Category Archives: 3. マネー・ファイナンス

子供ひとりを育てるのにかかる費用

イギリスでひとりの子供を大学卒業まで育てるのにかかる費用を、3人も産んでおいてから初めて調べてみました、産む前に知ってしまうと産めなくなりますからね・・・

以下のガーディアン紙とテレグラフ紙の記事はいずれも同じソース、民間保険会社LV=が発表したレポート“Cost of a Child: From cradle to college”2013年版です。
The Guardian: How much does it cost to raise a child in 2013 compared to a decade ago?
Telegraph: Cost of raising a child rises to £227,000
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有事のロンドン買い

有事のロンドン買いが続いています。

2008年にはじけた世界的な住宅バブル、イギリスでもはじけたはず、でした。
ところが下右の表を見るとわかるように、イングランド北部は住宅価格が下げ止まらないのに対し、ロンドンでは上がり続けバブルのピークをすでに大幅に上回っています。 収入に対する住宅ローンや家賃の比率も上がり続けています(The Economist: The rubber bubble)。
UK house price
住宅価格の高騰はロンドン中心部で顕著で2012年7月からの1年間で9.7%も上昇しました。 まだユーロ危機も続き、景気回復の足取りも鈍いイギリスの首都で年間10%の上昇です。 これにはロンドン市民の可処分所得・失業率・住宅ローン税率など通常の住宅購入を決める要素だけではない、別の力学が働いています。 それが「国際的な安全資産」としてのロンドンです。
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マイホームへの道 – 2

昨日の続き、イギリス(正確にはイングランド)で家を買う手続きです。
1. 物件探し
方法としては、rightmoveFind a Propertyなどのサイトを見たり、エリアを歩いて”For Sale(売り出し中)”と看板が出ている物件があったらその不動産屋に電話をかけるなど。
昨日も書いたように、ライフステージに合わせて家を買い替える人が多いので、自分の今住んでいるエリアで違うサイズの家に買い替える人がたくさんいる。 彼らは住みたい通りの家の大きさや構造まで知り尽くしていて、狙った物件が出てくるのを待っているので、人気のある物件は市場と出てくると同時に買い手がついたりする。
物件探しと並行して金融機関に住宅ローンのあたりをつけておく。
2. オファー提出
欲しい物件が見つかったら「£xxxで買いたい」という口頭オファーを売り主に対して不動産屋を通して入れる。 売り主側の”Asking Price(言い値)”に対して(通常は)低く入れて価格交渉に持ち込むのだが、他に買いたい人がいれば応札合戦になったり、売り主の事情、買い主の他条件などにより、どの価格で決まるかは実にケース・バイ・ケース。
3. 売り主がオファー受け入れ
両者が価格に(不動産屋を通じて)価格に合意した時点でその物件は”Sold(売約済)”となり、市場からは外される。 が、この口頭合意には法的拘束力が一切ないため、心変わり可能。

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マイホームへの道 – 1

なんだかすごく忙しい・・・気がするのは、「マイホーム購入」という慣れないことをしているからでした。 まだ道途上ですが・・・(イギリスで家を買うのは超ストレスフルと悪名高い)
『古いほど人気なマイホーム』に書いたように、マイホーム探しをしていました。 去年中に物件を見学しながら住みたいエリアを絞り、今年に入ってから本格的に物件探しを開始。 気に入った家が見つかってオファーが売り主に受領されたところ(売買プロセスが長いので、別途書きます)。
イギリス人は本当に家を買うのが好きです。 パブで(つまみもなしに)パイントグラス片手に天気の話から始まり、家(& リノベーション)の話か(男性なら)スポーツの話・・・
どのくらい一般的かと言うと、

  • 持ち家率はイングランドで70%、ロンドンで57%(Housing and Planning Statistics 2009)。 日本は全国で61%、東京都で45%(参照:『Property Ladderを昇る人々』
  • )。

  • 出産前クラスで一緒だった7家族のうち、家を買ったことがないのは私たちだけ。 すでに4ベッドルームの家を持つ弁護士Lを除く5人全員がこの1年の間に家を買い替え(ライフステージが変わる毎に、家を買い替えていくのが一般的)。
  • 私たちの銀行の担当者は、私たちが「家を買ったことがない」と言うと絶句していた。

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自由経済を信じない日本

日本で『これからの「正義」の話をしよう – いまを生き延びるための哲学』NHK『ハーバード白熱教室』が人気だったと聞いて、遅ればせながらHarvard iTunes UでMichael Sandel教授の”Justice”の講義を聴いています(全部、無料で聴けます、もちろん英語ですが)。
Harvard iTunes U –> Social Science –> Justice with Michael Sandel
Episode 3(日本語版:『「富」は誰のもの?』)は、政府の課税権(とりわけ、富める者から貧しい者へ所得を強制的に再分配する権利)を扱っていて面白かったです。
私は『国の価値観と個人の価値観』に書いたように、国の価値観と個人の価値観が合っている場所で(特に)価値観を形成する少年・青年期を過ごすことが大事だと思っています。 そして政府の課税・所得再分配ポリシーは国の価値観を明確に体現しているもので、ここが納得できるとその国で概ねハッピーなのではないかと思います。
イギリスは元々、中福祉・中負担の国ですが、キャメロン首相が「膨れ上がった財政赤字を解消し成長を取り戻すために、社会保障を犠牲にして経済成長を優先させる」と宣言し、さまざまなところで補助金が削減され大騒ぎになっています。
Number10.gove.uk : Prime Minister’s speech at the World Economic Forum

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Property Ladderを昇る人々

持ち家志向の強いイギリス人ですが(*1)、日本のようにマイホームを35年ローンで買ってそのまま住み続けるのではなく、年代に応じて部屋数の大きい家やフラットに次々と買い替えていきます。
*1・・・持ち家率はイングランドで70%、ロンドンで57%(Housing and Planning Statistics 2009)。 日本は全国で61%、東京都で45%(都道府県,住宅の所有の関係別住宅数,持ち家住宅率
この次々と上の物件に買い替えることをProperty Ladder(不動産のはしご)と言い(その名もズバリ“Property Ladder”という人気テレビ番組もある)、20代で小さなフラットを買うことから始める人が多かったのですが、近年の不動産価格の上昇で(特にロンドンでは住宅価格が90年代半ばから10年で3倍に高騰)若い人に手が出なくなる一方で、高騰する前から買い、着々とProperty Ladderを昇っている人もいます。
一昨日書いたように(→『古い家ほど人気なマイホーム』)、基本は中古物件で種類も決まっています。

georgian_terrace_london.jpgDetached House・・・一戸建ての家。 多くの人の憧れであるがもっとも高く、ロンドンにはほとんど存在しない(次ページ参照)。
Semi-detached House・・・一軒の家を半分に割った左右対称の2軒続きの家。 左右で壁の色が違う家も。
Terrace House・・・3軒以上がつながった連続住宅。 イギリスは他ヨーロッパ諸国と比べてもテラスハウスが多いのが非常に特徴的(右の写真はイズリントンのジョージアン様式)。

ここまでが家(ハウス)で以下はフラット(アパート)。 一番の違いは地面に面していて庭があるかどうか。

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住宅バブル再び・三たび

少子高齢化が進み人口が減少に向かった国がある一方で、全体で見ると人口急増が進む世界。
今回の金融危機はサブプライムローンという住宅ローン債券が不良化し住宅バブルがはじけたのが契機になったにも関わらず、一部の都市ではすでに新たなバブルが進行しています。
The Economist : Global house prices – Froth and stagnation
(表が大きいので次のページに貼りました、「続きを読む」をクリックしてください。)
まず目につくのがこの1月まで住んでいたシンガポール。
去年の7月から今年の6月までの1年間で住宅価格が40%近く値上がりしています。 私が住んでいた時も『1年で家賃相場45%上昇』したと以前書きましたが、金融危機でいったん下落した後、半年くらいで再び上昇に転じすでにピーク時を上回ったよう。
国民の80%以上はHDBと呼ばれる政府供給の公団に住んでおり、民間のアパートは外国人用でもともと投機の対象になりやすいのです。 国土が狭く住宅用地が限られているにも関わらず、人口は増える一方(人口650万人を目指すという政府施策→『疾走するシンガポール』)、世界経済の中で存在感を増すアジアのハブとしてますます投資・投機マネーを呼び込んでいるのでしょう。 買って1年未満の転売も多く、住宅用不動産には頭金の支払いや印紙税を義務付ける規制も焼け石に水とか。
こういう街では、普通に賃貸物件に住むのも大変ですねー ある日いきなり大家に「更新したければ家賃2倍払え」とか言われるので・・・

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イギリスの児童虐待対策

今回の大阪の事件は泣いた。
幼児2人が部屋の中で寄り添いながらママを待つ姿を何度も想像してしまい本当に泣いた。
自分に子どもが生まれてからというものの、以前のように冷静に三面記事を読めなくなってしまいました、というより以前は三面記事は読まなかったのに・・・(夫も同じ)。
それにしても今回の事件は救出できたよなー、と思わざるをえません。
児童虐待(ネグレクト含む)と言えばイギリスは先進国(そんな先進国いらないよね・・・)、深刻な社会問題となったのも対策が取られ始めたのも日本より遥かに前で、発生件数は(人口比を考慮すると)日本の15倍以上とか。 市民の関心も非常に高く、ロンドンの新聞London Evening Standardに記事がない日はないくらい。
背景には貧困・離婚率の増加・シングルマザーの増加・10代の妊娠などあるようですが、児童虐待はイギリスの大きな社会問題のひとつです。 今日は興味ある人のためにWebで見つけた下記の視察報告書と私がロンドンに来て以来のランダムな経験をメモしておきます。 まとまってませんが・・・
子供の虹情報研修センター:イギリスにおける児童虐待の対応 視察報告書

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シンガポール永住権放棄・・・

今日、ロンドンのシンガポール領事館まで出向き、シンガポール永住権を放棄する申請をしてきました。
私が取得した経緯はこちら→『”シンガポール市民になりませんか?”』『シンガポール永住権取得!』
(最近のシンガポール永住権取得は私が取得した頃よりハードルが上がっているようなので、最新の情報はご自分でシンガポール入国管理局にお問い合わせください)
せっかく取得した永住権を何も自ら放棄しなくても・・・と思われるかもしれませんが、理由はCPF(シンガポールの年金・医療保険積立制度)です。 CPFについては『社保庁は見習ってほしいCPF』に詳しく書いていますが、個人口座に積み立てられるもので、他国に移住する際は引出しができるのです(そのためには永住権の放棄が必要)。
シンガポールに今後住む予定のない人にとって、CPF口座にある積立金はキャッシュ(現金)と同じ、引き出すことにしました。 永住権放棄には一抹の寂しさも感じましたが、まあ、永住権のコレクターになっても仕方ないし。
相互扶助型の国民年金の積立て額不足は高齢化が進む先進国政府にとっては頭の痛い問題で、それを解決する個人積立はオーストラリアでもSuperannuationと呼ばれてすでに導入されています。 他の国でもあるのかなー? 『海外居住者の年金ポータビリティー』も私たちのような根なし草にとっては重要問題。

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超富裕層の悩み

HNWIs(High Net Worth Individuals)という人種がいます。
Merrill LynchとCapgeminiが毎年出すGlobal Wealth Reportによると、US$1mil.(約9,000万円)以上の金融資産(居住用不動産除く)を持つ人たちのことで、全世界に860万人いるそうです(2008年)。
Wikipedia : High net worth individual
高給サラリーマンにも手が届く層で、私の同級生でも夫婦どちらかがバンカー(*1)でVPやMDレベル、もしくは夫婦両方バンカーの場合、この層に該当していると思います。
*1・・・一般的に”Banker”という場合、欧米投資銀行のフロント業務(トレーダー、ディーラー、ファンドマネジャー、M&A、セールス etc.)についている人を指し、30代前半(VPクラス)で3,000万 – 1億円、35歳以上(MDクラス)になると6,000万 – 10億円? という高報酬が得られます(過半がボーナスなので年によって大きく異なる)。 その代わり競争は熾烈で激務なので、辞めていく人も多い。 日系銀行の課長・部長とは全く異なる人種。
どんな生活をしているかというと、ロンドンであればセントラルの北・北西の高級住宅街に家賃120万円/月のアパートに住み、住み込みナニーに払う年間コストが1,000万円、私立小学校に通う子供の学費が年間300 – 400万円/人、といった感じ。 いるところにはたくさんいるので、生活は垣間見られます(見たいかどうかは別として)。
普通のサラリーマン(といっても幅広いが)の生活コストすべてにゼロをひとつ足したくらいの生活ですが、基本はサラリーマンなので、この生活を支えるために、少なくとも夫婦どちらかが身を粉にして働く必要があります。
そして、その上にUltra-HNWIs(Ultra-High Net Worth Individuals)という人種がいます。
US$30mil.(約27億円)以上の資産を持つ人たちのことで、全世界に95,000人いるそうです。
このクラスはサラリーマンはなれず、会社オーナー・大企業経営者・トップクラスのアスリートや芸能人・代々の資産家・・・etc.などでしょうか? この層は働かなくてもいい層で、生活はちょっとやそっとで垣間見ることはできませんが、今日はこのUltra-HNWIs(超富裕層)と接した友人から聞いた話。

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