Category Archives: 投資・資産運用

有事のロンドン買い

有事のロンドン買いが続いています。

2008年にはじけた世界的な住宅バブル、イギリスでもはじけたはず、でした。
ところが下右の表を見るとわかるように、イングランド北部は住宅価格が下げ止まらないのに対し、ロンドンでは上がり続けバブルのピークをすでに大幅に上回っています。 収入に対する住宅ローンや家賃の比率も上がり続けています(The Economist: The rubber bubble)。
UK house price
住宅価格の高騰はロンドン中心部で顕著で2012年7月からの1年間で9.7%も上昇しました。 まだユーロ危機も続き、景気回復の足取りも鈍いイギリスの首都で年間10%の上昇です。 これにはロンドン市民の可処分所得・失業率・住宅ローン税率など通常の住宅購入を決める要素だけではない、別の力学が働いています。 それが「国際的な安全資産」としてのロンドンです。
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マイホームへの道 – 2

昨日の続き、イギリス(正確にはイングランド)で家を買う手続きです。
1. 物件探し
方法としては、rightmoveFind a Propertyなどのサイトを見たり、エリアを歩いて”For Sale(売り出し中)”と看板が出ている物件があったらその不動産屋に電話をかけるなど。
昨日も書いたように、ライフステージに合わせて家を買い替える人が多いので、自分の今住んでいるエリアで違うサイズの家に買い替える人がたくさんいる。 彼らは住みたい通りの家の大きさや構造まで知り尽くしていて、狙った物件が出てくるのを待っているので、人気のある物件は市場と出てくると同時に買い手がついたりする。
物件探しと並行して金融機関に住宅ローンのあたりをつけておく。
2. オファー提出
欲しい物件が見つかったら「£xxxで買いたい」という口頭オファーを売り主に対して不動産屋を通して入れる。 売り主側の”Asking Price(言い値)”に対して(通常は)低く入れて価格交渉に持ち込むのだが、他に買いたい人がいれば応札合戦になったり、売り主の事情、買い主の他条件などにより、どの価格で決まるかは実にケース・バイ・ケース。
3. 売り主がオファー受け入れ
両者が価格に(不動産屋を通じて)価格に合意した時点でその物件は”Sold(売約済)”となり、市場からは外される。 が、この口頭合意には法的拘束力が一切ないため、心変わり可能。

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マイホームへの道 – 1

なんだかすごく忙しい・・・気がするのは、「マイホーム購入」という慣れないことをしているからでした。 まだ道途上ですが・・・(イギリスで家を買うのは超ストレスフルと悪名高い)
『古いほど人気なマイホーム』に書いたように、マイホーム探しをしていました。 去年中に物件を見学しながら住みたいエリアを絞り、今年に入ってから本格的に物件探しを開始。 気に入った家が見つかってオファーが売り主に受領されたところ(売買プロセスが長いので、別途書きます)。
イギリス人は本当に家を買うのが好きです。 パブで(つまみもなしに)パイントグラス片手に天気の話から始まり、家(& リノベーション)の話か(男性なら)スポーツの話・・・
どのくらい一般的かと言うと、

  • 持ち家率はイングランドで70%、ロンドンで57%(Housing and Planning Statistics 2009)。 日本は全国で61%、東京都で45%(参照:『Property Ladderを昇る人々』
  • )。

  • 出産前クラスで一緒だった7家族のうち、家を買ったことがないのは私たちだけ。 すでに4ベッドルームの家を持つ弁護士Lを除く5人全員がこの1年の間に家を買い替え(ライフステージが変わる毎に、家を買い替えていくのが一般的)。
  • 私たちの銀行の担当者は、私たちが「家を買ったことがない」と言うと絶句していた。

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Property Ladderを昇る人々

持ち家志向の強いイギリス人ですが(*1)、日本のようにマイホームを35年ローンで買ってそのまま住み続けるのではなく、年代に応じて部屋数の大きい家やフラットに次々と買い替えていきます。
*1・・・持ち家率はイングランドで70%、ロンドンで57%(Housing and Planning Statistics 2009)。 日本は全国で61%、東京都で45%(都道府県,住宅の所有の関係別住宅数,持ち家住宅率
この次々と上の物件に買い替えることをProperty Ladder(不動産のはしご)と言い(その名もズバリ“Property Ladder”という人気テレビ番組もある)、20代で小さなフラットを買うことから始める人が多かったのですが、近年の不動産価格の上昇で(特にロンドンでは住宅価格が90年代半ばから10年で3倍に高騰)若い人に手が出なくなる一方で、高騰する前から買い、着々とProperty Ladderを昇っている人もいます。
一昨日書いたように(→『古い家ほど人気なマイホーム』)、基本は中古物件で種類も決まっています。

georgian_terrace_london.jpgDetached House・・・一戸建ての家。 多くの人の憧れであるがもっとも高く、ロンドンにはほとんど存在しない(次ページ参照)。
Semi-detached House・・・一軒の家を半分に割った左右対称の2軒続きの家。 左右で壁の色が違う家も。
Terrace House・・・3軒以上がつながった連続住宅。 イギリスは他ヨーロッパ諸国と比べてもテラスハウスが多いのが非常に特徴的(右の写真はイズリントンのジョージアン様式)。

ここまでが家(ハウス)で以下はフラット(アパート)。 一番の違いは地面に面していて庭があるかどうか。

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住宅バブル再び・三たび

少子高齢化が進み人口が減少に向かった国がある一方で、全体で見ると人口急増が進む世界。
今回の金融危機はサブプライムローンという住宅ローン債券が不良化し住宅バブルがはじけたのが契機になったにも関わらず、一部の都市ではすでに新たなバブルが進行しています。
The Economist : Global house prices – Froth and stagnation
(表が大きいので次のページに貼りました、「続きを読む」をクリックしてください。)
まず目につくのがこの1月まで住んでいたシンガポール。
去年の7月から今年の6月までの1年間で住宅価格が40%近く値上がりしています。 私が住んでいた時も『1年で家賃相場45%上昇』したと以前書きましたが、金融危機でいったん下落した後、半年くらいで再び上昇に転じすでにピーク時を上回ったよう。
国民の80%以上はHDBと呼ばれる政府供給の公団に住んでおり、民間のアパートは外国人用でもともと投機の対象になりやすいのです。 国土が狭く住宅用地が限られているにも関わらず、人口は増える一方(人口650万人を目指すという政府施策→『疾走するシンガポール』)、世界経済の中で存在感を増すアジアのハブとしてますます投資・投機マネーを呼び込んでいるのでしょう。 買って1年未満の転売も多く、住宅用不動産には頭金の支払いや印紙税を義務付ける規制も焼け石に水とか。
こういう街では、普通に賃貸物件に住むのも大変ですねー ある日いきなり大家に「更新したければ家賃2倍払え」とか言われるので・・・

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為替ニュートラル

よく「(イギリスに引っ越すタイミングで)ポンドが安くなったからよかったね」と言われるのですが、うーーーん、短期的な為替の動向ってほとんど意味ないのであんまり気にしていないのです。 その代り、覇権通貨がどう変わっていくかはめちゃくちゃ気にしてます。
為替動向の感じ方って「どの通貨のどういう期間の視点で物事を見るか」によると思うので、我が家のポリシー「為替ニュートラル」について書いてみます。
1. 家計の資産形成
我が家の家計資産(というほどたいしたもんでもないけど)の大半は30年くらいの長期投資・運用です(老後の生活費とマイホームを買うかもしれない時の頭金)。 この資産をどの通貨で持つかが最重要。
結婚時の話し合いの結果、今後の世界基軸通貨になるであろうUSドルとユーロで半々ずつ(*1)持つことで、短期的な為替変動に心惑わされない為替ニュートラルな心理的ポジションを取ることで合意しました。 よって、2人の出身国通貨(日本円とオーストラリアドル)はすでにほとんど持っていません。
*1・・・「半々ずつ」という比率にあまり意味はありません。 4: 6でも6 : 4でもいいのですが、それくらいの細かい調整は流動性の高い資産であればすぐできるので。
ところが、シンガポールからはユーロ建ての金融商品を買いにくいので、現在すべてUSドル建てになっています(投資対象商品もすべてブログで公開しているので、興味のある方はカテゴリー投資・資産運用からどうぞ)。 これをロンドンに引っ越したらユーロ建て資産にも分散することが目下の課題です。

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生保のバイブル

短い東京滞在の最後はライフネット生命保険副社長の岩瀬さん
前日の飲み会に風邪で欠席されたので、成田エクスプレスに乗る前のわずかな時間にオフィスにお邪魔しました。 お互いTwitterやブログ、チャットで近況は知っているので、世間話をして、最新著の『生命保険のカラクリ』を頂戴、献本御礼(もらった本のレビューを書くときは、小飼弾さん風にこう書かないといけないらしい)。
岩瀬さんが生保業界の風雲児としてライフネットを創業される前の私にとっての生保は「絶対買いたくない金融商品」でした。 関西人らしく、自分が購入する商品には”Value for Money”を重視する私が今から7年ほど前に検討した結果は、
1. 投資や貯蓄目的の金融商品としては他の金融商品に劣る
2. 私が死んで経済的に困る人はいないから死亡保障は必要なし
の2点の理由により「自分には必要なし」。
FP3級の勉強(→『FP技能士3級のススメ』)や橘玲さんの『世界にひとつしかない「黄金の人生設計」』などを読んだ結果、高コスト体質の非効率な業界が消費者の利益より業界利益を優先して生み出した限りなく中身が不透明な金融商品だと思ったことを覚えています。
一方、ハーバード留学記で存在を知っていた岩瀬さんが、独立系ネット生保を立ち上げ古い体質の業界に斬り込むことを知り「そう来るか?!」と仰天したのが2年ほど前(これがなければ「HBSで上位5%なんて賢い人だなー」という感想のまま、ブログのヒーローリストに書くこともなく、幸運にも知り合って仲良くなることもなかった)。

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「果ての国」に生きる – 1

『ブラック・スワンとレバノン』で書いたとおり、『ブラック・スワン』を読み終わったので感想です。 久しぶりにビシビシと読み応えのある本でした。
ブラック・スワンとは以下のような特徴を持つ事象のこと。

一つは予測できないこと。
二つ目は非常に強いインパクトをもたらすこと。
そして三つ目は、いったん起きてしまうと、いかにもそれらしい説明がなされ、実際よりも偶然には見えなくなったり、最初からわかっていたような気にさせられたりすること。

例として、1987年のブラック・マンデー、1998年のロシア金融危機を緒とした米LTCMの破綻、2001年の9・11、そして2007年から始まったサブプライム問題を契機とした世界金融危機など(本書はサブプライム問題顕在化の数ヶ月前に発売されている)。
ブラック・スワンが起こる世界を説明する比喩が秀逸。

月並みの世界・・・ベル型カーブに従って分布し、特定の事象が単独で全体の大きな部分を占めることはない。 アウトライヤーは無視できるほどインパクトの小さいもの。
例:身長、体重、カロリー摂取。 100人の中にひとりだけすごく太った人がいても平均体重などの統計には微々たる影響。
果ての世界・・・データ1つが全体に圧倒的な影響を及ぼす。
例:財産、本の売上、社会的事件、都市の人口。 100人の中にビル・ゲイツのような大金持ちがいれば、あとの99人はいてもいなくても統計的には同じ。

そして、世界に衝撃を与え、予測不可能なリスクを与えるブラック・スワンは「果ての国」で起きる。

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岩瀬さんと生命保険

東京ではライフネット生命保険の副社長、岩瀬さんのオフィスにお招きされお会いしました。
知っている人も多いと思いますが、こちらにも書いたように東大(在学中司法試験合格)、BCG、リップルウッド(投資ファンド)、HBSの成績上位5%という輝かしいキャリアの持ち主。
Wikipedia : 岩瀬大輔
同年代の岩瀬さんはMBA留学時期はかぶっていないのですが(彼は2004 – 2006年、私は2003 – 2004年)、ハーバード留学記の頃ちらちらブログを読んでおり、卒業後どうするのかな?と思っていたら、ネット生保立ち上げということで度肝を抜かれました。
そして、『ヒーローリスト公開』というエントリーに「死ぬまでにぜひ会ってみたい人」と書いたら、ご本人からメールがきた、という嘘のような本当の話。
lifenet.jpgいろいろ個人的な話もしてお土産に本も頂いて、その日ちょうどオフ会だったのでライフネット宣伝用のパンフレットも頂きました。
そしてオフ会でパンフレットを配ろうとすると、皆さん、あんまり生命保険には関心がない、知らない、のですねー。 新卒の会社に通っていた生保レディに契約させられそのまま○年・・・とか。
・・・ということで、ちょっと生保のお話。

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REITと債券もETFにしました

ブログの中で、ちっとも増えないマネー・ファイナンスカテゴリーのエントリーですが、以前『世界全体の成長を信じる』『ナンピン買いの誘惑』に書いたように、私たちの投資方針は

ドルコスト平均法 & インデックス投資 & 30-40年スパンの長期投資(バイ&ホールド)

なので、決めた日に決めた額を買うだけなので、普段やることないんですねー
私たちのアセット・アロケーションは下記。

現金:5%
債券:10%
株式:65%
不動産:20%

債券、株式、不動産、すべて「世界市場全体に投資する」のが方針なので、株式は全部Vanguard ETFで揃ってしまいました(→『結局Vanguard ETFにしました』)。

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