Category Archives: 海外に住む

ノマドのアイデンティティー

今週はプロジェクトの締め切りで追われていましたが、先週ある1人の若者が私を訪ねてきてくれました。 早稲田大学5年生の成瀬くん、世界一周ノマドプロジェクトと題して世界中の起業家やノマドに会って話を聞きながら旅しているそうです。 シンガポールにいたときもNORIさんが来てくれたなー(→こちら)。
2時間くらいいろいろ話して記事にもしてもらいました(→こちら)。 今日は記事には載ってないのですが印象的だった質問で、インタビューが終わってからも考えたことを。
成瀬くんは旅に出る前にいろいろな人に旅の趣旨を説明したときに「ノマドという生き方(*1)にはアイデンティティーの問題がついてまわるから聞いてくるといい」とアドバイスされたそう。
*1・・・『未来の歴史とノマドの時代』参照
このアドバイスをされた方がどういう意味を込めたのかその場にいなかったのでわからないのですが、おそらく「日本人としてのアイデンティティーをどう保つのか?」「ノマド生活をするとアイデンティティーのない人間になってしまうのでは?」あたりの懸念じゃないかと思います(→成瀬くん、違ってたら教えてください)。
で、ちょっと考えたのですが、懸念のポイントが私の実感とズレてるような気がするのでそのことについて。

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オンデマンド医療サービス

イギリスではNHS(National Health Service、国民医療サービス)と言う制度のもと、すべての医療は無料です(例えば日本では保険適用外の出産なども無料)。
ところが、このNHSというのが、経営のまずさ・慢性的な医師不足・制度の欠陥で、すこぶる外国人からは評判が悪い。 特に日本人はケチョンケチョンに言います(日本人小児科医によるサイト「イギリスで病気になってはいけない」とかは、もう本当にケチョンケチョン)。

アメリカは医療費で人を殺す、イギリスは待ち時間で人を殺す

って言われてるらしい。
医療行為の過失が新聞紙上を賑わせるところは日本と一緒ですが、日本は医師不足のしわ寄せが長時間労働という形で医師にいってるのに対し、イギリスでは長い待ち時間(*1)という形で患者にきているのが両国らしい(いや、全然ひとごとじゃない)。
*1・・・A & E (Accident & Emergency)という救急病棟の待ち時間が平均4時間とか笑えない話ばっかり。
ただ、この無料制度は外国人にいいように利用されていて、出産予定日間近に飛行機でやってきて、今にも生まれんばかりの逼迫度に入国管理官も送り返せず、救急病棟に駆け込んで子どもを産んでいくアフリカ人が引きもきらない、etc.
まあNHSに関するホラーストーリーは無限にあるのですが、今日は我が家が頻繁に利用しているサービスを。

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「イギリスは天気が悪い」をデータで見る

イギリスに対する2大悪口と言えば「天気が悪い」「食事がまずい」でしょう。
後者に対しても反論も山のようにあるのですが、今日は前者に対してのみ。
世界各地に住んできてつくづく思うことは”Everything is relative.”(すべての事柄は相対的である)。 世の中、「絶対○○」なんてものはほとんどない。
天気に関しては、ロシア人やベルギー人の友人は「ロンドンさいこー!」とまでは言わないものの「全然悪くないよねー」と言ってるし、ブラジル人やトルコ人の友人は「何年住んでも天気だけは慣れない」と(冬に向かう今の季節は)悲壮な表情をしています。
いずれも彼らの出身地を考えれば納得のいく話で、「”Everything is relative.”だなー」と思うのですが、東京に住んでいる人に「天気悪いんでしょ?」と言われても「いや、東京と比べると別に悪くもないよ(そりゃ、バルセロナとかと比べたら悪いけど)」なのです。
きちんとデータで見てみましょう(以前こちらに書いたけど統計好き)。

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震災後の人生棚卸し

日本から帰ってきたのに日本のことを書いていないのですが、関西は街を歩くと
1. 外国人観光客がほとんどいない!
2. 震災支援の募金活動が目につく
くらいで、ニュースさえ見なければ、ほとんどいつもと変わらず実に平和でした。
そして、今回の大震災で自分の人生の何を見直すべきなのか?ということをつらつらと考えていました。
1. 人
大地震の一報を聞いた直後、ほとんどの人は(当時やっていたことを放り出し)まず自分の家族、次いで大事な友人の安否確認に追われたのではないでしょうか?
連絡がつかなかった時間(ほんの数十分かもしれないし数日かかったかもしれないが)、何も手につかず、ただただ無事でいてくれることを祈っていた相手、その人たちこそがキャリア・財産・社会的地位よりも何よりも大切な人たちなのです。
私は自分の大事な人を毎日幸せにできない人は尊敬していないのですが(『文化の壁を超えるCM』で紹介したANA-読売新聞のCMのおじさんみたいな、笑)、今回の帰省ではいつものようにオフ会などで新しい人と出会うことを目的とせず、(息子にとって初日本だったので)家族や昔からの友人と過ごすことにしました。
実際は、長距離フライトが思った以上に大変で時差ボケに始まり時差ボケに終わった旅だったので、このくらいゆったりでよかったようです。

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人が自然に生きられる社会

昨日紹介した『ヨーロッパの目 日本の目』に、私が初めてのヨーロッパ旅行以来、ヨーロッパに惹かれていた理由(「落ち着く」という表現の方が正しいかも)が「これだっ!」と腑に落ちる言葉になっていたので引用。

人が自然に生きられる社会をどう維持するか、この点に努力をすることが文化の要諦だと考えています。 生活する一人ひとりの心のキャパシティを想像し考慮しながら、すべての経済活動がおこなわれることが鍵です。 良質と表現されてしかるべきモノやコトは、こうした社会からしか生まれようがありません。

「なぜアメリカではなくヨーロッパのビジネススクールに行ったんですか?」と聞かれたことは数えきれず、今まで「ヨーロッパにはQuality of Lifeがある」、「文化度が高い」(→『都市の文化度』)などの表現しか思いつかなかったのですが、経済性だけではない、人の平穏な生活を邪魔する権利は誰にもない、ことが社会の根底に行き渡っているとたしかに思います。
イタリアではイギリスに比べて街がHigh street chain(*1)に浸食されていないことに驚きます。 街には狭い地域に何軒も個人オーナーのバルがあり、どうやら経済的に成り立っているようです。
*1・・・スーパーではTESCO、Sainsbury’sなど、ドラッグストアはBoots、コーヒーはStarbucksやCosta、衣料品はNext、GAPなど、駅前のHigh streetの街並みはどこも一緒。 駅から離れるとindependent shopsがあります(→『日本の鉄道会社の事業モデルは海外でも有効か?』)。

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アンダルシアの田舎でプチホテル経営

3ヵ月前に行ったコッツウォルズ地方ではファームB&Bに泊まったのですが、1日目の夜、息子をベビーカーに載せて近くのパブに出陣! ところがベビーカーの中で寝かせる計画は見事に失敗し、2日目以降はインド・カレーやTESCOのサンドイッチのテイクアウェイをB&Bの庭で食べる、という悲しい結末になりました。
そこで今回の旅のハイライトである宿は、田舎にある料理自慢の宿を対象に厳密にセレクト(フランスにはTable d’Hote付きのChambre d’Hote(→こちら参照)は一般的なのにスペインにはこのスタイルの宿はあまりないのです・・・)。 結果、大満足でした。
terrace_finca.JPGその宿とは、アンダルシアの真ん中自然公園内に位置する“Finca las Encinas”。 ウェールズ出身のシェフ歴20年のCliveと日本を離れて25年の日本人Makiさん夫婦が経営するプチホテルで、見渡す限りのオリーブ畑の山々の中にあります(写真は葡萄の蔦に覆われたテラスから臨む景色)。
ロンドンのシティでバンカーだったMakiさんは朝早く、レストランでコック長だったCliveは夜遅く、一緒に住んでいるのに2週間もほとんど会わない日が続いた日、「このままじゃいけない」と思い立ち、決めた移住。
スペインでのプチホテル経営を決め、イギリスからリサーチし物件を探し、古いオリーブ農家を購入したのが2004年。 詳しい経緯はMakiさんのブログ『スペイン・アンダルシアの田舎暮らし』でどうぞ。

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雑誌「都心に住む」に掲載されました。

雑誌『都心に住む by SUUMO』(9月25日発売、リクルート発行)、特集「世界と東京 家を持つ価値」に私のインタビュー記事が掲載されました。
首都圏の書店やコンビニで販売されています。
インタビューされて記事になるなんて初めての経験でしたが、「へー、こんな風になるのかー」といろいろ学びました。
手に取って読まれた方は、ぜひコメント欄にてお知らせくださーい。
記事をこちらに載せました。


Englishman in New York

今年の夏はとても天気がよかったのでピクニックなど戸外で過ごすことが多かったのですが(→『Ready mealでピクニック』)、そろそろ夏も終わり。 アートを満喫できることがロンドンに引っ越してきた理由でもあったので(→『ロンドンに引っ越します。』)、冬は美術館巡りに勤しみたいと思います。
さっそく、National Portrait Galleryに行ってきました。 National Galleryの横に追いやられて地味だけど、すごーーーくよかったな。
なかでも特別展の写真展“An Englishman in New York”は狭い部屋なのにそこだけすごい人口密度でした。 ニューヨークには12万人のイギリス人が住んでいるそうですが、写真家Jason Bellが有名人(Sting、Kate Winslet、Zoë Hellerなど)を含むさまざまな在NYイギリス人を撮影、「なぜニューヨークなのか?」の質問を投げかけたもの。
もう特別展自体は終わってしまいましたが、BBCサイトで写真の一部が見られます。
BBC : Englishman in New York
「なぜニューヨークなのか?」に対するそれぞれの答えを眺めていると久しぶりにエネルギー溢れるニューヨークに行きたくなってきました。
こちらが集まった言葉たち。

optimism(楽観主義), “can do” attitude(「できるよ」精神), hopefulness(希望に満ちた), energy(エネルギー), cosmopolitan(コスモポリタン), embracing(受け入れる), accepting(受容的な), ultimate meritocracy(究極の能力主義)

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古いほど人気なマイホーム

子どもが産まれるまで私の居住用不動産(平たく言うとマイホーム)に対する態度は「買うより借りろ」でした。 引っ越しばかりしてたし(最近では珍しく長かったシンガポールでさえ出張でいた期間が長かったので住んだのは結局1年半)、若い頃はカバンまとめてすぐ引っ越せるような身軽さが気にいってたし。
でも公立小学校でもレベルの差が激しく、人々がOfsted(*1)の評価が高い(= 人気のある)公立小学校のキャッチメントエリア(*2)にわざわざ引っ越すため何年もかけて希望のストリート(*3)に狙った物件が出てくるのを待っているような環境の中、「4年後住む場所なんてわかんないし〜」(*4)と悠長なことを言っている場合ではないことに気づき、持ち家信仰の強いイギリス系オーストラリア人の夫の熱意にも動かされ、ロンドンのマイホーム事情について調べ始めました。
こうやって人はだんだんコミットする対象が増えていくのだな〜(笑)
*1・・・政府運営の学校監査機関。 学校だけではなくナーサリーなど保育施設も監査の対象で、その評価レポートで与えられるグレード(4段階評価)は親の学校選択に絶大な影響を与える。
*2・・・日本の公立小学校のように学区に住んでいれば全員入れるわけではない。 1. 兄弟が学校に通っている(イギリスでは学校は親又はシッターなどの送迎が必要なので兄弟が同じ学校に通えるよう配慮している)、2. 学校からの距離が近い(キャッチメントエリアに住んでいる)順に入学優先権があるが、人気がある学校は兄弟枠だけで多く埋まってしまい、キャッチメントエリアがどんどん狭くなる傾向にある。 またそのような事情を知らずに引っ越してきた日本人駐在員家族が「近所の学校に全然入れない」と困っている話もよく聞く。
*3・・・『都市内部での(自発的)コミュニティ化』に書いたように、ロンドンは治安のいい通り・悪い通りがパッチワーク状に入り交じっているので、人々はエリアどころかストリートにまでこだわる。
*4・・・イギリスの小学校は日本より早く5歳になる前の9月から。 その前の春に入学できる学校が決まる。

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住宅バブル再び・三たび

少子高齢化が進み人口が減少に向かった国がある一方で、全体で見ると人口急増が進む世界。
今回の金融危機はサブプライムローンという住宅ローン債券が不良化し住宅バブルがはじけたのが契機になったにも関わらず、一部の都市ではすでに新たなバブルが進行しています。
The Economist : Global house prices – Froth and stagnation
(表が大きいので次のページに貼りました、「続きを読む」をクリックしてください。)
まず目につくのがこの1月まで住んでいたシンガポール。
去年の7月から今年の6月までの1年間で住宅価格が40%近く値上がりしています。 私が住んでいた時も『1年で家賃相場45%上昇』したと以前書きましたが、金融危機でいったん下落した後、半年くらいで再び上昇に転じすでにピーク時を上回ったよう。
国民の80%以上はHDBと呼ばれる政府供給の公団に住んでおり、民間のアパートは外国人用でもともと投機の対象になりやすいのです。 国土が狭く住宅用地が限られているにも関わらず、人口は増える一方(人口650万人を目指すという政府施策→『疾走するシンガポール』)、世界経済の中で存在感を増すアジアのハブとしてますます投資・投機マネーを呼び込んでいるのでしょう。 買って1年未満の転売も多く、住宅用不動産には頭金の支払いや印紙税を義務付ける規制も焼け石に水とか。
こういう街では、普通に賃貸物件に住むのも大変ですねー ある日いきなり大家に「更新したければ家賃2倍払え」とか言われるので・・・

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