと、すべての医療は無料です(例えば日本では保険適用外の出産なども無料)。
ところが、このNHSというのが、経営のまずさ・慢性的な医師不足・制度の欠陥で、すこぶる外国人からは評判が悪い。 特に日本人はケチョンケチョンに言います(日本人小児科医によるサイト「イギリスで病気になってはいけない」とかは、もう本当にケチョンケチョン)。

アメリカは医療費で人を殺す、イギリスは待ち時間で人を殺す

って言われてるらしい。
医療行為の過失が新聞紙上を賑わせるところは日本と一緒ですが、日本は医師不足のしわ寄せが長時間労働という形で医師にいってるのに対し、イギリスでは長い待ち時間(*1)という形で患者にきているのが両国らしい(いや、全然ひとごとじゃない)。
*1・・・A & E (Accident & Emergency)という救急病棟の待ち時間が平均4時間とか笑えない話ばっかり。
ただ、この無料制度は外国人にいいように利用されていて、出産予定日間近に飛行機でやってきて、今にも生まれんばかりの逼迫度に入国管理官も送り返せず、救急病棟に駆け込んで子どもを産んでいくアフリカ人が引きもきらない、etc.
まあNHSに関するホラーストーリーは無限にあるのですが、今日は我が家が頻繁に利用しているサービスを。

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アルザスの夏の贈り物

1ヵ月くらい前の出来事ですがフランスから小包が届きました。
開けてみると、とーっても綺麗な色をした3種類のコンフィチュール。
『フランス仕込みのコンフィチュール』で紹介したコンフィチュール(フランス版ジャム)のWebショップ“Le fruit de l’aurore”をやっている友人がストラスブールからアルザス特産、夏の果物を詰め込み直送してくれたのでした(→こちらの商品)。 ありがとう!!!
彼女のジャムはそんじょそこらのジャムとはひと味違います。
果物そのものの味が活きてるのは当然として、爽やかだったり華やかだったり、口の中に入れた途端、口の中全体が「ぱっ!」って輝きます。
もともと不思議な組み合わせが多かったのに、「白桃×生姜」、「杏×はちみつ×ピスタチオ」、「いちじく×ラムレーズン」etc. 片っ端から試してみたくなる新商品が増えてる(現在販売中の商品はこちら)。
現在のお薦めはカクテル「モヒート(Mojito)」にヒントを得た「パイナップル×ラム酒×ライム×ミント」だそう。

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"生"Jamie’s 30-minute meals

去年のクリスマスシーズンに発売され「イギリス史上最も売れたノンフィクション」になったのが、セレブリティー・シェフJamie Oliverの『Jamie’s 30-Minute Meals』です(なお、フィクションではぶっちぎりでハリー・ポッター)。
一番売れたノンフィクションが料理本って・・・よっぽどイギリス人って本を読まないのか、よっぽど料理好きなのか? と一瞬悩みますが、Jamie Oliverがそれほど人気なのです。 近年は社会活動家としての顔も定着し(→『Jamie Oliverの食の革命』)、ただの「シェフ」って肩書きを超えて、それこそアメリカ人のオプラ・ウィンフリー好きに匹敵するくらいイギリス人の間で人気でないかしらん?(アメリカ進出は、あまりうまく言ってないみたいだけど)
私はそのうち「サー」の称号をもらうんじゃないかと勝手に思っています。
この『Jamie’s 30-Minute Meals』、「30分でディナー3品(スターター・メイン・デザート)をつくる」というありふれたコンセプトなのですが、本当に30分で見た目よし・味よしのディナーがつくれるというところがすごいらしい。
「らしい」というのは、もちろん我が家にもあるのですが夫しかつくったことがないため。 子どもが産まれて以来、Julia ChildでもなくRiver Cafeでもなく、料理は早さが命(!)になってしまったので、『Jamie’s 30-Minute Meals』は本当に重宝。

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Let it snow, let it snow, let it snow

tower_bridge_snowman.JPG今日はこの曲をBGMにどうぞ。
ロンドンはこの冬2度目の大雪ですっぽりと覆われています。 そう言えば今年初めにロンドンに到着したときも雪だったなー(→『雪とエアコン』)。
地球規模の気候変動は「地球温暖化」と呼ばれることが多いですが、イギリスではここ数年、夏はより暖かく、冬はより寒くなっているそうです。 北極の海水温が上昇し、年々大規模な面積で氷河が消えていく一方、冷たい風が流れ込み北西ヨーロッパに寒波をもたらしているとか。
緯度が高いにも関わらず雪はあまり降らない気候だったロンドンは雪への備えは全くされておらず、雪のたびに空港閉鎖・道路で車が立ち往生・・・と国全土で大混乱が起こります。 そろそろ雪という常態(非常事態ではなく)に備えてもいいんじゃないかと思いますが・・・

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