Category Archives: 4. 教養・知識

『子どもはイギリスで育てたい!』

イスタンブール話を休止して、友人が本を書いたのでそれをシェアしようと思います。 浅見実花さん『子どもはイギリスで育てたい! 7つの理由』(献本御礼)

彼女とは渡英時期が一緒で(2010年)まず彼女の旦那さんと知り合いになったのですが、家が近所で子ども同士の年齢が近く、お互い3児の母という共通点もあり仲良くしています。 両親も親戚もいない異国の地で私が3人目を妊娠した時、「ここなら3人育てられるよ!」と太鼓判を押してくれたのが彼女。 双子(現在7歳)の下に男の子(4歳)がいて、旦那さんは出張が多く不在がち、専門のマーケティング・リサーチの仕事もしている彼女の忙しさは同じく3児の母である私にも想像に難くないのですが、おまけに本まで執筆していたとは! 

この本は日本で上の双子の出産・子育てを経験してから渡英し、次男をイギリスで出産・子育てしている過程で次々に浮かんだ自分の疑問に答えるためにいろいろ調べていくという章立てになっているし、実際に彼女が経たプロセスというのはそうだったのでしょう。 自らの好奇心に答える形で組み立てられるこの本から見えてくるものは『子どもはイギリスで育てたい!』というタイトルから想像されるような個人の異文化体験記ではありません(*1)、21世紀を生きるに当たって普遍的な価値観とは何か、その疑問に真摯に答えようとし社会システムとして仕組みで体現しようとするイギリス社会の姿です。 それはエピローグにこのように現されています(エピローグの引用なのでネタバレっぽくて申し訳ない)。
Continue reading


ロンドンにギグ・エコノミー到来

アメリカで「ギグ・エコノミー」という言葉が現れてしばらく経ちます。 以前、『カリフォルニアを見よ。』というエントリーで

世界を変えるような大きな時流(メタ・トレンド)ってまずアメリカのカリフォルニアで発生して、それがすごいスピードで打たれて叩かれてテストされて、こなれたり改善したりローカライズされて、世界の中でも時流が回ってくるのが早い場所から順にぐるーっと回ってきて、気がついたらいつの間にやら世界の様相が変わってる

と書きましたが、英語圏の大都市で人口が若く、アーリーアダプターも多いロンドンにはトレンドはすぐ回ってきます。 シリコンバレーから本家が上陸することもあれば、ロンドンで生まれたコピーキャットが先攻することも。

ギグ・エコノミーというのはミュージシャンが「一夜限りのライブ」をするように労働者が「単発の仕事(タスク)」を請け負うことで成り立つ経済のこと。 新しい現象ではありません。 ダニエル・ピンクが『フリーエージェント社会の到来』を書いたのはもう13年も前ですが(私がブログに書いたのは7年前→『MBA同級生に見る「フリーエージェント社会の到来」』)、労働者のフリーランス化の更なる進行、仕事のタクス化、先進国におけるミドル・スキルジョブの後進国(及び機械・コンピューター)への流出、テクノロジーの進展(特にモバイルのアプリ)により人々が課題の即時解決を求めるようになったこと、など全てつながった結果です。
参照:『未来に備える本』というエントリーで過去の「新しい働き方」関係のエントリーを集めています。
Continue reading


クリエイティブ教育のための博物館

今日は「ゆりかごから墓場まで(cradle to grave)」クリエイティブ人材育成に力を入れるイギリスの教育のうち重要な役割を担う美術館・博物館の話。

私が初めてヨーロッパの地を踏んだのは20歳の時、40日間でキャンプ場に泊まりながら西欧8ヵ国を駆け足一周する、というものでした。 『地球の歩き方』を片手に新しい都市に行くたびに「訪れるべき」美術館・博物館の(中学の美術の教科書に載っているような)「見るべき」絵・展示物を見て、見たことに満足するスタンプラリーのような旅行。 その余りの意味のなさに、その後は美術館そのものをスキップして徐々に『住むことをシミュレーションする旅』に移行していきました。
美術館・博物館とは、
– 気軽に行くもの
– 何度も行くもの
– 子どもの頃から行くもの
であることを知ったのは、ロンドンに来てからです。
今では冬の間は月2回は子どもと行く雨の休日のアクティビティーとなっています。
実際、スクールホリデー(イギリスの学校はハーフタームといって学期の真ん中に1週間休みがある)中のNatural History Museum(自然史博物館)などはイギリス中で最も子どもの人口密度が高いのではないかと思うほど、博物館は子どもだらけです(美術館は博物館ほどではないが他国に比べると多く、また子ども向けの博物館ではなく一般の博物館の話)。
一方、日本では『育児世代の美術館・博物館の利用実態』(2006年)というレポート(首都圏在住の小・中学生の親対象)によると、「末子が未就学児」の層は約4割が美術館・博物館ともに「最近は行かなくなった」と回答しており、小さい子どもがいると足を運びにくいところのようです。
Continue reading


21世紀の英国デザイン

前回のエントリーではクリエイティブ産業が英国経済の柱に育ったことを紹介しましたが、今回は現代のクリエイティブ産業を率いるスター達の話。
『ロンドンのデザイン・エコシステム』というエントリーで、あるThe New York Timesの記事冒頭を引用しました。

悪いな、ミラノ・東京。 残念だったね、ストックホルム・パリ。 アインドホーベン・ベルリン・バルセロナ・・・そして特にニューヨークよ、許しておくれ。
だけどロンドンこそが世界のデザインの首都だ。

ところで、「デザインの首都」とまで言われる英国デザインのイメージってこんな感じじゃないでしょうか?
British design in 20C
このイメージは20世紀のもの、時代遅れです。 私はこういうロンドンが好きだった口ですが、21世紀に海外で稼ぎまくっている英国デザインはこういうの。
Continue reading


クリエイティブ産業が支える英国経済

大変遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

5年前の1月12日に常夏シンガポールから雪のロンドンにやってきました。 あれから5年、滞在ビザが切れたので家族全員のビザ更新申請をし、許可されたような旨のレターを受け取ったのであと5年はいられるようです。

5年の間に3人子どもを産み、1回大キャリアチェンジをし、4回引っ越して、1回家を買って改装をしました。 家族もキャリアも「創造期」で大きなエネルギーを使い、いっぱいいっぱいだったので、次の5年は家族もキャリアもじっくり育てる「育成期」にしたいと思っています。

妊娠7ヵ月でシンガポールという青年期の国からイギリスという成熟国(日本からみると衰退国の先輩)に移るにあたり、急速に変化する世界勢力図の中で成熟国で子育てしながら続けるキャリアを模索していました(→『成熟国からの視点』『人生とはやりたいことを探し続けるプロセス』)。 そこで決めたことは、大企業の中でのテクノロジー事業開発・投資というそれまでのマッチョなキャリアから、建築インテリアデザイナーというクリエイティブ業への一大キャリアチェンジでした(→『クリエイターになりたい。』)。
Continue reading


ほとんど問題にされない富の話

少し前のThe Economistのテクノロジーと世界経済の特集がバツグンによかったです。
ニュースは昔はいろいろ読んでいましたが、子どもが産まれてからは時間がないのでThe Economist以外は読まないようにしています。 重要なことをわかりやすくまとめる編集力と事象に対する分析力が数ある競合他誌の追従を許さない気がします(6年前のエントリーですが→『The Economistを読もう!』)。 週1回というところもよい、それでも追いつけず常に2、3週前のを読んでいる現状です。 とてもよかったので下記()内に特集記事のリンクを貼っておきます(購読が必要)。
この特集では、
– アルビン・トフラーが『第三の波』と呼んだデジタル革命が世界的に労働市場に与えている影響(→『The third great wave』
– 情報テクノロジーがもたらした生産性の向上が実質賃金の上昇につながっていない現実(→『Productivity – Technology isn’t working』
– 先進国ではミドルスキルの仕事がなくなり高スキルの一部に恩恵が集中していること(→『The privileged few – To those that have shall be given』
– 最も魅力的なグローバル都市では住宅価格の高騰がその成長を阻害していること(→『Home economics』
– 日本・韓国をはじめ最近では中国が果たした、工業化による発展途上国からの脱皮・成長モデルが崩れてきたこと(→『Emerging economies – Arrested development』
– 世界のどこにいてもグローバル市場や世界最高峰の教育にアクセスできるようになったこと(→『New opportunities – Silver lining』
– 変化する世界に対応できず労働市場とミスマッチを起こしている人材をマッチさせる政策(→『Means and ends』
まで包括的にカバーしていて必読。
『Home economics』の記事なんか前回書いた『都市は人類最高の発明である』の主張そのままで、最近気になっていた金融危機後の世界経済をビシーっとまとめている力作でした。

日本の経済系オンライン記事を眺めていると、「グローバル人材にならなければ、急速に変化する世界に対応できない」というような「自己研鑽を積んで一生懸命働いたら見返りがくる」という夢を売る(逆に「できなければ仕事がなくなる」という脅しをかける)論調が多いような気がします。 ところが最近起きていることは「働けど働けどラクにならず」という現象です。
Continue reading


ロンドンと摩天楼

ずっと読みたかった本をようやく読み終えました、『Triumph of the City: How Our Greatest Invention Makes Us Richer, Smarter, Greener, Healthier and Happier』(邦訳:『都市は人類最高の発明である』)。
この本を読みながら、5、6年前に夫と住みたい都市の条件を書き出していた頃を懐かしく思い出しました。 理想的なクオリティ・オブ・ライフ(文化度が高い落ち着いた街並み、街歩きが楽しく車がいらない生活etc.)と現実(英語圏で仕事のオポチュニティーが多い場所)が交差し、インフラ(医療・交通など)が整ったところ・・・といくつか世界中の都市をあげ、Pros & Consを検討した上でロンドンに引っ越してきました(→『ロンドンに引っ越します』)。 本著の原題は『Triumph of the City』、ズバリ「都市の勝利」ですが、本著で定義されている「成功」の定義は明確です。 工業社会を脱し、知識経済に移行した21世紀で成功する都市とは「アイデアを持ち新しいものをつくり出せる高学歴・高スキル人材を磁石のように惹き付ける力を持った都市」のこと。 また「このような都市は仕事の機会で溢れているので農村から貧困層も惹き付ける、それも都市の魅力のひとつだ」という主張。
具体的に成功している都市としてニューヨーク、ロンドン、パリ、シンガポールなどグローバル都市ランキングのトップを占めるような都市を挙げていますが、ムンバイ、デトロイト、バンガロール、リオ・デジャネイロ、リバプールなどさまざまな都市の栄枯盛衰も検証していて実に面白かったです(グローバル都市ランキング→『ロンドン栄光の時代?』)。
Continue reading


共働き世帯の時間の使い方

今週のThe Economistに育児に関して面白い記事がありました。
The Economist: Choose your parents wisely

Parental time in the USアメリカでは過去50年の間に家電の進化や意識の変化から、母親が外で仕事をする時間は増加、家事にかける時間は減少、育児にかける時間は増加し、父親は仕事時間が減少、その分家事と育児にかける時間が増加している(右グラフ)。 結果、両親が子どもと過ごす時間は50年前よりも長くなっている(=子どもにとってよいこと)。
裕福な家庭は育児(親という仕事)を真剣に捉え育児書を良く読み、子どもとの時間をたっぷり取り、質の高い育児をするようになった一方で、貧困家庭では子どもとの時間が減り、子どもが必要な知的刺激や感情面でのサポートを与えられていない。 生まれついた家庭の差による育ち方のギャップがますます広がっている。

という内容です。
Continue reading


移民が多すぎる?!

ハフィントンポストに少し前のブログ『すでに少子化問題は手遅れだけど – 1』が転載されました。

”安倍政権が「50年後に人口1億人維持」を掲げ、その目玉が少子化対策”
聞こえはいいけど、今の出生率1.4を15年間で2.07に引き上げる、という歴史上誰も成し遂げたことがない目標なんですが・・・

と書いたところ、さっそく移民に関していくつかコメントを頂きました。

私たちの場合、子どもを育てる場所として多文化に寛容でない都市は考えられませんが、改めて周りを見渡してもいかに外国生まれの人が多いことか、移民なしの生活は考えられません。
家の改装を頼んだビルダーはセルビア人、毎週家の掃除してくれるクリーナーはブルガリア人、クリーニング屋はインド人、夫が行く散髪屋はポーランド人、近所の美味しいテイクアウェイは中国人経営の中華とタイ人経営のタイ料理。
ワーキングクラス(ブルーカラーの労働者階級)だけではありません、アッパーミドルクラス(プロフェッショナル職)もそうで、ビジネススクール同級生の友人のほとんどは国際結婚(少なくともどちらかが外国人、参考:『移民X世代』)、息子たちが通うナーサリー(保育園)も半数がバイリンガル家庭(イスラエル・ギリシャ・オーストラリア・南アフリカ・フランス・リトアニア・フィンランド etc.)。

ところが、最近イギリスでも「移民の数があまりにも多すぎる」と声をあげる人が多くなってきました。
ニューズウィーク日本版:移民問題が「タブー」でなくなったわけ
Continue reading


立ち直る力 – 2

昨日の続き。
私はサラリーマンの父親、教師の母親の元で何ひとつ不自由なく育ちましたが、私の子どもたちはさらに恵まれています。 親ができることは環境を整え人生のオプション(選択肢)を増やしてあげることだという思いと、失敗や挫折に直面したときに現実にどう向き合いどう学ぶかが必要だと思いが交錯します。
まさにこのトピックが昨日のグロービス堀さんの『5男の父の告白:グローバル時代の子育て術』に取り上げられていました。
堀さんの子育て論は頷くところが多く、今までもいくつかブログに書いています(→『家族のQuantity time』『12年後の教育オプションを買う』)が、今回も少し長いけど引用。

なるほど、どこの親も口を揃えてこう言うわけである。 競争の熾烈なグローバル化した現代の世界に対応できる子どもを育てるにはどうすればいいのか、と。
5人の息子を持つ妻と僕は、当然ながらこの問題を真剣に受け止めている。
大量に資料を読み、話し合った末に、僕たちは次の結論に達した。僕たちが息子たちのためにできる最善のことは、高いレベルの生命力、つまり「バイタリティ」や「立ち直る力」を身に付けさせることである、と。
十分な生命力を身に付けさせれば、子供たちは失敗に強く、変化に柔軟に対応でき、何事にも前向きな姿勢で臨む人間に育つはずだと僕たちは考えている。
しかし、「バイタリティ」や「立ち直る力」のような抽象的なものを、どうやって身に付けさせるのか。
僕たちはそれを、次の3つの重要な要素に分解した。
1.スポーツの能力
2.囲碁の試合で勝てる能力
3.英会話力と海外経験

Continue reading